責任あるAI：理論から実践へ

AIによって企業が達成できる真の価値があるにもかかわらず、多くの企業がAIに関連するリスクへの対応に苦慮しています。

リスク担当マネジャーを対象としたグローバル調査では、AIが今後2年間で予期せぬ事態を招く可能性の最も高い要因であると述べた回答者が58%、会社全体へのAIの導入に伴うリスクに十分対処できると述べた回答者はわずか11%でした。

最も懸念されているのは、偏見（バイアス）、差別、公正性、説明責任などの領域です。これらの問題には特定の定義がありますが、企業がそれを具体的な行動に移すには難しい意思決定やアプリケーション特有の制約を伴います。

これらの疑問を解決するために、アクセンチュアは4大陸にまたがる19社の責任あるAIの実務者（データサイエンティスト、AIエンジニア、弁護士、産業・組織心理学者、プロジェクトマネジャー）にインタビューを行いました。アクセンチュアの分析によると、原則を実践に移すための体系的な内部アプローチの開発に苦戦している組織があるようです。これは、技術的な複雑さ、必要な人材及びプロセスの規模を過小評価していることが原因であることが分かっています。

企業は、倫理的な原則を実践的かつ効果的で測定可能な指標に変換するという重要な課題に取り組む必要があります。また、それを日々のプロセスに落とし込むためには、組織面、技術面、運用面、風評面に関する適切な土台が必要です。アクセンチュアは、世界中の企業に責任あるAIのソリューションを提供してきた経験に基づき、責任あるAIを実現するための4本の柱を定義しました。それぞれの柱について、実務担当者が抱えがちな悩みをまとめ、対処方法を、実際のケーススタディを基に紹介します。

従業員主導での新しい働き方の推進、ヒトと人工知能との「コラボレーション」の促進。

実務者の声:実務者へのインタビューでは、仕事に対する適切な評価基準の必要性とそれに沿った適切な評価が強調されました。また、風評被害の防止を含めたリスクの軽減は、あまりにも軽視されていると指摘しています。また、時間に追われているため、責任あるAIの長期的なメリットよりも、短期的な製品の成功が優先されていることもあります。

AIの高度化を可能にするガバナンスとシステムの設定。

実務者の声： インタビューによると、企業はステークホルダーとの意見の不一致、官僚主義、相反する課題、プロセスやオーナーシップが不透明であること等に悩まされているこが分かりました。多くの場合、個人は自らの価値観や評価に基づいて、場当たり的な行動をとるため、不明確なガバナンスや説明責任、不要な対立、グループ間で競合するインセンティブは、最終的に、責任あるAIに関する怠慢な考え方につながります。

信頼できる設計、説明可能なシステムとプラットフォームの構築。

実務者の声: インタビューを受けた実務者の組織が直面している最大の障壁の1つは、データ、モデル、成果物の倫理的利用とアルゴリズムの影響を定義し、測定する専門知識が欠けていることでした。これらのリスクを監視し、軽減する技術的な方法を確立しなければ、企業はシステムが公正であるという確信を得られません。企業はアルゴリズムの公正性などの理論的な指標を組み込むことに苦労しています。責任あるAIを収益率やクリックスルー率で評価することはできませんが、多くの企業は未だにこのような伝統的なパフォーマンス指標を用い、実務者の仕事の成果を評価しています。

自社の価値観と倫理ガイダンスに則った責任あるAIのミッションの設定と発信。

実務者の声:インタビューでは、組織、運営、技術上の適切な土台がなければ、企業は問題が起こってから対応するというアプローチで責任あるAIに取り組まざるを得なくなり、信用が大きく損なわれるという意見がありました。

成功を収めている企業は、初めから体系的なアプローチで責任あるAIに取り組んでおり、変更が必要になった場合の規模と複雑さを理解しています。そして、複数の課題に同時に対処しています。

このように、自信を持って理念を実践に移し、会社全体で AIの専門化 をサポートして、責任あるAIの長期的な価値を証明するために必要な体制を整えています。

今回の調査では組織的、運用的、技術的、風評的な問題が、組織の足かせとなっていることがわかりました。当初は倫理上の要件や法的要求に焦点が当てられていましたが、組織の成功は、責任あるAIをはじめとするAIをより広くサポートするために、従来の仕事のやり方を修正できるかどうかにもかかっています。責任あるAIを組織全体に拡大して、その長期的な価値を証明するために必要な体制を構築することで、「実践から証明へ」の極めて重要な移行を果たすことができます。

アクセンチュアは、25の質問により、クライアントのモチベーションや課題、人、プロセス、テクノロジーの観点から自社の成熟度を同業他社と比較し、評価します。貴社では、責任あるAIに関する取り組みがどこまで進んでいますか。