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知見

変革をもたらす5つの力

5分(読了目安時間)

2023/04/25

概略

  • 世界は変わりました。今やすべての企業が、永続的で加速された創造的破壊の危機に直面しています。
  • デジタルトランスフォーメーションだけでは、もはや十分ではありません。現在、そして未来に企業が競争力を保ち続けるためには、5つの重要で相互関連する変革の力を受け入れる必要があります。
  • これら5つの力を活用して変化を受け入れる企業は、高い収益、低コスト、高い生産性を実現し、すべての株主により多くの価値をもたらします。

変革をもたらす5つの力とは何でしょうか?

指数関数的なスピードで進む創造的破壊は、企業がポジティブな変化を実行しうる好機にあることを意味します。量子コンピューティングジェネレーティブAI、Web3、ロボティクス5Gメタバースなどの新興テクノロジーの急速な進歩は、産業を変革し、新しいビジネスモデルを可能にし、従来の働き方や生活様式を再構築できるからです。

経済、社会、地政学、気候、消費者、テクノロジーの変化を網羅した複合指標であるアクセンチュアのグローバル・ディスラプション・インデックスは、2017年から2022年にかけて創造的破壊のレベルが200%上昇したことを示しています。これに対し、2011年から2016年にかけての指数の上昇率はわずか4%でした。このように企業は今、かつてないスピードで変化しつづけなければならない状態に直面しているのです。 

この複雑でダイナミックなビジネス環境を乗り切るために、経営者は変革をもたらす5つの力を使う必要があります:

  1. トータル・エンタープライズ・リインベンション(企業全体の再創造)の導入と実行
  2. 人材の才能を見つけだし、創造し、開花させる
  3. サステナビリティをリードする
  4. メタバースの力を取り込む
  5. 進化し続ける革新的テクノロジーを活用する

これら5つの力はそれぞれ特徴的であり、ビジネス全体の変化を促進することができます。しかし、これらは深く絡み合っているため、個々に有するだけでは不十分です。つまり、5つの力を同時に発揮させる必要があるのです。5つの力を組み合わせて活用することで、企業は成長を加速させ、次の10年で成功する方法で変革することができます。

1. トータル・エンタープライズ・リインベンション(企業全体の再創造)

トータル・エンタープライズ・リインベンション(企業全体の再創造)は、企業と企業が属する業界が新たな領域でパフォーマンスを発揮することを目的とした意図的な戦略です。強力なデジタルコアを中心に、テクノロジー、データ、人工知能(AI)、新しい働き方を通じてビジネスのあらゆる部分を変革することで企業の成長を加速させ、業務を最適化します。DX(デジタルトランスフォーメーション)はビジネス内の個々の要素を変えることができますが、トータル・エンタープライズ・リインベンションはビジネス全体を根本的に変えます。会社で起きていることを世界で起きていることと結びつけ、新しいスキルを育成します。このようにして、テクノロジー、チェンジマネジメント、コミュニケーション、コラボレーションをより深く理解することができるようになるのです。

トータル・エンタープライズ・リインベンションを最大限に活用する組織(「リインベンターズ(再創造企業)」と呼ばれる)は、競争上の優位性を獲得しています。私たちの調査によると、彼らは10%高い増分収益成長、13%高いコスト削減、17%高いバランスシート改善を生み出しています。76%のリインベンターズは、非財務的な目標を設定することが成功のために非常に重要であると答えています。その結果、イノベーションでは11%、サステナビリティでは32%、顧客、サプライヤー、従業員に対するエクスペリエンスでは31%高いスコアを獲得しています。

2. 人材

変革には、人材のエンパワーメントが欠かせません。言い換えれば、人材戦略なくしてビジネス戦略はありえないということです。CEOが新たな成長への道を模索する中、アクセンチュアの調査によると、データ、テクノロジー、人材、この3つの資源を複合的に活用し最適化した企業は、トップラインの生産性(従業員一人当たりの売上高)に最大11%のプレミアムを乗せられることが分かりました。

この組み合わせの効果を最大化するために企業が行うべきことは、以下の3つです:

人材にアクセスする:

人材関連のデータとインサイトを活用して、人材をより直接的にビジネス成果に結びつける企業は、戦略的な自動化を促進し、従業員体験を変革することができます。AIを活用したインサイトにより、組織が必要とするスキルと、そのスキルを持つ人材をどのように引きつけるかを理解します。社内では生産性とコラボレーションを促進するデジタルエコシステムを構築し、社外では未開拓の新しい人材を見つけるために募集・採用プロセスを見直します。

才能を創造する:

技術主導の戦略と予測的洞察により、企業は新たなニーズに対応するためのスキル転換や再教育が可能な労働者を特定します。企業は、成長目標を達成するためにスキル開発に投資し、ニーズが変化してもビジネス全体で適切な能力を適切な時期に提供するインフラを構築します。

人の可能性を引き出す:

あらゆるレベルで人材を優先し、企業全体で境界のないコラボレーションを実現する組織は、成長機会を高解像度で捉えることができるCHRO(最高人事責任者)に権限を与えることで、最も効果的にこれを実現します。

3. サステナビリティ

デジタル革命は、人々の生活や働き方を大きく変えました。サステナビリティには、ゼロ・カーボン経済への移行、人権のサポート、インクルージョン&ダイバーシティの取り組みなど、環境、社会、ガバナンス(ESG)のあらゆる課題が含まれています。

ESG課題に注力する企業は、財務的に優れた業績を上げ、同業他社よりも最大で2.6倍もの価値を株主に生み出しています。また、私たちが調査したCEOは、持続可能性をビジネスモデルの中核として位置づけることが、不安定な状況から身を守り、安全、成長、レジリエンスの基盤を構築す重要な方法であると述べています。これらの企業は、持続可能な社会を実現するため、ネット・ゼロへの移行を加速させたり、より効率的なバリューチェーンを構築するなど、さまざまな取り組みを行っています。

しかし、こうした取り組みが成功するかどうかは、価値観と収益性の関連性をステークホルダーに理解してもらえるかどうかにかかっています。そのため、組織はサステナビリティのDNAに基づいて構築され、すべてのステークホルダーの信頼を醸成する社会的インパクトと財務パフォーマンスを提供する必要があります。合意形成のギャップを埋め、行動を起こすことで、企業はサステナビリティを変革をもたらす5つの力 の1つとして活性化させることができるのです。

4. メタバース

物理的世界とデジタル世界の境界線が曖昧になりつつあり、これから起こることが次世代を方向づけようとしています。メタバースによって、技術的に強化された体験、現実、ビジネスモデルが急速に引き起こされています。現実世界のデジタルレイヤーから完全なるバーチャル環境まで、メタバースは無限の可能性をほぼ無限に提供します。

バズワードや宣伝文句に惑わされがちですが、こうした没入型テクノロジーのインパクトは非常に現実のものです。スマート工場では、安全性、効率、環境への影響を改善するためデジタルツインをオペレーションに組み込んでいます。企業は、新入社員を歓迎し、リモートワーカーをつなぐために、仮想トレーニングセッションを活用しています。また、社交、娯楽、情報共有、学習を可能にする消費者スペースの新たな機会が新しい世界全体に広がっているのです。経営者は、今後3年間で収益の4.2%、つまり1兆ドルの価値がメタバースからもたらされると予想しています。

大企業は、このデジタル実験のために必要なテクノロジーとスキルに投資しています。しかし、成功のためには、テクノロジーのみならずクリエイティブで人を動かす体験が肝要です。メタバースを変革の力として活用するために、企業は人間的な可能性を見出す必要があります。つまり、ユーザー間の信頼を築き人生を変えるこの新しいテクノロジーが、社会の最善の意図を上回ることがないようにすることです。組織は信頼できるテクノロジーと人間中心の体験が持続可能で多様性のある包括的な未来を実現する、責任あるメタバースの創造を目指さなければなりません。

5. 進化し続ける革新的テクノロジー

合成生物学やスマート素材、量子コンピュータ、宇宙産業など、新しい形の技術革新は想像力を広げ企業が実現できることの限界を押し広げています

クラウドコンピューティングは、企業がかつてないほどのスピードと俊敏性をもって活動することを可能にしています。インダストリーXは、AR/VR、5G、ロボティクス、デジタルツインなどのデータとテクノロジーを駆使して、エンジニアリングと製造の世界を変えようとしています。そして、AI(人工知能)は、あらゆる企業のほぼすべての側面を根底から覆す可能性を示しています。テクノロジーは指数関数的な速度で進化しており、変化は避けられないだけでなく、継続的な力となっているのです。

漸進的な歩みではもはや取り残されます。企業はテクノロジーを使って、消費者にリーチする新しい方法を特定し、企業のレジリエンスを構築する必要があります。画期的なイノベーションを生み出し、今後数年間をリードしていくためには、こうした技術を活用しながら継続的に変革し、成長していく必要があるのです。つまり、技術革新を全社的な意思決定の指針とし、戦略的な必須事項としてとらえることが重要です。

すべてのビジネスは、将来にわたって存在し続けるために、創造的破壊を受け入れる必要があります。変革をもたらす5つの力の1つである「進化し続ける革新的テクノロジー」を活用することで、企業は今日のイノベーションに対応し、次に何を起こすべきかを決めることができるのです。

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