調査レポート
製造業におけるレジリエンス
エンジニアリング、供給、生産、オペレーションにおける逆境を強みに変える
調査レポート
エンジニアリング、供給、生産、オペレーションにおける逆境を強みに変える
恒常的なディスラプションが続く時代において、エンジニアリング、供給、生産、オペレーション領域でのレジリエンスの欠如がビジネスに甚大な影響を及ぼすことを、企業経営層は目の当たりにしています。
1兆6000億ドル
潜在的な収益成長の機会
+3.6%
レジリエンスの低い企業と比較した際の成長率
17%
多能工人材を有する企業の割合
40%
過去2年における注文から納品までのリードタイム増加率
予想不可能な出来事が次々と起こる中、多くの企業はグローバルネットワークを短期間で迅速に見直し、コスト効率向上とジャストインタイムでの納品を実現しました。一方で、後手に回った企業は在庫の積増しなど多額のコストと代償を払うこととなりました。生産現場での在庫高は実に1.9兆ドルにもおよんでいます。混乱を繰り返す時代に、あらゆる危機をうまく乗越え、その危機を好機と捉え直せるような競争力を具備するためには、レジリエンスの強化が必要です。では、企業はレジリエンスをどのように高められるのでしょうか。
アクセンチュアの調査によると、最高レベルのレジリエンスを有する企業は、レジリエンスの低い企業に比べ、3.6%高い成長率を実現します。更には、障害時のパフォーマンス優位性を保持し、EBITマージンを1.2ポイント (pp) 増加させ利益の拡大をも実現しています。また、レジリエンスの高い企業は、レジリエンスを中心に検討されたケイパビリティの適切な組合わせに投資することで、より優れたビジネス成果を達成しています。
多くの企業は、近年の混乱により、グローバル化された供給網や生産ネットワーク体制における脆弱性への対応を迫られています。アクセンチュアの調査によると、企業は今後3年間で商品の単独調達への依存を減少させ、さらに現地調達の割合を現在の38%から65%にまで増加させることがわかりました。
経営層は、物流の合理化、在庫管理の改善を実現しながら市場需要への迅速な対応を加速するため、生産設備と販売拠点を同じ地域内に集中させる地産地消を優先しています。本調査によると、複数の工場における分散生産は、3年後には現在の41%から78%に増加し、販売と同じ地域での生産体制は43%から85%に達すると判明しました。
さらに、企業は現地調達や現地生産に加えて、特定の国、地域、サプライヤーへの依存を減らすべく、移転やリショアリングを積極的に検討しています。
生産やサプライチェーン領域で複数の新しいオプションを追加することで、変化に対してより強固なレジリエンスを発揮できます。しかし、供給ネットワークの多様化と複雑さが増し、サイロ化が進むことで、企業は異なる地域や国境を越えたさまざまな規制への対応が必要になります。よって、ネットワークのリスク軽減にむけた変革には、価値を適切に引き出しながらも別の問題が発生するのを回避するといったバランスが重要であり、そのためには組織におけるデジタル成熟度の再評価がカギとなります。
幸いにも急速なテクノロジーの発展は、あらゆる規模の企業におけるデジタル成熟度を高め、困難に対処する戦略的な好機を創出しています。
レジリエンスの確立には、変革の土台となる企業全体の戦略として、ビジネスモデルと運用モデルの全面的な再検討が必要です。顧客ニーズが刻一刻と変化し、新たなテクノロジーが次々と誕生する今日の世界において、新しい価値を解き放つ変革を目指す企業は、レジリエンスにフォーカスした31のケイパビリティへの投資を拡大することで、成熟度を高めることが可能です。
さらに、レジリエンスにフォーカスした31のケイパビリティは、データ、デジタル、AIを活用することで、企業の収益増加とコスト削減を実現できる広い領域での変革を導きます。
アクセンチュアは、レジリエンスにフォーカスした31のケイパビリティのなかでも、特に重要な11の新しいケイパビリティ (レジリエンス2.0) への優先投資を推奨します。
10億ドル
アクセンチュアが調査した平均規模230億ドルの企業における、生産およびサプライチェーン分野におけるレジリエンスへの平均投資額。
需要変動を予測するための構造化分析ツール。
需要を調整する積極的な顧客セグメンテーション。
協調的アプローチで構築されたデジタルツイン。
顧客ニーズに適応した製品の継続的なアップグレード。
サステナビリティを組込んだエコデザインアプローチ。
超柔軟かつ超自動化された生産ライン。
「もしも」 のシナリオに備えたデータ駆動型のプランニング。
オペレーション上の問題に関する早期の予兆検知。
分散化され、透明性の高い意思決定。
AR、VRなどによる熟練技術者のリモート活用。
リソースの的確な再配分を実現できる、サプライチェーン、生産、オペレーション全体にわたる多能工人材の確保。
企業はResiliency 2.0に投資することで、課題を予測しながら迅速かつ効果的な障害への対応、さらにビジネスの継続と成長を実現することができます。レジリエンス強化にむけたロードマップ作成に役立つ3つの施策をここに提言します。
1
可視性、予測可能性、継続性に焦点を当てたテクノロジーへの投資
2
設計にレジリエンスを組み込む 「シフトレフト※」 エンジニアリングケイパビリティの採用
3
敏捷性に優れたマルチスキルなワークフォースを育成
※シフトレフトはフロントローディングに近い概念
本調査によると、レジリエンスを強化する経営層は、施設のリロケーション、自動化、デジタル化への投資額を現在の平均収益 4.5%である約 10 億ドル強より、今後3年間で2.5 倍から 4 倍にまで拡張させる意思があると明らかになりました。また、企業は国内回帰/再配置への投資と自動化を強化するデジタル成熟度の構築とのバランスをとっていますが、そういった壮大な構想による競争優位はいまだ創出されていません。
なぜか?それは、レジリエンスの強化には多大な費用がかかり、頻繁に実施できる施策ではなく、結果として実現までには多大な時間を要するからです。何が必要でしょうか。あらゆる投資を支える一貫性のあるビジョンと明確な説明責任をまっとうすることで、短期的な価値と長期的な変革の基盤を確実に提供していくでしょう。
では、企業はエンジニアリング、供給、生産、オペレーション分野でのレジリエンスをどのように構築できるのでしょうか。
レジリエンス構築とそのケイパビリティを支えるデジタル基盤の開発に投資する企業は、出遅れた企業から市場のシェアを獲得するでしょう。 投資すべきタイミングは、次の破壊的な事象が起きる前の今なのです。