カイヤ氏 インテリジェント・エンタープライズは2つの要素で成り立っています。1つは統合(インテグレーション)。もう1つはイノベーションです。
インテリジェント・エンタープライズにおける「統合されたシステム」とは、エンド・ツー・エンドで機能するシステムを意味します。もちろんデータベースも統合された単一のもので運用されます。同時に、領域がデジタルであれ、クラウドであれ、共通化されたプラットフォームを基盤として展開します。
2つ目のイノベーションには、「統合だけでなく、アジャイルかつフレキシブルな展開が必要」という意味が込められています。インテリジェント・エンタープライズのシステムは、SAPシステム同士あるいは非SAPのシステムを含めて連携して動作することが不可欠です。
そして、アクセンチュアをはじめとするパートナー企業とともに新しいアプリケーションを構築し、SAP S/4HANA、SAP Cloud Platformへと統合していくことが、インテリジェント・エンタープライズ実現への具体的なステップです。
森川氏 一昨年頃からSAPの製品群にインテリジェンスを組み込んでいくという話を聞いていましたが、実は営業現場では腹落ちしていませんでした。「他社もAIやブロックチェーン、アナリティクスを推進している中で、SAPはなぜ統合とイノベーションなのか?」というわけです。
カイヤ氏 私たちは「インテリジェント・テクノロジーそのものが価値なのではない」と考えています。真の価値は、ビジネスバリューを生むことです。たとえばサプライチェーンにおいては透明性とトレーサビリティが不可欠です。ブロックチェーンはこの課題に対応できる技術ですが、技術だけが存在するのではなく、ビジネスとしっかり結びつくことが重要だといえます。
森川氏 お客様へ製品を提案する立場としても、最近は先端テクノロジーがサービスや製品、つまりビジネスに溶け込んできていることを強く感じます。インテリジェント・エンタープライズにおいて「主役」は私たち自身。つまり「人」です。テクノロジーが主役なのではありません。人の仕事をいかに最適化していくかが重要な観点です。
ザイヤー おっしゃる通りです。「目的」はビジネス価値の獲得にあります。SAP S/4HANAはその目的の達成に貢献するテクノロジーを組み込むためのコア基盤であり、その本質は超高速の処理能力。SAP S/4HANAはこの能力によって、数々のイノベーティブな企業のCEOやCIOのアジェンダの解決に寄与しています。
加えていえば、SAP S/4HANAは、オープンなインターフェースでインテリジェント・システムを構築できる点も特徴です。あるお客様企業では、SAPのビジネスプロセスを取り入れながら自社の強み・差別化ポイントを強化したことで、サービスのスマート化に成功しました。結果的にこのお客様は飛躍的成長を遂げた成功企業となりました。
カイヤ氏 オープン性は現在のSAPにおける重要なキーワードです。かつてのSAPシステムはクローズドでしたが、現在はオープン化していますし、オープンソースも利用しています。利用するクラウドインフラも特定のベンダーでなければならないということはありません。
ザイヤー SAP自身も現在はオープンな組織を志向していますね。お客様企業における働き方も変化しつつあります。従来のような「バラバラの組織運営」では、ディスラプティブなビジネス環境では生き残れません。IT部門とユーザー部門が相互に協力しあい、助け合いながら1つのプラットフォームを使うことでビジネスがスケールする時代です。
森川氏 そうですね。近年、特定のベンダーのシステムやソリューションに縛られないことの重要性が増しています。また、データの流量をコントロールすることでクラウドインフラにかかるコストを管理することもできます。