コンテナの管理において、「今週および翌週に世界中の各拠点で空コンテナ在庫をどの程度持てばよいのか」を予測するには、関係する変数が膨大であるため定量的な指標のみで意思決定するのは、困難とされてきました。しかし、その様々な変数の関係性を紐解き、数理的に組み上げることで、適正在庫を科学的に算出することを目的とするプロジェクトを開始しました。これを実現することで、コンテナの総在庫本数を削減による、大幅なコスト削減が可能になることが見込まれました。プロジェクト初期段階において、ONEではその計算のための戦略的なキーファクターを次の4点へと絞り込みました。
- 全世界における精確な需要、輸入業者からの返却数を予測
- 需要と表裏一体である、最適な空コンテナ在庫量の算出
- コンテナ回送ルートの最適化
- 空コンテナ回送費用の運賃プライシングへの反映も含めた、運賃の妥当性評価
ONEではこのプロジェクトを「OASIS(ONE Agile Supply chain Integrated System)」と命名し、ソリューションの検討に入りました。同社が注目したのは、アクセンチュアが主に小売業界向けに提供している在庫・補充最適化サービスの「AFS (Accenture Fulfilment Service)*」です。プロジェクトチームでは、フィージビリティを2018年10月から開始し、コンテナ船業務独自の要素(空コンテナの返却など)を盛り込んだうえでロジックとアルゴリズムを構築していきました。ONEにおけるAFSの活用方法をまとめると、次のように集約できます。
- 全世界のコンテナの在庫管理拠点(約650カ所)のそれぞれについて、コンテナタイプ、サイズごとの適正在庫量や過不足をはじめとする「需要予測」をAFSが算出
- 不足時は他拠点から補充すべき数量を、余剰時は他拠点へ送り出すべき数量をAFSが自動で算出し、複数の拠点での在庫最適化を図る
- AFSが算出した最適在庫数量をもとに、「OPT(Optimization System)**」が「どの拠点からどの拠点へ」「どのように運送するか」といったルート最適化を計算
*AFSはアクセンチュアが提供するAI Powered SCMを構成するサービスの1つです
**OPT:ONEが他社と共同開発した「空コンテナ回送ルート最適化の算出システム」
ONEではコンテナ運用の「フロー」領域で以前からOPTが稼働していたため、本プロジェクトではAFSが「ストック」領域の最適化に貢献した形といえます。
今回のプロジェクトはグローバル規模のシステム導入であったにも関わらず、検証開始から組織・プロセスの改革をはかりながら、アルゴリズムの構築、システムの実装までをわずか6ヶ月程度で完了しました。アクセンチュアのチームがアジャイル開発を採用し、無駄なステップをそぎ落とすなど、「プロジェクトが目指す本質」にフォーカスしたことが、迅速導入を実現できた理由の一つと言えます。