中尾 これまで消費者はリアル店舗や広告のクリエイティブなどを通じてブランドを体験していました。しかし昨今ブランドを形作るものは、デジタルを通じて提供されるサービス体験そのものとなっています。顧客体験がビジネス成長の重要なドライバーであるのはそのためです。
同時にデジタルは、システムによって成立しています。つまりフロントエンドとバックエンドのSIによって顧客体験を届けるシステムが具現化します。
バックエンドは業務システムであり、要件を定義して構築していく一般的なSI案件と共通しています。フロントエンドはお客様のビジネスの成長の柱となるカスタマーエクスペリエンスを設計し、実現へと落とし込んでいく仕事です。アプリのデザイン、UIやUX、サービスの使い勝手の設計力、デザイン力が必要となります。
加藤 テクノロジーの活用については、タンバリンは特にマルチクラウドを強みとしていますね。
中尾 はい。「デザインする力」と並んで、「クラウドプラットフォームを駆使して短期間でシステムを構築する力」がタンバリンの主要な提供価値です。この2点は多くのお客様から評価いただいています。
世の中にリリースされるまでの間に、様々な技術的制約によって当初の構想やイメージ、予定した機能が失われる場面をたくさん経験してきました。だからこそ、「良い体験」を実現させるにはデザインと開発がシームレスにつながるテックスタックや開発プロセスが非常に重要だと考えています。
私がタンバリンの経営者として大切にしてきたのは、こういう点です。お客様企業が必要としているビジネス上の価値を、我々がいかに具現化するかを突き詰めてきました。
だからエンジニアに求めるのはスピード感と同時に、ユーザーと同じ視点に立つこと。お客様企業の担当者と対話する際、「どのように作ったらエンドユーザーにより良い体験をお届けできるか」といった視点で考え、語り、直接提案できる顧客志向のマインドを持つエンジニアであることを重視してきました。
加藤 そうした経緯の中でSalesforceのソリューションのナレッジも蓄積されてきたのですね。
中尾 そうです。クラウドのメリットはSIに必要な経験をクイックに蓄積できる教材や事例が充実していることです。加えて、タンバリン社内にも多くのナレッジを集約できています。短期間でエンジニアやPMをオンボードするうえで、ナレッジは不可欠な武器なのです。
タンバリンではスタッフの47%がSalesforceに関する資格を取得しています。たとえばSalesforce認定アドミニストレーター、Salesforce認定B2C Commerce デベロッパー、Salesforce認定Heroku Architectureデザイナー、Salesforce認定JavaScriptデベロッパーなどの有資格者が多数在籍し、プロジェクト現場をリードしています。
創業時から、私も含めたメンバーがSalesforceをプラットフォームとして扱っています。Salesforceの知見はもちろん、Herokuも日本に進出した当時から活用しているため国内随一のノウハウを蓄積している企業と自負しています。Salesforce Commerce Cloudでカバーしきれない部分をHerokuで作るケースも多々あります。
加藤 案件として多いのはSalesforce Commerce Cloudですか?
中尾 数が多いのはその通りですが、Salesforce Commerce Cloud単体だけでなく、周辺の決済サービス、ID認証基盤、Salesforce CDPとのデータ連携など、幅広いプロジェクトがあります。Salesforce Marketing Cloudと連携させるプロジェクトにも以前から取り組んでいましたが、2020年1月に社内で準備チームを立ち上げて以来、非常に力を入れてきました。
このようにマルチプラットフォームやクロスプラットフォームと呼ばれる、基盤をまたがるクラウド環境の構築・連携に関するノウハウには自信があります。その分野に強いエンジニアが多く在籍しているのもタンバリンの強みです。
加藤 クロスクラウドを高い技術レベルで手掛けられるベンダーは、日本国内でも決して多くはありませんね。
中尾 はい、Salesforceの複数の製品を同時に活用するプロジェクトの経験は豊富です。