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eコマース領域の支援体制強化


シームレス・カスタマーエクスペリエンスの実現

仲田 章郎
Accenture Song 顧問
加藤 圭介
Accenture Song マネジング・ディレクター​
2021年5月14日

概略

  • アパレル業界を中心にeコマース(EC)サイトの構築やプラットフォームの導入支援を展開するビジネットシステムがアクセンチュア インタラクティブに参画。これにより、アクセンチュアが有していた「マーケティング」と「サービス」のケイパビリティに加え、「コマース」領域をさらに強化し、「シームレス・カスタマーエクスペリエンス」の実現をより強力に推進することが可能に
  • 日本のアパレル業界には、①国内市場の縮小、②顧客の嗜好やニーズの多様化、③店舗運営の中核を担う販売員確保の困難化、④売上志向から利益志向への転換と、商品軸から顧客軸への変化の4つの課題がある
  • ビジネットシステムとアクセンチュア インタラクティブは、「シームレス・カスタマーエクスペリエンス」の実現、さらには「Business of Experience(BX)」の実現に向けて、一丸となって価値提供を推進
※本記事はアクセンチュアと株式会社ビジネットシステム(2021年2月にアクセンチュアグループに参画、2021年8月1日付でアクセンチュアを存続会社として合併)との協働によるeコマース領域の支援強化をご紹介するため2021年5月に公開されました​

アパレル小売業界を取り巻く4つの課題

仲田 章郎(以下、仲田) アパレル業界で数十年のキャリアを経たのちに私が起業したビジネットシステム(以下、ビジネット)は、店舗用POSと基幹系を連携するシステムの提供で事業を広げ、その後はリテール企業のECプラットフォーム導入・運用支援を展開してきました。

創業以来20年に渡ってコマース領域の事業を手掛けており、近年は、Salesforce Commerce Cloudとシームレスに連携する自社開発のオーダーマネジメントシステム(OMS)であるCCS(Customer Communication System)を中心とするクラウドサービスで、会員及びポイント統合や店舗とECの相互送客の実現をご支援しています。2021年2月、アクセンチュア インタラクティブグループへの参画を発表しました。

この参画により、アクセンチュアのお客様へビジネットの豊富なコマースの知見をご提供可能になったと同時に、ビジネットのお客様にはマーケティングやサービスとシームレスに連携する顧客体験の創出をお手伝いできるようになります。

今回の参画に私たちを突き動かした強い動機は、近年ますます強く感じるようになった日本のリテール、特にアパレル産業における共通の危機感です。日本全体を覆う停滞感の中で、EC先進国であるアメリカと比較して大幅な改革の遅れを実感しています。

ECは、Webサイトを用意すればすぐ成果に結びつくような単純なものではなく、店舗とECチャネル、顧客タッチポイントの設計、物流の管理手法を含めた総合的な取り組みです。そうした取り組みが必要となる前提として、昨今のリテール業界には大きく分類して4つの課題があると私は認識しています。

①国内市場の縮小
日本社会の人口減は、そのまま国内市場縮小に直結しています。リテールは消費者あっての業界ですから、アパレル企業が事業成長を維持するために海外展開を行う重要性はいうまでもありません。しかし海外市場では国内以上に激しく厳しい競争が待ち受けています。世界を相手に戦うための戦略や競争力の獲得が急務です。

②顧客の嗜好やニーズの多様化
オーダーメード志向のお客様から、シェアリングやリユースなどを希望されるお客様、環境に配慮した商品を選択するお客様など、嗜好やニーズが細分化しています。こうした価値観の多様化は世界的な傾向です。求められる顧客体験を分析し、ブランドと消費者のエンゲージメントを高める取り組みが不可欠です。

③店舗運営の中核を担う販売員確保の困難化
かつてアパレルは、人材が集まり易い業界の1つと考えられていました。人材層の厚さに支えられ、人材育成も予算と時間をかけて行うことで、「カリスマ店長/店員」といったファッションの先端を担う人材確保や話題作りができていました。しかし昨今は人材確保が困難で、十分な教育ができないまま店舗運営を担わざるをえないケースが業界全体で増えています。

④売上志向から利益志向への転換と、商品軸から顧客軸への変化
市場縮小に伴う売上の下落に対し、アパレル各社は近年、商品ロスの最小化のために在庫管理など売上志向から利益志向へと転換しつつ、同時に商品軸から顧客軸へと移っています。

体験のパーソナライズとリテール企業のパラダイムシフト

加藤 圭介(以下、加藤) この4つの課題の悪循環は、リテール業界全体で広く発生している現象だと私たちも捉えています。

特に、「購買体験の変化」は大きなテーマです。デジタル技術の進化と消費者の行動様式の変化が進む現在は「体験のパーソナライズ」を抜きにビジネスを語れません。顧客とのタッチポイントもアプリ、ソーシャルメディアなどのデジタルメディアが​増えています。

さらにそれを加速させているのが新型コロナウイルス感染症でしょう。ECの売上が伸長している理由として、「買い物時に可能な限り対人接触を回避する」「外出そのものを控え、購買行動をオンラインで完結させる」といった行動様式のシフトがあります。

このパラダイムシフトの中で、リテール企業に求められているのは「シームレス・カスタマーエクスペリエンス」です。これは例えばリアル店舗、EC、コンタクトセンターなど顧客との各タッチポイントにおいて一貫した顧客体験を提供するために、「マーケティング」「コマース」「サービス」を一体的・統合的に運用していくアプローチです。また、それを支える組織や業務オペレーション、物流や在庫最適化などインフラ面の変革も重要なテーマです。

仲田 ある調査でも店舗(オフライン)だけで購入する消費者は売買回数が2.1回であるのに対し、オンラインとオフラインをクロスして利用する消費者は3.3回というように、購入回数が約150%アップすると言われています*1。店舗とECの在庫の共有化には情報システムの刷新を含む、ビジネスモデルや業務オペレーション改善、物流改革を含む大きな経営課題があるといえます。

ビジネットでは創業から約10年間は、実店舗を主軸とするリテール企業向け基幹システムを中心に事業展開してきましたが、2014年からはクラウドおよびECへと軸足を移し、ECサイトの構築・運用事業を強化してきました。短期間で多数のECサイトの構築を手がけており、高効率なプロジェクト運営には自信があります。2018年にはSalesforce.comともビジネスパートナー契約を締結しています。

このようにコマース領域では着実に実績を伸ばしてきましたが、アパレル企業がブランドのファンを増やすには、オムニチャネル会員やリピーターを増やすなど、マーケティング領域の取り組みが重要です。ビジネットではマーケティング領域の拡充による、お客様企業の売上向上への貢献こそが私たちの次なるミッションだと考えていました。

加藤 どのチャネルにおいてもパーソナライズされた体験が提供され、ストレスなくスムーズにショッピング体験ができることこそ、売上向上に繋がるポイントであると考えます。そのためには、顧客データや行動データなどを活用したマーケティングコミュニケーションが重要です。

我々にとって強化が必要だったコマース領域のケイパビリティと、ビジネットがお客様企業への提供価値向上のために必要としていたマーケティングとサービス領域のケイパビリティ。これらの提供価値が今後飛躍的に高まると期待しています。

(出典)*1: Criteo社 Shopper Story 2020: The New Consumer Mindset
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顧客体験を起点とするシームレス・
カスタマーエクスペリエンス

仲田 振り返れば20年前、データに基づくシミュレーションで事業モデルをデザインしているアメリカ企業の手法を知って衝撃を受けました。昨今は、店頭に商品を並べれば売れる時代ではありません。売上向上と利益率改善を進めるために、日本企業には「ビジネスの仕組み」の根本からの転換を提唱しています。

たとえば衣類や服飾品は、購入決断のために試着が重要なプロセスです。試着には商品の現物が必要ですし、店員や買い物に同行する友人といった「背中を押してくれる人の一言」の重要性は今なお不変です。だからこそ、「ECで注文し、店舗で試着し、購入後は自宅に配送される」などの新しい購入体験の設計が重要だと思います。

加藤 パンデミック前にニューヨークを視察した際に、私も日米の差を感じました。オンラインからスタートしたD2Cプレイヤーがリアルの店舗も展開し、これまでの小売業とは異なる顧客体験起点でのビジネス展開を行っていました。リアル店舗の位置づけも従来とは異なり、例えばユーザーは予め店舗訪問を予約し、自ら選んだ服の試着を店頭で行う。オンラインで選び、店舗で確認、決済はオンライン。また、リアル店舗でも商品を普通に並べるだけでなくそれらの製品を活用するシーンを想定した空間をつくり、実際の体験をさせ購買意欲を高めて、決済はオンライン。そういった顧客体験起点の発想やそこにテクノロジーを有効に活用するという考え方は進んでいると感じました。

仲田 たしかに欧米企業の経営層には「割り切って考える、思い切りの良さ」を感じます。Salesforce製品の使い方においても、日本企業にぜひ取り入れて欲しい大胆な合理化がみられます。市場をリードするような新しい取り組みへのトライアル&エラーが、日本でもより必要だと考えています。

たとえば、日本の人口の3分の1を占める中高年層へアプローチするには、単にスマホアプリをリリースするだけでは不十分です。TV通販に慣れた世代をいかにしてデジタルシフトしていくか。まったく新しい発想による環境整備、インフラ設計、タッチポイント作りが今後のビジネスの成否を分けると考えています。

加藤 そのうえで、アクセンチュア インタラクティブがビジネットに期待している第2のポイントがECにおける業務知識です。ECサイト構築だけでなく受注管理やフルフィルメント、カスタマーサポートなどECを運営していく上で必要な業務を熟知していると考えています。

仲田 ビジネットでは、お客様企業とのWin-Winの関係を最優先事項に掲げています。お客様の成長が私たちの成長、お客様の成功が私たちの成功という価値観です。つまり、お客様のビジネス発展へのコミットメントが我々のコアにあります。これまでビジネットが特定ベンダーの配下となったことはなく、お客様と直接のプロジェクトが主体です。それによるダイレクトな貢献を強みとしてきました。

同時に、ビジネットにおいてはエンジニアを中心とする社員とのWin-Winも経営コンセプトの1つです。報酬、職場環境、新しいチャレンジができる仕事の創出を明示しており、この価値観はアクセンチュア インタラクティブへの参画後も変わりません。今後は、コマースに閉じず関連領域へと仕事の幅が広がる可能性やキャリアの選択肢も増えると期待しています。

加藤 私は、元々IMJに在籍しており、2016年のアクセンチュアグループ入りのタイミングでアクセンチュア インタラクティブに参画しています。アクセンチュアとIMJの融合の中で感じたのはアクセンチュアの異なるケイパビリティを理解し、尊重する企業文化です。IMJもアクセンチュアグループ参画当初はうまくシナジーを創出できるか不安と期待の入り混じった状態でしたが、​協働プロジェクトで成功体験を共有していくことで組織文化の融合や仕事のシナジーを生み出していけました。

ビジネットとも、そうして相互理解を深めながらシナジー創出を実現していきたいと考えています。それが結果的にお客様企業への大きな付加価値のご提供につながります。

仲田 ビジネット所属のエンジニアが培ってきた専門性は高く、ビジネットの財産です。協業を通じてOMOOnline Merges with Offline/オンラインとオフラインの融合)の仕組みをより磨き上げ、日本のアパレル企業がファッションの最先端として輝けるようご支援していきます。また、アクセンチュア インタラクティブとの協業でアパレル以外の企業の支援も強化していきたいと考えています。

お客様には、アクセンチュア インタラクティブとの協働で実現する大きな価値にご期待いただきたいと考えています。

加藤 コミットメントや協働、コラボレーションで価値創出を目指すビジネットの文化も、アクセンチュアとの共通点だと思います。今後、ビジネットのメンバーと共にプロジェクトを推進していく体制が構築されますし、なによりアクセンチュアやIMJのメンバーもビジネットからコマース領域の知識や経験を学んでいきたいと思います。

マーケティング × コマース × サービスの一体的な連携による途切れないバリューチェーンの実現と、顧客体験を起点とするシームレス・カスタマーエクスペリエンスの実現を目指していきます。

一丸となって、消費者の属性や行動でパーソナライズされた顧客体験の創出、集客から購買意欲の醸成、購買へとつなげていく統合されたCRMを軸として、Business of Experience(BX)による変革をお客様企業へご提供していきましょう。

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