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事例紹介 東洋エンジニアリング

東洋エンジニアリング:データ&モデル駆動型の経営デジタルツイン

東洋エンジニアリングは、労働集約型ビジネスから「人+デジタル」型の高付加価値モデルへの変革を目指し、DXoT(Digital Transformation of TOYO)を推進しています。アクセンチュアは、人的リソースの捻出、コスト削減、新規事業開発、デジタル投資のROI最大化をご支援しています。

5分(読了目安時間)

課題―求める変化

不確実性の高いビジネス構造

プラントエンジニアリング産業は、大規模で長期間にわたるプロジェクトが多いため、各国の政治情勢によってサプライチェーン計画が変わりやすく、不確実性の高いビジネスです。

さらに、労働集約型のビジネスであるため、少子高齢化による人手不足が続くことが経営の持続性に対する大きなリスクとなっています。

“人+デジタル”レバレッジ型の経営モデルへの変革

東洋エンジニアリングでは、従来の労働集約的な「人」中心の付加価値創出から「人+デジタル」型の高付加価値モデルへの変革を目指し、2019年からDXoT(Digital Transformation of TOYO)という全社的なデジタルトランスフォーメーション改革に取り組んできました。

このモデルへの変革には、以下の4つの大きな狙いがあります。

1. 事業の核となる人的リソースの捻出:従来は人が担っていた業務の一部をデジタルで代替し、人的リソースを捻出することで人手不足の問題を解消する

2. コスト削減:業務のデジタル化とそれにより生成されるデータの利活用により経営資源の最適化を図り、単純な代替以上のコスト削減を実現する

3. 新規事業開発:上記①と②で捻出した人的リソースや利益の一部を新規事業開発に投資し、安定的に資本生産性と高い利益を生む事業ポートフォリオを構築・ 管理する

4. デジタル投資のROIを最大化:付加価値を創出する仕組みにデジタル資産を統合することで、今後も進化する生成AIなどの先進テクノロジーの効果を常に取り込めるビジネスへと変革する

“人”レバレッジの付加価値 VS “人+デジタル”レバレッジの付加価値モデル
“人”レバレッジの付加価値 VS “人+デジタル”レバレッジの付加価値モデル

取り組み―技術と人間の創意工夫

デジタル化による高度な意思決定と経営管理の革新

資本生産性を大幅に向上させるためには、業務効率化だけでは不十分であり、その成果を経営のKGI・KPIに連動させるための経営管理や事業管理の変革も必要です。デジタル化された業務で生成されるデータを基に、AIやデータサイエンスのテクノロジーを活用して詳細に分析し、予測・最適化・確率的シミュレーションを駆使してKGI・KPIと連動させることで、意思決定の精度を高めます。

AI Powered Management Cockpit
AI Powered Management Cockpit

膨大な組み合わせから最適シナリオを選択する“経営デジタルツイン”

経営の意思決定では、変動するビジネス環境や顧客動向、自社とパートナーのリソース状況など様々な要因を短時間で考慮する必要があり、その組み合わせは多岐にわたります。

この膨大なパターンをビジネスの許容時間内で可能な限り高精度に評価するため、「Accenture AI HUB Platform」を基に、LLMや機械学習モデル、数理モデルを統合した経営管理モデルを構築しています。

例えば、あるビジネス局面で「中核事業で利益を最大化する」オプションと「新領域にリソースを割り振る」オプションがある場合、それぞれのオプションの実行計画をAIが自動作成し、さらにKGIやKPIの見込みをシミュレーションします。経営陣はこれらのシナリオとKGI/KPIを参照し、AIが考慮しない情報を加味して最終的な意思決定や調整を行います。

データ & モデル駆動型オペレーティングモデル

このような経営デジタルツインを実現するには、適切な精度・鮮度・粒度で業務データが集約できることが必須です。

そのため東洋エンジニアリングでは、標準データモデル上に大小数百のAI・機械学習・数理モデルが統合された「データ & モデル駆動型オペレーティングモデル」を構築しています。

意思決定の要素となる各案件のプロジェクト管理モデルを構築しており、例えば、デジタル設計ツールで概要設計を行うと、必要なリソースや高リスク箇所が算出され、プロジェクト管理システムに連携されます。プロジェクト管理システムでは、これらの情報を基にスケジュールやリソースの割当を最適化し、財務、リソース、リスクなどの計画データを生成します。この計画はプロジェクト戦略や制約条件が変更される度に再計算・再評価されます。

こうした仕組みを構築することで、経営意思決定に必要な精度・鮮度・粒度で業務データを経営管理モデルに連動させています。

当社は2018年より、全社を挙げてDX活動に取り組んで参りました。目標は「生産性を6倍にすること」。この目標を達成するためには、単なる改善活動では不十分であり、全社業務に対して「聖域なき改革」が必要でした。アクセンチュアは当社の重要課題である「聖域なき改革」の解決へ向けて伴走してくれるパートナーです。

東洋エンジニアリング株式会社 デジタル統合本部長 CDO 川内 陽志生氏

アクセンチュアを選んだ理由は、課題の解像度を高める圧倒的なスピードと提案能力の高さ、そして具現化力です。 成果を継続して拡大できているのは、「〇〇特化型サービス」を提供するのではなく、DXを手段とした本質的な議論が可能であり、まるで社内のプロジェクトメンバーに強力なメンバーが加わったような安心感と信頼感を得られているから。この点については、プロジェクトメンバー全員が共通の見解を持っています。

東洋エンジニアリング株式会社 DXoT推進部 部長 瀬尾 範章氏

成果―創出された価値

プロジェクト生産性を25%向上させる事業計画シナリオの発見

データ&モデル駆動型の経営管理および事業管理は、一定の段階で実現したら実際の運用に適用し、フィードバックを受けて動的に改善していきます。その結果、プロジェクト生産性を25%向上させる事業計画シナリオが見つかることもあり、データ駆動型の意思決定が浸透しつつあります。

プロジェクト計画ドラフトの作成リードタイムを90%短縮も視野に

通常3か月程度かかるプロジェクト計画も、人間とAIが協働するモデルにより従来の約50%短縮のリードタイムで実現できており、更に条件が整えば約90%の効率化ができるケースも見え始めています。この協働モデルでは、人間が「AIが生成した計画」にフィードバックを与えます。さらに、AIは納期を15-20%短縮した実現可能な案など、人間が検討する場合よりも多くの案を生成できます。これにより、戦略的な提案の作成や計画変更の要望にも迅速に対応できる、高レジリエントな経営管理能力の構築に貢献しています。

生成AIの進化を競争力に取り込む

「デジタル投資のROIを最大化」でも述べたように、「人+デジタル」型の高付加価値モデルへの変革は、今後劇的に進化する生成AIの効果をビジネスに取り込む基盤となります。経営データを分析・統合して本質的かつ具体的な情報を提供することで、生成AIのアウトプットの価値や質が向上するためです。実際に「経営デジタルツイン」や「データ & モデル駆動型オペレーティングモデル」から得られる示唆を基にした生成AIのユースケースも実証され始めており、利用可能なユースケースから取り込むことを計画しています。

チーム紹介

保科 学世

執行役員 データ & AIグループ日本統括 AIセンター長 アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京共同統括 博士(理学)

村上 忠弘

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ 産業機械/自動車/A&D プラクティス日本統括 マネジング・ディレクター

中村 隆太

AIセンター チーフフェロー