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調査レポート

成長をつなぐバリュー・ネットワーク

データ主導のインサイトで収益性の高いパートナーシップを築くには

5分(読了目安時間)

2024/04/19

概略

  • 今やデータは溢れていますが、活用されていないのが現状です。データをインサイトとして活用しない企業は後れを取るリスクを負うことになります。
  • その解決策は、データ、顧客インサイト、共通の価値を仲介する権利を基盤とした、ライフ起点のバリュー・ネットワークの構築です。
  • 顧客インサイトと仲介者としての権利に優位性を持つ企業は、より収益性の高い成長を手にすることができます。

デジタル上のインタラクションから得られるデータは“金鉱”となりえますが、その多くは未開拓です。アクセンチュアの最新の調査では、60%の企業がリアルタイムの顧客インタラクションデータを顧客の嗜好を予測するために活用していないことが分かりました。データを有意義なインサイトに変える努力をしない企業は、後れを取るリスクを負うことになるでしょう。一方で、AIや機械学習を活用したディープアナリティクスによって顧客データをより理解しやすい形にし、優れたインサイトを得る方法を見出している企業がいることも分かりました。彼らのアプローチはライフ起点であり、顧客を予測不可能な外的要因に適応するために絶えず変化する多面的な個人として理解することを軸にビジネスを構築しています。

本調査によって、顧客に寄り添うバリュー・ネットワークを仲介する、という戦略が顧客ニーズに応えるため特に有力なことが分かりました。バリュー・ネットワークは個人と企業を結びつけ、関係者全体にとって有益なインタラクションを促すものです。複数のバリュー・ネットワークを通して、企業は多大なコストをかけることなく新たな方法で成⾧を促進でき、顧客は意思決定を(妨げるのではなく)助けてもらえる洗練された体験を得られます。効果的なバリュー・ネットワークを構築するには、データに基づく顧客インサイトの優位性と、ブランドの信頼とエンゲージメントを通じて確立された仲介者としての権利という2つの要素が必要になります。

バリュー・ネットワークの例

Spotifyがチケット販売プラットフォームと結んだパートナーシップを考えてみましょう。音楽ストリーミングサービスはユーザーの豊富な利用データという形で顧客インサイトの優位性を持っており、そのデータは潜在顧客をターゲティングする方法を探しているチケット販売者にとって貴重なものです。Spotifyは顧客インサイトを活用し、パートナーシップを通じてすべての関係者にとって利益につながる形で顧客とチケット販売者を結びつけることができます。

  • チケット販売者はリーチを広げ、最も関連性の高い潜在購入者とつながれる
  • 顧客は好きなアーティストの公演情報を知り、シンプルな購入体験が得られる
  • Spotifyはブッキングエージェントとして新たな収益を獲得しつつ、ユーザーとの関係を深められる

このようにSpotifyは、独自のインサイトと信頼される消費者ブランドとしての地位の両方を通じて顧客とパートナーを取り持つ役を担い、仲介する権利を確立しました。経済の不確実性の広がりと急速に変化する顧客の需要に直面する中、企業はこのようなバリュー・ネットワークの構築を通して低いコストでイノベーションと事業を拡大できます。

Song Life Centric Sales Exhibit
Song Life Centric Sales Exhibit

顧客インサイトの優位性を達成する

バリュー・ネットワークから利益を得るには、データを活用して顧客がどのような人物で、ブランドとどのように関わり、製品やサービスをどのように利用しているのかを理解しなければなりません。アナリティクスだけではもはや不十分で、企業は人々に大きく影響するテクノロジー、文化、政治などを含む外的要因の力もチェックしなければなりません。このようにライフ起点でデータ取得と分析に取り組むことが、顧客インサイトの優位性を築く鍵となります。

私たちの調査では、真の顧客インサイトの優位性を実現している企業は、2 年間の平均EBIT(支払金利前税引前利益)成長率が4 .9%高いことが分かりました。

このような優位性を育てるための基盤となるのは強力なデジタルコアです。デジタルコアは、企業がトータル・エンタープライズ・リインベンション(企業全体の再創造)を通して自らを変革する際のあらゆる戦略的ニーズに対応するものです。固定的で独立したツールの代わりに相互に運用できることに重点を置き、最新のクラウドベースIT基盤に投資する必要があります。調査からは、顧客インサイトを強みとする企業の次のような実践が見えてきました。

ステップ1

顧客の行動やインタラクションから直接的なデータソースを開発する

ステップ2

部門、チャネル、地域、パートナー企業を横断する効果的なデータ編成を確立する

ステップ3

顧客との関係をより効果的に管理しサービスを提供するよう、データ分析の企業文化を育む

仲介する権利を確立する

バリュー・ネットワークを通じて成長を促進するための第二の要素は、仲介する権利を確立することです。企業は戦略的パートナーと顧客との関係の中心に自らを位置づけ、ネットワーク全体で価値を提供することを約束することで、仲介者として強力な役割を担えます。

仲介する権利を確立するには2つの要件があります。1つ目は、企業が適切な製品やサービスをレコメンドする能力に対する顧客の信頼があること。2つ目は、そのレコメンデーションが顧客のニーズに実際に合致することです。

ネットワーク内に隠れた価値を特定するには予測に関するシグナルが必要ため、専門のデータ収集と分析が不可欠です。そのため、パートナーシップは最小限のコストで自社の範疇からは分からない顧客の欲求を明らかにして満たす有益な方法なのです。しかし、こうしたパートナーシップは自社ブランドと同じくらい顧客から信頼される製品やサービスを提供して初めて機能します。そのため、企業が仲介する権利を維持するには、自社と価値観を共有し品質基準を満たすパートナーと提携することが重要です。

5社に1社

予測分析を活用してパートナーの製品やサービスを「非常にうまく販売している」と答えた企業は5社に1社のみ

88%

経営幹部の88%が予測分析を活用したパートナー企業製品の販売を今後3年間の優先事項として位置づけている

効果的なバリュー・ネットワークの構築

顧客インサイトの優位性と仲介する権利による戦略的パートナーシップの優位性、この2つの要素が組み合わさってバリュー・ネットワークが構築できます。このようなネットワークを構築している企業は、インサイトとアナリティクスの基盤を作り、顧客ニーズを特定し、変わり続ける需要に基づいてパートナーシップを継続的に拡大させることでより総合的な形で顧客に応えられるでしょう。

私たちの調査では、顧客インサイトとパートナーシップの両方において業界をリードする競争優位性を持つ企業は2年間で10.8%高い収益性を実現したことが分かりました。

バリュー・ネットワークを実現する4つのステップ

1. See 顧客とビジネスを新たな視点で捉える

顧客とビジネスを新たな視点で捉えるため、意思決定に役立つナレッジの基盤となるデータソースを特定しましょう。これらのデータソースには、マーケティング、セールス、サービス部門からの構造化された行動データや構造されていない会話データが含まれます。

2. Solve 変化するニーズに応える

変化するニーズに応えるよう、データをインサイトに変えて顧客の生活に寄り添う新たな方法を見つけましょう。データを理解しバリュー・ネットワークの仲介者となる機会を特定するには、テクノロジーと人間による分析の両方を駆使することが最善の方法です。

3. Simplify 顧客と価値ある関係を築く

顧客と価値ある関係を築くため、データとパートナーシップをバリュー・ネットワークにシンプルに融合しましょう。リーチすべき顧客のターゲットが絞られていることは、すべての関係者にとって有益です。また、ビジネスモデルの条件(トランザクションのレベニューシェアやインプレッション報酬など)や交換できるデータについて予め交渉することが重要です。そして、パートナー間の顧客体験とトランザクションの質がスムーズにつながるよう統括する相応しい立場にいるのは、仲介者となる企業です。

4. Scale 成長に向けて拡張する

成長に向けて拡張できるよう、クロスセルの機会を活性化しましょう。一般的に、顧客とのインタラクション頻度が高い企業は仲介において優位に立てます。目指すのは、複数の企業の垣根を越えた可能な限りシームレスなインタラクションを通じて、クロスセルの機会を最大化することです。

新たな機会を生むネットワーク

人々の生活はかつてないほど複雑になり、予測不可能なものになっています。そして、企業が人々とどのように接し理解するかも、生成AIを含む新たなテクノロジーによって急速に変化しています。人々との共感を維持することは難しくなると同時に、ますます重要性を増しています。そこで前進する道となるのが、バリュー・ネットワークの構築です。データ主導の戦略を用いて顧客インサイトの優位性を得て、戦略的パートナーシップを通じて仲介する権利を確立することで、企業は顧客ニーズに再び寄り添えるようになります。コスト効率の高い成長機会を創出するバリュー・ネットワークで、企業は顧客に価値ある関係を約束しながら将来の成長への道を開くことができるでしょう。

筆者

Dawn Anderson

Global Sales & Service Lead – Accenture Song

Grace Hughes

Content Design Lead – Accenture Song