浅井雅也(以下、浅井) 2019年4月にアクセンチュアによるDroga5(ドロガ
ファイブ)買収合意のニュースが世界中の広告・クリエイティブ業界関係者へ衝撃を与えたとき、私は前職の広告代理店でその第一報を耳にしました。
Droga5が創設されたのは2006年。それから15年という歳月のうち、2010年から2019年はAdweek誌「Agency of the
Decade(この10年で最も優れたクリエイティブ・エージェンシー)」に選出されていますし、カンヌライオンズを始めとする世界の名だたる賞でグランプリを受賞し続けています。クリエイティブの世界で生きていて、Droga5の名前を知らない人はいないでしょう。
しかし、アクセンチュアに対して「クリエイティブに強い会社」というイメージを持っている人はほとんどいません。ですがアクセンチュア
インタラクティブが生活者の体験にフォーカスし、日本のブランド変革を推進していることはすでに様々なメディアで語られていて、クリエイティブ業界においては変化の兆しとして受け止められています。
一方で私自身はどうかというと、企業の経営層と共に手がける戦略や企画の立案から、生活者の日常に溶け込んでいく体験の創造まで、一貫したブランド体験やコミュニケーションを生み出したいと考えていました。それにより、日本のブランドをより意義があり、価値のあるものへと作り変えていきたい。私にとってDroga5 Tokyo設立とCCO就任は、まさに自分の実現したかった未来に近づくための最高の機会でした。
Droga5の拠点はNYとロンドンにあり、3つ目の拠点であるDroga5 Tokyoはアクセンチュア
インタラクティブ傘下となって初の新拠点です。さらに、記念すべきアジア初のオフィスでもあります。創業者のデビッド・ドロガ自身も東京を「新しい成長の拠点」と位置付けていて、日本のクリエイターや日本企業・ブランドへの強いリスペクトを表明しています。すでに多くの日本企業のトップの方々とブランディングのための取り組みを始めており、メンバー全員が新しい挑戦にワクワクしっぱなしの日々です。
黒川
順一郎(以下、黒川) 世界最高峰レベルのクリエイティブ・エージェンシーDroga5の東京拠点が開設され、社内はもちろん、お客様企業からの注目度やクリエイティブへの期待はかつてないほど高まっています。
ここ数年、日本でもクリエイティブやデザインを起点にした経営改革への意識が急速に強まっていて、プロジェクトの案件も日々増えています。一般的にコンサルティング会社の仕事は企業の売上向上や生産性改善、業務効率化といった経営課題の解決だとされていますが、アクセンチュア
インタラクティブが目指しているのはお客様企業の先にいる生活者の体験のための変革です。そして、クリエイティブの力による変革の活性化が今ほど求められている時代はありません。
これらの経緯から、私もDroga5とのコラボレーションを心から楽しみにしています。浅井さんはDroga5 TokyoのCCOとして、どのように活動を進めていくお考えですか。
浅井 日本でDroga5が何を描き、どう具現化していくか、グローバル側の幹部メンバーと毎日のように議論しています。彼らがDroga5 Tokyoに期待しているのは、日本のブランド(企業)がパーパス起点で本質的なメッセージを発信できるよう支援することです。
日本はまだまだセールスプロモーションとしての広告が多く、社会や人々の生活の本質を問うような取り組みは未開拓です。しかしDroga5が欧米で実践した成功例を日本でコピー&ペーストするような活動をするつもりはありませんし、グローバル側もそのようなことは望んでいません。Droga5のDNAが日本でどのように根付き、開花し、成熟し、進化するかが注目されています。
Droga5のDNA
Creatively Led(クリエイティビティ)
Strategically Driven(ストラテジー)
Systems Thinkers(システム思考)
Humanity Obsessed(人々のために)
だからこそDroga5
Tokyoは単なる営業拠点でも下部組織でもなく、NYやロンドンと対等な関係にあります。今後設立される中国やブラジルのオフィスも同様であり、私たちは日本から世界に影響を与えるようなアウトプットを生み出していきたいと考えています。