Nittoの根幹に息づく「イノベーションDNA」
Nittoはグループの基幹技術である粘着技術や塗工技術をコアコンピタンスとして、エレクトロニクスや自動車、住宅、インフラ、環境および医療関連などの領域でさまざまな製品を提供し、グローバルに事業を展開しています。
同社が65年以上にわたって追求し続けているのが、「三新活動」と呼ばれる独自のマーケティング活動です。既存製品の「新しい用途」を開拓し、そこに新たな技術を加える、もしくは新しい技術を用いて「新製品」を開発することで、さらにその用途を広げ、「新しい需要」を創出し続けるというものです。“技・製・販・管”が一体となって、この三新活動を推進することがNittoの「イノベーションDNA」になっています。
Nitto 取締役 専務執行役員 CTOの三木陽介氏は「イノベーションDNAは弊社のブランドスローガンである“Innovation for Customers”にも体現されており、新しい発想でお客さまの価値創造に貢献することをミッションとしています。ビジネスの直接のお客さまはもとより、社会全体としてつながる幅広いステークホルダーの皆さまの課題を解決する価値を提供することが、Nittoの定義するイノベーションです」と話します。
ポスターセッションに込めた狙い
NittoのイノベーションDNAを形成するための最も重要な社内イベントとして、NittoのR&D部門は、経営のグローバル・カンファレンスの開催に合わせて、年1回のペースでポスターセッションを開催しています。研究開発と人財育成の融合施設「inovas(イノヴァス)」において、R&D部門の研究者や技術者が日々取り組んでいるテーマや成果を数枚のポスターにまとめて展示し、国内外の経営陣や各部門の幹部(見学者)と対面でプレゼンテーションやデモンストレーションを行い、意見を交換することができる発表会です。
「ポスターセッションには本社の経営陣はもとより、各事業の執行役員、機能軸の幹部、グローバル拠点の幹部などが一堂に会し、R&D部門のメンバーと直接会話することで、研究開発の方向性やお客さまへの訴求点を共有します。研究開発段階のテーマを早い段階で社内に示し、グローバルの経営幹部やマーケッターと出口を議論することで幅広い意見や市場ニーズを取り入れ、必要に応じて軌道修正することで、最短で製品化・事業化につなげる取り組みです」と、三木氏はこのイベントに込めた狙いを話します。
コロナ禍を機にバーチャル化を推進
ところが、2020年10月に予定していたポスターセッションは想定外の事態により開催が危ぶまれることになりました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる出張制限で、開催が困難となったのです。
とはいえ、ポスターセッションの中止は経営面でも大きなダメージが伴います。Nittoにとってイノベーションはあらゆる事業の根幹であり、そのスピードを緩めるわけにはいきません。またR&D部門のメンバーにとって、経営陣や幹部と直接意見を交わし、成果をアピールできる場が存在することは大きなモチベーションのひとつになっており、人材育成の観点からポスターセッションを止めるわけにはいかなかったのです。
そこでNittoが検討を開始したのが「ポスターセッションのバーチャル化」という施策です。
Nitto 全社技術部門 技術知財戦略本部長の本村弘則氏は「コロナ禍という不測の事態に我々がどう対応することができるか。ニューノーマル時代の新たなイベントのあり方として、ポスターセッションのバーチャル化を推進することもNittoのイノベーションにつながっていくと考えました」と話します。