日本のデジタル・イノベーション格差を解消

しかし、昨今の日本企業は、かつて先進的なイノベーションに築いてきた「プロダクト時代」の栄光を、デジタル製品やサービスにおいても同様にもたらすことに苦戦が強いられているようです。アクセンチュアの調査によると、多くの日本企業がエンジニアリングやマニュファクチャリングにおける製品やサービスのデジタル化(DX)に、あまり重きをおいていない実態が明らかになりました。

しかし、こうした実態に対し、多くの企業がデジタル時代の競争に打ち勝つために、エンジニアリングやマニュファクチャリングに大きな変化をもたらす必要があることも認識はしています。以下、アクセンチュアが実施した調査の中で、経営者から得られた回答の一部を紹介します。

• 調査対象の経営者のうち9割近くは、2022年から2025年にかけて、エンジニアリングにおけるデジタル製品やサービスへの投資が、物理的な設備投資よりも上回ると考えています。
• 8割以上がマニュファクチャリングにおけるデジタル化を優先的に進める考えです。
• 全体として、企業は今後3年間でエンジニアリングとマニュファクチャリングのデジタル化に平均1.25倍の投資を行う見込みです（現売上高4.4％から2025年には5.5％へ）。

重要なのは、その投資をどこに向けるか、そしてデジタル時代のイノベーターになるために、どのように事業を再編成するかということです。

今回の調査では、デジタル製品のポートフォリオから価値創造と成長を実現している日本企業が少数派（13％）であることが明らかになっています。このようなデジタル・イノベーションのリーダー企業は、全体的にデジタル製品の比重が高く、同業他社よりも高い収益性と成長性を達成しており、デジタル製品やサービスの設計・マニュファクチャリングに必要なピボット（方針）を作ろうとしている企業にとって参考となるのではないでしょうか。

デジタル・リーダーは、以下の4つの点よって、競合とデジタル・イノベーションの差別化を図っています。

• CEOが自社のデジタル戦略・方針について、先進的で明確なビジョンを示している。
• 技術に精通した取締役会を構築し、企業全体におけるビジョンの舵取りを支援。平均して、リーダー企業の役員のうち2割近くがテクノロジーに関連した経験を持つ。
• テクノロジーと人財の組み合わせにより、エンジニアリングとマニュファクチャリングにまたがるシームレスなコラボレーションを推進。適切なテクノロジーの選択を行い、テクノロジーと人財を融合させながら、デジタル製品とサービスによる価値の最大化を図る。
• データドリブンの能力を継続的に改善・向上させ、部門を超えたコラボレーションを実現することで、製品ライフサイクルにおける最高のデザイン、品質、サービスを提供。2018年から2021年にかけて、デジタルツインやデータレイクを含むデータ機能、加えて、より多くのチームがデータへのアクセスを可能とするローコード開発プラットフォームへの投資を実施。また、過去3年間で、イノベーションリーダーの53%がデータドリブン基づく意思決定の恩恵を受けた。

デジタル化に成功したリーダー企業に続くためには、まず、製品・サービスにおけるデジタル利活用を高めるという観点から、既存のデジタル製品を評価し、ビジョンを見直すことから始める必要があります。また、今後に向けデジタルエンジニアリングとマニュファクチャリングエンジンを構築するとともに、マニュファクチャリングとエンジニアリング領域におけるスキルとケイパビリティの乖離を分析する必要もあります。