データ駆動型経営の基盤となる基幹業務プラットフォームが実現
アクセンチュアが支援した今回のAppleプロジェクトにより、「SAP S/4HANA」を中核に、「Microsoft Azureクラウド」上で稼働する基幹業務プラットフォームが構築されました。財務・会計システムを「SAP ERP」にグローバルで統一し、調達・購買システムに「SAP Ariba」、サプライチェーンプラニングに「SAP IBP」、経費精算システムに「SAP Concur」、人事システムに「SAP SuccessFactors」を導入するなど、SAPのさまざまなクラウドソリューションをグローバルシングルインスタンスに統合し、世界的にも先進的なフルクラウド環境の基幹業務プラットフォームを実現しました。この基幹業務プラットフォームの構築により、世界中の地域や部門にまたがったサプライチェーンの各業務領域で扱うデータをはじめ、財務・会計、調達・購買などのデータが統一されました。
その結果、事業継続計画への対応、合弁・買収などの事業拡大に即座に対応することが可能となり、またグローバルで適所適材の人材配置と評価を可能にする人事システムは、イノベーションをさらに促進させる仕組みとして活用されています。
「プロジェクト開始当初は世間でもデータドリブン経営という言葉もまだほとんど使われていないような状況でしたが、アステラス製薬は既にデータ活用に関してかなり重きを置かれていたように感じました」と永田は振り返ります。
「Appleプロジェクトにより、グローバル全社横断の基幹業務プラットフォームをフルクラウドで構築することができました。この成功要因は、当社とアクセンチュアがグローバルのワンチームでプロジェクトを遂行し、当社のあらゆるニーズに応えてくれたことにあります。現在もプロジェクトは進行中ですが、プロジェクト最大の成果はすべてのトランザクションデータが1カ所に集約されたことにあります。従来は経営トップが意思決定を行うために必要なデータを収集・分析するのに数週間~1カ月の時間を要していたのに対して、現在は1つのプラットフォームにすべてのデータが集約されたことで、意思決定の精度とスピードが上がりました。またこれまでは慎重を期すあまりに業務においてブレーキを踏みがちになっていましたが、データが集約されたことで、アクセルを踏めるようになりました。このように業務の精度とスピードが上がったことで、コストが相対的に下がることも見込んでいます」(須田部長)
今後の課題やApple導入効果について、岡村副社長は次のように述べます。
「課題に関して言うとまず仕組みを安定化させることができましたが、ビジネスユーザーからは従来の仕組みに比べて使い勝手の面で戸惑うことがある、という声が多いです。ただ、私はよく自家用車と公共交通機関に例えるのですが、同じ目的地に行こうとした際に自家用車なら、好きな時間に自分の持ちたいものをトランクに入れ、同乗者も自分で選んで、途中寄り道しながら行くことも可能です。しかし、公共交通機関を利用するとなれば、決められた時間に出発し、荷物もコンパクトにして、隣にだれが座るかもわからない。比較すると公共交通機関は不便なのだけれども、そういったことを皆がちょっとずつ我慢していくと社会全体としては大きな効率化につながります。ビジネスユーザー側の人たちは、『これから自分たちは公共交通機関を使って目的地に向かうのだ』という意識を持たなければならないと思っています。
導入効果に関しては、私共製薬業界というのはともするとコンサバティブでリスクに対して非常に敏感なところがあり、その結果あとから振り返るとやらなくてもよかったことに多くのリソースをつぎ込んでしまった、というケースが多々あります。今回の基幹業務プラットフォームによって業務の標準化が達成され、グローバルの横連携もしやすくなりました。これをデータ駆動型経営基盤として進化させていくことにより、『ここまではリスクを取っても大丈夫』というのを検証しながら業務を進めることになれば、冗長化しがちな業務をスリム化するだけではなく、やらなくてよい業務の識別ができるようになり、その分もっと別の業務に取り組むべきだ、という社員の意識を変えていくことにもつなげていきたいと思っています」(岡村副社長)
アクセンチュアの永田満はAppleプロジェクトについて、次のように総括します。
「アクセンチュアにはグローバルでビジネスを展開する製薬企業を支援してきた、豊富な実績に基づく知見の蓄積があります。今後も、こうした知見を惜しむことなくお届けし、Appleプロジェクトを通じてアステラス製薬が進める業務変革を推進するとともに、同社のVISIONや経営目標に伴走しながら支援をしてまいりたいと思います」(永田)