広範なテクノロジー活用(P ROGRESS):
企業全体において新たなテクノロジーをどの程度広範囲に適用するべきか?
AIやクラウドなどの新たなテクノロジーによって、予測・演算のコストが削減されることで、あらゆるビジネス・プロセスが変革できるようになりました。
しかし、出遅れ企業だけでなく、中間企業もまた、マーケティングや販売など、限られたビジネス・プロセスにのみこれらのテクノロジーを適用しています。
組織のサイロ化をなくすべくハブを構築している場合であっても、そこで生み出されたイノベーションを拡張する方法がなく、十分な価値を享受できていないケースが多く見受けられます。
先行企業は、中間企業の2倍、また出遅れ企業の3倍のプロセスを変革しています。
先行企業は、同じテクノロジーを他のプロセスにも展開できるか合わせて検証することで、投資による価値を最大限享受できるようにしています。
柔軟なITシステムの構築(A DAPTATION): 現在のITへの投資はビジネス・ニーズの変化に適応可能か?
ITシステムを市況の変化に適応させることの重要性は理解されている一方で、実際に対応できている企業は多くありません。たとえば、出遅れ企業では、セキュリティに配慮するあまり、レガシーシステムをモダナイズすることなく、繰り返し修正を加えるという選択をする場合があります。この選択は、あくまでも対症療法であり、根本的な問題の解決にはなりません。
多くの中間企業は、アプリケーションのクラウド移行を選択しているものの、これは次善の策でしかありません。クラウドへの移行によって、データ・ストレージと演算のコストが削減されますが、戦略的アジリティがもたらされるわけではありません。
今回の調査では、先行企業の83%がレガシーインフラストラクチャからのデータの分離(デカップリング)が重要であると回答しています。これに対し、同じ回答をした中間企業は61%、出遅れ企業にいたっては37%に留まっています。
先行企業は、単なるデータセンターとしてクラウドを見ているのではなく、ビジネス全体におけるイノベーションの促進要素としてクラウドをとらえています。
適切な導入手順の策定(T IMING):
新たなテクノロジーの適切な導入方法とは?
今回の調査で、28の異なるテクノロジーの導入状況について企業にたずねた結果、出遅れ企業と中間企業は、周囲の企業に合わせてテクノロジーの導入を行っていることが明らかになりました。
たとえば、ほとんどの出遅れ企業が新たなテクノロジーを試してはいるものの、そのタイミングと順番を正しく選択できていません。
中間企業は、新たなテクノロジーを試すだけでなく、業界特化型のカスタマイズされたテクノロジーを取り入れる場合もあるようですが、いずれの選択肢も次善の策です。テクノロジー導入の順番を誤れば、テクノロジーへの投資の利益率が低下することになります。また、業界特化型のテクノロジーを導入するという選択肢は、特定のテクノロジーへの依存につながり、将来的にテクノロジーの方向転換や統合が妨げられることになります。
先行企業は出遅れ企業や中間企業よりも多くのテクノロジーを、より速やかに導入しています。また、テクノロジーの拡張を試みる前に、ベースとなるシステムを整備しています。
クラウドを活用したソフトウェア・アズ・ア・サービス (SaaS) について見てみましょう。
5年前にSaaSを導入したという企業の割合は、先行企業が約20%であるのに対して、中間企業は9%、出遅れ企業は8%でした。
現在SaaSの専門知識について自信があると回答した企業の割合は、先行企業が90%であるのに対し、中間企業は71%、出遅れ企業は29%となっています。
90 %
先行企業
71 %
出遅れ企業
29 %
中間企業
先行企業はSaaSの専門知識に自信を持っている
人間とマシンの協働(H UMAN+MACHINE
WORKFORCE): 労働者をテクノロジーにより強化するには?
出遅れ企業にとって最も魅力的な選択肢は、長年かけて有効性が実証されている汎用的なトレーニング法を活用することです。これは、出遅れ企業の多くが、新しいスキルが必要な場合に、すでにトレーニングを受けたプロフェッショナルを雇用できると信じているためです。しかし、現実に目をやると、スキルはたちまちのうちに陳腐化し、職務内容はこれまで以上に急速に変化しています。
中間企業は、従業員の個別のニーズに合わせて、最も適切なトレーニングを選択する傾向にありますが、このアプローチは、未来の最新テクノロジーを使いこなすための従業員のニーズに明確に応えるものではありません。
先行企業の86%が、体験型学習とあわせて、AI、アナリティクス、機械学習などのインテリジェント・テクノロジーを利用することで、必要な業務スキルに合ったトレーニングの予測・マッチングを行い、場合によっては職務内容を書き換えています。これに対して、同じようなアプローチをとっている中間企業は60%、出遅れ企業は35%に留まっています。
先行企業は、効率化だけでなく、仕事をより魅力的なものにするために、積極的にテクノロジーを活用しています。このような取り組みは、従業員との関係の強化にも大いに役立ちます。
ビジネス戦略とIT戦略の融合(S TRATEGY): 事業戦略とIT戦略を融合させるには?
5つ目の意思決定ポイントは、ビジネス戦略とIT戦略の融合です。事業・IT戦略を融合させることで、創造的破壊を先取りし、企業の成長機会を適切にとらえることができるのです。
出遅れ企業は、事業部門ごとにそれぞれの問題点への対応を許可する際、ITの効果的な利用を認めています。このアプローチは、事業部門のすばやい対応を可能にする一方で、IT部門以外の人間により管理される「シャドーIT」を生み出します。その結果、システムが連動することができず、戦略的アジリティが妨げられてしまいます。
同じことが、新たな市場への参入や、ビジネス・モデルの模索の際にも当てはまります。問題は、創造的破壊がかならずしも企業が検討している市場ではなく、あらゆる場所で生じ得る点にあります。
94 %
先行企業
76 %
出遅れ企業
47 %
中間企業
AIを活用した自動化による効果を可視化している先行企業の割合は、中間企業や出遅れ企業と比べてはるかに多くなっている
先行企業は、適応力に長け、境界線がなく、人間と調和するシステムを可能にするテクノロジー戦略を取り入れています。
これによって、組織のアジリティを高める環境が整い、企業内において大規模なイノベーションを起こすことが可能になっています。
また先行企業は、比較的新しい分野であっても、テクノロジーへの投資を管理し、その効果を可視化しています。AIベースの自動化の効果を可視化している企業の割合は、先行企業が94%であるのに対し、中間企業は76%、出遅れ企業は47%に留まっています。