これまでの「常識」が通用しない消費財市場の現実
消費財業界は今、大きな時代の岐路に立たされています。ビジネスのグローバル化、販売・供給をはじめとするチャネルの多様化、消費者の価値観の変化、さらには既存のビジネスモデルを完膚なきまでに破壊するディスラプティブなユニコーン企業の台頭など―。急速なデジタル化がもたらすこうした劇的な変化の波に洗われて、伝統的な消費財メーカーのいくつかは存亡の危機にさえ瀕しています。
そこで本稿では、消費財メーカーがこの状況を乗り切り、新たなビジネスの可能性に向けたトランスフォーメーションを実現していくためには、何をしなければならないのかについて考えてみたいと思います。
消費財業界に押し寄せている変化の荒波の大きさは、以下のキーワードを少し掘り下げてみれば一目瞭然です。ここには消費財ビジネスにおけるかつての「常識」が、次々と塗り替えられている現実が明確に示されています。
コンシューマー(消費者)-消費財ブランドの価値を決める主導権を、ブランド側が握っていたのはすでに過去の話です。その評価の主導権は、すでに消費者の側にシフトしています。
オファー(ブランド訴求)-これまで信じられてきたブランドの普遍的な価値基準は、もはや通用しません。現在の「気まぐれ」な消費者が状況に応じて自由にブランドを取捨選択する状況を、ブランド側は受け入れなければならなくなっています。
チャネル(顧客との接点)-これまで消費者との接点=チャネルは個別に存在していましたが、現在は単にeコマースに出品すれば良いというわけではなく、そこで得たインサイトをもとに実店舗などのオフラインチャネルに誘導するなど、複数のチャネルを横断したビジネスモデルの創出が求められています。
テクノロジー(情報技術)-従来はERPなどを活用した情報の統合性、リアルタイム性が重視されてきましたが、ここでは複雑になりがちな運用上の課題がありました。これからは社内のサービスも含めたリソースとの疎結合による、よりシンプルなシステムが求められてきます。
コンペティター(競合との力関係)-これまでのビジネスの強みは主にスケール(規模)に依存してきましたが、現在では小規模なスタートアップ&ユニコーン企業が大手を凌ぐほどの競争力を発揮するようになっています。
エコシステム(事業連携)-従来のビジネスでは、個別の組織や部署ごとにそれぞれのパートナーや得意先との関係を構築してきました(サイロ化)。これからは社外のプレイヤーも含めたエコシステムの中で、新しいビジネスモデルを創造していく必要があります。