Skip to main content Skip to footer

調査レポート

次世代への一歩:サプライチェーンの変革

サプライチェーンの成熟度を高め、新たな価値を引き出す

8分(読了目安時間)

2024/06/20

概略

  • 新しい経済および産業の状況は企業に新たな機会を提供します。これを受けて経営陣は価値を引き出すために新しい能力の獲得に優先順位をつける必要があります。
  • 最新の調査によれば、サプライチェーンネットワークの能力の成熟度と優れた財務パフォーマンスには相関関係があることが示されています。
  • サプライチェーンリーダーは、能力の成熟度を向上させるための4つの主要な要因を整備し、規模を拡大することが求められます。

新たな変化が新しいパフォーマンスフロンティアを切り開く

絶え間ない変動と変化の時代において、企業は競争優位を維持し新たな機会を活かすために、従来のベンチマークやプロセス、作業方法を超える必要があります。この変革の一環として、企業と経営陣はサプライチェーンネットワークとオペレーション全体にわたり、より高度な能力を導入し、規模を拡大することが求められています。最新の調査では、そのような企業が大きな利益を享受していることが示されています。たとえば、より成熟したサプライチェーン能力を持つ少数の企業は、平均EBITマージンが11.8%であり、他の企業の9.6%に比べて高いことが明らかになっています。

「成熟」とは、企業が自律的な意思決定、高度なシミュレーション、継続的な改善に向けて、生成AIや高度な機械学習、その他の最新技術をどの程度サプライチェーンの能力に組み込んでいるかを意味します。

企業は次世代サプライチェーン能力に対して準備ができているか

サプライチェーンおよびオペレーション能力を考慮する際、我々は能力の成熟度を4つの段階で検討します。

  1. 過去:従来の技術による運用のため、データの可視性が限られ、手動のタスクと意思決定に依存している段階。

  2. 現在:基本的な運営業務を支援するために一部のデジタルツールを使用し、日常業務の部分的なデジタル化が進んでいる段階。

  3. 近未来:さまざまな情報源から統合された高品質データを使用し、運営業務全体でデジタル化を拡大し、持続可能性やエコシステム関係に配慮している段階。

  4. 将来:生成的AIや高度な機械学習を活用し、自律的な意思決定や高度なシミュレーション、データ分析により継続的な改善を図る段階。

最新の調査では、この成熟度の概念と4つの段階をサプライチェーンの7つの主要領域にわたる29の重要能力に適用しました。そして、このフレームワークを使用し、8つの地理的地域にまたがる1,000社の企業を評価し、各企業の幹部3人へのインタビューを通じて、各企業がどの段階にいるかを把握しました。

80%

企業は2年以内に能力の80%が「近未来」レベルに到達することを期待しています

我々の調査結果によれば、調査対象全体の中央値の成熟度指数スコアは30%であり、平均は36%です。ここでの100%は完全に成熟した状態を示します。この成熟度の欠如は、企業がサプライチェーンネットワーク全体で主要能力を強化する緊急性を示します。幸いにも、企業はこの緊急性を理解しています。我々の調査によれば、グローバルな変革のペースは速く、企業は2年以内に能力の80%が「近未来」レベルに到達すると期待しています。

オペレーション成熟度を高めるためのグローバル変革のペース
オペレーション成熟度を高めるためのグローバル変革のペース

成熟度向上の重要性

なぜ能力の成熟度が重要なのでしょうか?成熟度スコアに基づいて「リーダー」と評価される企業のトップ10%を考えると、これらのリーダー企業は高度な技術(特にAIおよび生成的AI)に大規模投資を行い、29の全能力で高い成熟度を構築および活用しています。その結果、リーダー企業の成熟度スコアは他の企業の2倍~3倍に達しています。分析結果は、高い成熟度と優れた財務結果との相関を示しており、例えば、リーダー企業は平均以上のEBITマージンを生み出すだけでなく、上場企業のリーダー企業の株主への総報酬(TRS)は8.5%であり、他の企業の7.4%と比べても優れていることが分かります。

成熟した能力を持つことで、リーダー企業のサプライチェーンネットワークは多様なビジネス価値を提供することができます。伝統的な成果を超えて、持続可能性とレジリエンスに焦点を当て、その過程で新たな競争優位を達成するのです。

8x

リーダー企業は、自社のサプライチェーンおよび製造能力がビジネスの優先事項を「非常にうまく」支援していると回答する可能性が8倍高いです。

より高い成熟度を実現するための4つの主要推進要因

調査によれば、リーダー企業はより成熟した能力を採用し規模を拡大することで、より大きな価値をもたらしています。リーダーは次世代能力への投資を他の企業の4倍の速度で行っており、それによって企業間の格差が拡大しています。その結果、リーダー企業が先頭を走り続ける一方で、遅れを取っている企業はさらに遅れを取る悪循環に陥るのです。

リーダー企業とその他企業のオペレーション能力への投資額の比較
リーダー企業とその他企業のオペレーション能力への投資額の比較

問題は、サプライチェーンネットワークとオペレーション全体でリーダーがいかにして投資を実際の成熟度向上およびビジネス価値の増加に繋げるかです。より高い成熟度を達成する鍵は、次世代の能力を実装し拡大させるためのインフラを整備する4つの推進要因にあります。

リーダー企業は次世代能力に他の企業の4倍の速度で投資中

企業はデジタルコアを強化し、クラウド、データ、AIを活用して主要なサプライチェーンプロセスを統合するツール群を構築する必要があります。リーダー企業はこのような統合されたツールを持つ可能性が約2倍に及びます。

高度なオペレーションデータプラットフォームは、データを意味のある洞察に変える統合されたデータモデルを持っています。リーダー企業は、この高度なプラットフォームを実装する可能性が3.3倍高いです。

以前の調査によれば、地域調達は約30%成長する見込みです。ネットワークをローカライズする際、新しい柔軟なアプローチを支えるために能力のデジタル成熟度を向上させる必要があります。

企業は、全社的にアジャイルな組織を構築する必要があります。リーダー企業はこのような組織プラットフォームを持つ可能性が3.3倍高いことが分かっています。このような組織の拡大に向けては、仕事を再構築し、それに合わせて従業員が働き方を変えられるようサポートする必要があります。

変革を加速してペースを維持

これらの推進要因の重要性を過小評価してきた企業は、今こそ行動を起こすべきです。これは単に効率や生産性を向上させるためではなく、新しい技術と新しい作業方法でサプライチェーンネットワークを根本的に再発明し、次世代の能力を支えることで、ビジネスパフォーマンスの新たなレベルに到達するためのものです。

筆者

太田 陽介

ビジネス コンサルティング本部 サプライチェーン & オペレーション(COO Advisory) プラクティス 日本統括 マネジング・ディレクター

Max Blanchet

Senior Managing Director, Global Supply Chain & Operations Strategy Lead

Brad Pawlowski

Managing Director, Strategy & Consulting, North America Lead for Supply Chain & Operations

Melissa Twinning-Davis

Senior Managing Director, Operations Lead for Global Supply Chain

Stephen Meyer

Principal Director – Supply Chain & Operations, Accenture Research