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調査レポート

生産性向上がもたらす競争力の新たな源泉

コスト構造を変革する画期的手法

5分(読了目安時間)

2023/10/30

概略

  • リーダーには、常に変革を導く能力が求められます。ただコストを削減するだけでは、経済的な困難を乗り越えることは難しく、荒波が収まった後に繁栄するための余力も残りません。
  • 組織は、先進テクノロジーや生成AIによって可能となった高い生産性の実現に焦点を当てることで、収益性の高い成長を実現できます。
  • コスト構造の変革と生産性の再創造は、テクノロジーと人、業務プロセスをうまく組み合わせて仕事を再考・再構築することで、効果と効率をバランスさせることができます。

不安定な状況や創造的破壊を乗り越えようとする企業の多くは、コストを削減することに集中します。しかし、単にコストを削減するだけでは十分ではありません。高い生産性を実現することを優先し、コストを超えたビジネス機会を掴める企業こそが、より強く、収益性の高い成長を実現できるのです。

この不確実で創造的破壊が常に存在する世界で、AIが価値を正確に捉える能力を高め、マネージドサービスの重要性が増しています。その結果、CXO(最高経営責任者)たちは、コスト削減とのバランスを保ちながら、ビジネスに高い生産性をもたらす方法を見つけ出すことが可能になりました。

データ、テクノロジー、人材を組み合わせて成長を促す企業は、人材を軽視してデータとテクノロジーだけに依存する企業と比べて、生産性が2.8倍も高い成果を達成しています。

現在と未来のバランスを取りながら、財務資本/人的資本を解放する

多くの企業がコスト削減にのみ焦点を当て、守りの姿勢を取ることで競争力を失いつつあります。しかし、私たちの分析によると、不確実性の高い状況でも長期的な収益成長を実現している企業は、財務の厳格な管理とともに、人材や特異なスキルへの投資を行っています。これらの企業は、単なるコスト削減を超えて、財務資本と人的資本を最も価値ある分野に長期的に配分することで競争上の優位性を築いているのです。私たちはこのアプローチを「コストと生産性の再創造」と呼び、トータル・エンタープライズ・リインベンション(企業全体の再創造)における重要な要素だと考えています。

テクノロジーが不可能を可能にする瞬間

テクノロジー、特に生成AIが「コストと生産性の再創造」の心臓部です。生成AIは強力な目的達成のための手段であり、リーダーがデータに基づいた意思決定を行い、業務プロセスを再創造し、人々を力付けることで生産性を向上させる手助けをしています。

今後2年以内に、ほとんどの企業は主要部門で、最新のテクノロジーや新たな働き方を取り入れることで、業務プロセスを抜本的に再創造することに期待している。
今後2年以内に、ほとんどの企業は主要部門で、最新のテクノロジーや新たな働き方を取り入れることで、業務プロセスを抜本的に再創造することに期待している。

リーダーたちは、生成AIに大きな期待を寄せています。彼らは、このテクノロジーが人的能力と財務能力を組織や社会全体に広げる方法を大きく変えると見ています。生成AIは、人間の生産性を向上させる強力なツールです。そして生成AIは、私たちが仕事で何をし、どのように行うかという従来の概念に挑戦します。世界は生成AIの創造的破壊力のある可能性をまだ理解し始めたばかりですが、人間と機械の協働を最大限に活用する事例が各業界で急速に増えています。

米国における業界別 生成AIによる生産性向上の潜在的可能性
米国における業界別 生成AIによる生産性向上の潜在的可能性

異なる思考から異なる行動へ

今日の課題を乗り越え、生産性を向上させるためには、次の3つの重要な考え方を変革することから始めましょう:

01. コスト削減一辺倒から、コストと生産性のバランスへ

経営幹部は、生産性を重視し、競争力を高めるために運用と戦略に取り組むことができます。これを実現するためには、企業の戦略的な優先事項に応じて、財務資本と人的資本を柔軟に再配分する必要があります。具体的には、単なるコスト削減の考え方を見直し、ルーティンワークや事務作業よりも、顧客や従業員、社会、その他のステークホルダーに価値を提供する活動に時間を割くよう調整することが求められます。このように、企業が生産性に焦点を当てることで、財務的な成果だけでなく、非財務の成果を含めた全方位的な価値(360度バリュー)を提供できるのです。

テクノロジー、人材、業務プロセスの可能性を組み合わせることで、企業はより大胆で包括的な思考が可能になります。これにより、実行すべき仕事を見直し、現在のコスト構造を抜本的に改革することができます。

02. 現行ベースの対処法から抜本的な再考へ

仕事を根本的に見直すことがいまだかつてないほど現実的になってきました。テクノロジーの進化と生成AIの発展により、経営幹部はこれまでのやり方にとらわれず、必要なことに焦点を当てて仕事を見直す機会と権限、そして実行を許可する機会が増えています。彼らは「右から左へ」というアプローチで、望ましい成果から必要な入力を逆算し、そこから仕事を再設計できます。企業は、一時的なコスト削減策では見落とされがちな価値創出のレバーに注目することで、仕事内容を根本から変えることができるのです。

03. 組織の最適化から、人材育成へ

経営者が組織を再創造する際には、人材育成を中心に据えるべきです。これは単なる組織や人材の最適化ではなく、人々が成功するための能力、機会、そしてモチベーションを育む環境を整えることを意味します。この戦略は、人的資本を長期的な優先事項として位置づけ、四半期ごとの目標と12〜18ヶ月の目標のバランスを取ります。データとテクノロジーを活用して人材の成長を促進する企業は、人材を軽視しデータとテクノロジーだけに依存する企業と比べて、生産性が2.8倍も向上しています。

目的達成のために潜在能力を具現化する

コストと生産性の再創造は、企業が目標を達成するための大きな助けとなります。企業が差別化要素に投資し、作業プロセスを簡素化し、サービス提供者がより多くの時間を割けるようにすることで、この目標に近づくことができます。コストと成長のバランスを取るためには、次のステップと重要な質問から取り組みを始めましょう。

始めるには

志を設定する

私たちが達成しようとしている主要な成果は何ですか?(例:成長を促進する、レジリエンスに投資する、テクノロジーコアを強化する、収益性を向上させる)

未来を描く

企業のどの領域に意識的に焦点を当てるべきですか? 最初に何が起こる必要がありますか?

実行にむけて調整する

どのようにして経営陣と連携を達成し、維持するのでしょうか? 私たちの選択を導く原則は何ですか? 守るべき譲れない点は何でしょうか?

最近の不安定な状況により、経営者の中にはコントロールを失ったと感じる人もいるかもしれません。しかし、コスト構造を変革し、生産性を再創造することで、そのコントロールを取り戻すことができます。厳しい妥協策を選ぶのではなく、財務資本と人的資本を見直し、再配分することにより、コストと成長のバランスを取ることが可能になるのです。

筆者

Christopher Roark

Strategy Americas Lead – Cost & Productivity Reinvention Global Lead, Accenture Strategy

Robert Willems

Senior Managing Director – Accenture Strategy, Cost & Productivity Reinvention Lead, Global

Cerys Anthony

Managing Director – Accenture Strategy, Consumer Goods & Services, Cost & Productivity Reinvention Lead, Global

Elizabeth Coulton

Managing Director – Strategy Cost & Productivity Reinvention Lead, Americas