調査レポート
民間航空市場は再び成長軌道へ
5分（読了目安時間）
2024/05/17
概略
- 民間航空機市場は、2019年の収益を約11%上回る転換期を迎えようとしています。
- 世界的に旅客キロが36.9%増加し、2024年にはさらに9.8%の増加が見込まれています。
- サプライチェーンの問題は依然として残りますが、79%の経営幹部は、今後6ヶ月間でサプライチェーンがオンタイムで、かつ適切な品質で機能すると確信しています。
- 55%の経営幹部は、依然としてサプライチェーン管理をマニュアルプロセスで実施管理していると報告しています。
2024年は民間航空機市場にとって転換期になると見込まれています。パンデミック発生前である2019年に達成された収益を大きく上回ることが予想されています。業界としては、製造業、航空会社、MRO（整備・修理・オーバーホール）の収益が増加するとされています。実際に、エアラインの収益や発注実績および予測は、再び成長することを示しています。
しかし、供給側が需要の増加に追いつけないサプライチェーンの問題は継続しており、依然として市場成長の妨げとなっています。そうした状況でも、経営幹部は今後6ヶ月間でサプライチェーンがオンタイムで、かつ高品質で機能すると自信を持っているようです。
11%
パンデミック前の2019年度比での民間航空宇宙産業の収益増加割合※1
79%
今後6ヶ月間にサプライチェーンがオンタイムで、かつ高品質で提供できると確信している経営者の割合※2
55%
サプライチェーン管理で依然としてマニュアルプロセスに依存していると報告した経営幹部の割合※3
航空機の納入数で新記録を達成
2023年には民間航空機の納入数が大幅に増加し、この傾向は2024年も続くと予想されています。ナローボディ機とワイドボディ機の両方で納入数の増加が見込まれており、エアバスは11%、ボーイングは10%、エンブラエルは前年比で13%の増加を達成しました。しかし、2024年の生産増加に対して、品質問題も挙げられており、それらがもたらす影響はまだ明確には分かっていません。
再び羽ばたく航空会社
航空会社は2023年に収益回復を実現しました。2024年には各地域でさらに高い業績を見込んでおり、さらには業界の年間利益が前年比で10%増加すると予測されています。特に、アジア太平洋地域では顕著な成長が見られました。この地域の国際線の利用が前年に比べて126%増加し、航空業界全体としてパンデミック前のピークを超えました。
記録的な成長を遂げるMRO
2024年には、世界の民間航空機の運航機数が過去の記録を上回り、MRO（整備・修理・運航）サービスへの強い需要が高まります。増加する乗客数と退役航空機の減少が、MROの更なる成長を後押しするでしょう。この領域は、2024年に2019年の以前のピークを20%上回る収益を達成する見込みです。
根深いサプライチェーン問題
経営幹部たちは、今後6か月間におけるサプライチェーンのオンタイム配送能力に対する自信をもっているものの、依然としていくつかの課題が残っています。これらの課題は2024年以降の生産に影響を与える可能性があります。サプライチェーン管理を改善するためには、デジタルツインなどのデジタルツールの活用が急務です。しかし、AIや高度分析を使用している企業はわずか6%に過ぎず、経営幹部の55%は、依然としてリスク管理や運用管理戦略においてマニュアルプロセスに依存していると述べています。
航空業界の幹部たちが持つ課題意識
地政学的緊張が高まるにつれて、今後12か月およびそれ以降に業界に与える影響について多くの懸念があります。経営幹部の多くは、来年の経済的な見通しは現状維持となるが、長期的には悪化すると見込んでいます。
経営幹部の地政学リスクへの懸念レベル
（前年比）
アクセンチュアの民間航空市場インサイトレポートについて
アクセンチュア民間航空市場インサイトレポートは、先進的な計量経済モデリング手法を組み合わせて、民間航空市場の健全性に関する定量的な四半期予測を提供します。世界中の主要な航空業界の経営幹部から得た洞察も組み込みながら、サプライヤーからMRO（航空機の整備、修理、オーバーホール）までの広範にわたるこの市場における短期および中期的なトレンドやドライバーについて独自の視点を提供します。