事例紹介 ENEOS
基幹システム利活用の核となるSAPスペシャリスト育成プログラム構築を支援
グループの長期ビジョンに、「エネルギー・素材の安定供給」と「カーボンニュートラル社会の実現」との両立に向け挑戦することを掲げ、デジタル戦略を推進しているENEOS。その原動力の一つが人材育成です。中でも、IT基盤である基幹システム利活用の核となるSAPスペシャリスト人材、その育成プログラムの構築・運用始動をアクセンチュア人材・組織チームが主となり支援しました。
3分(読了目安時間)
事例紹介 ENEOS
グループの長期ビジョンに、「エネルギー・素材の安定供給」と「カーボンニュートラル社会の実現」との両立に向け挑戦することを掲げ、デジタル戦略を推進しているENEOS。その原動力の一つが人材育成です。中でも、IT基盤である基幹システム利活用の核となるSAPスペシャリスト人材、その育成プログラムの構築・運用始動をアクセンチュア人材・組織チームが主となり支援しました。
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ENEOSの長期ビジョンを実現するための要と位置付けられている、IT基盤である基幹システム(ENEOS内通称CoMPASS)。「経営路線として、いわゆるデータドリブン経営に結び付けていくものであり、事業運営を支え、その次の段階に向かうための核となるプロジェクト」(ENEOS株式会社 IT戦略部 部長 田中 祐一氏)です。
基幹システム導入としては、国内外を見ても最大規模といわれるほどの巨大プロジェクトも、導入フェーズを終え、さらなる利活用推進を目指す段階に入っていました。それに合わせ、CoMPASSの導入から、運用保守を担うIT戦略部も、その役割を「基幹システムのパフォーマンスを最大限に生かす」ことにシフトする必要がありました。「プロジェクトが落ち着いてきて、より高みを目指していきましょう、と。個人レベルもそうですが、体系的に進めたいと考えていました」(ENEOS株式会社 IT戦略部 副部長 鳥居 雅氏)。
ただ、システムの内容を熟知しつつ、実際にシステムを利用する業務部門への活用提案、あるべき進め方の調整など、提案・技術営業に対応する組織であるためには、その中核となる人材の存在が不可欠です。しかし、基幹システム利用企業のIT部門として、特にSAPシステムを利用する立場として求められる最適なスキルや知見を、どのように明確化していけばよいか不透明でした。その結果、この「人材育成」の最終ゴール達成に向け効果的な目標設定も明確にできないという影響も出ていました。
さらに、元となるプロジェクトが巨大であるため、まず関連する情報だけでも膨大な量があること、そしてプロジェクトの各フェーズに合わせ、チームを離れたり、途中参画したりするメンバーも多く、業務に関わる効率的な情報の継承や習得にも課題がありました。
通常、長い時間を必要とする人材育成。しかし今回のプロジェクトは、人材育成のための土台を約10か月という短期間で築くことが前提でした。「10か月というのは私たちにとっても短い期間でしたが、アクセンチュアも開発に入っていたCoMPASSを、ENEOS様にもっと活用していただきたい。そのための人材育成をスピードアップしたいという想いはアクセンチュアも同じでした」(アクセンチュア西森)。
そのため、まずはENEOSという基幹システムユーザー企業に求められるIT人材の姿を明確にするところから始めました。アクセンチュアの持つ知見を利用し、もっとも重要となる「必要とされる人材」の定義(アプリスペシャリスト・基盤スペシャリストの2つのタイプの定義)、またその具現化・実践のため、スキルセットの策定、アセスメントができる仕組みを構築しました。具体的には、2種類の人材タイプ、47のスキルセットを定義したうえで、アセスメント(スキルのレベル評価)を通して、メンバーのスキルを可視化し、組織・個人としてそれぞれ伸ばす領域を特定し、明示しました。
また、人材育成教材の専用サイトを立ち上げ、CoMPASSプロジェクト内で蓄積されてきた膨大な資料をもとに実践的なトレーニングコンテンツを作成しました。加えて、アクセンチュア社内の人材育成にも活用されているノウハウ・メソッド・ナレッジも盛り込み、全66講座の育成コンテンツをオンデマンド形式で社内展開していきました。受講者自身のペースで必要スキルの学習を可能とし、受講後の理解度テストを通し、着実なスキル定着を図っています。
さらに、ワークショップ型で現場の声を拾い上げて課題の分析も行いました。一部の回にはアクセンチュアの開発・保守メンバーも参加し、CoMPASSプロジェクトの課題やありたい姿、今後のアクション等について、膝を突き合わせ、活発な議論が展開されました。そこから、毎回「その日からのアクションプラン」を議論し、ワークショップがその日限りのものではなく、より実用的なものとなるよう具体案実践とその重要性の意識づけも行われました。
「我々は、エネルギーや石油のこと、社内手続きについてもコンテンツ化しました。アクセンチュアには、人材育成観点のSAPスキルはもちろん、一般的なビジネススキルも提供していただき、一緒に作り上げていったところが印象的でした」(鳥居氏)。
IT戦略部は基幹システムを社内に提供する、いわゆるデータドリブン経営の根幹となる部署。経営層のみならず社員の誰もが、経験や勘ではなくデータに基づき判断する状態を目指しています。アクセンチュアには日頃CoMPASSへの支援をいただいており、今回の人材育成プロジェクトも、パートナーとして相互に理解し、出せるものを出し合い、双方が成果を得る形で上手く進められたと思います。
ENEOS株式会社 IT戦略部長 田中 祐一氏
SAP人材といっても、当初はイメージがはっきりしていませんでした。そこで、アクセンチュアの持つフレームワークを使い、我々が目指すべき人物像の解像度を上げてから教育プログラムを構築しました。今後は、このアセットを徹底活用して全体のスキルレベル向上に取り組みたいと思っています。
ENEOS株式会社 IT戦略部 CoMPASSプロジェクト管理グループマネージャー 名代 淳氏
研修やワークショップの設計・運営と並行して、人材育成のPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)の仕組み・運用の確立も図ったことにより、2024年度からは、ENEOSのメンバーによる人材育成プログラム事務局機能運営が可能となりました。
今回の人材育成プロジェクトでは、研修教材の整備に加え、CoMPASSプロジェクトの業務・システムに関する情報集約を行い、それらを1つのサイト上に集約できたことで、今後も利活用できるCoMPASSプロジェクト全体の辞典としての機能も構築し、活用しています。それにより、特に在籍歴の浅い社員、若手社員のナレッジ・スキルの底上げにつながっています。また、特に経験者として新規採用された社員については、この仕組みにより通常に比べ短い期間で実際の業務を遂行できるようになっています。
「CoMPASSの運用保守を支援していただく中で、お互い課題感を共有できていたこともあり、人材育成プロジェクトもよい効果が得られたと思います。今後、マネージメントとしてチームメンバーが無理なくこのカリキュラムを活用していけるよう配慮していきたいと思っています」(ENEOS株式会社 IT戦略部 CoMPASS保守2グループマネージャー 歯朶尾 淳氏)。
「IT戦略部の皆さんがCoMPASSを通じてどう成長され、さらなるビジネススキルを身に着けられるのかを、一緒に体験することができて、自分自身の学びにもつながったと思います」(アクセンチュア内海)という今回の人材育成プロジェクト。アクセンチュアは、今後もENEOSの基幹システム運用支援とともに、ENEOSの人材、そして企業価値を創出する支援を続けていきます。