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電力・ガス業界における生成AIの労働力への影響
アクセンチュアのレポート「Work, Workforce, Workers」において、大規模言語モデル(LLM)利用によると、日本の労働市場全体で平均約4割、日本の電力・ガス業界においては、労働時間の約31%が自動化または強化される可能性が示されました。この業界において、生成AIの導入メリットを十分に活用するための視点について解説します。
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2024/09/27
アクセンチュアの調査によると、世界のユーティリティ業界(電気・ガス・水道)のC-suiteエグゼクティブの大多数(83%)は、労働力の生産性の主な推進力として生成型人工知能(生成AI)の重要性を認識しています。現地出向業務の経路選定や資産管理から予測モデルに至るまで、生成AIは最適化を新たな次元へ引き上げるとともに、労働者の仕事をより生産的で有意義なものにします[i]。アクセンチュアのWork, Workforce, Workersの調査結果から、日本の労働市場全体では平均約4割、日本のユーティリティ業界の約3割の労働時間が大規模言語モデル(LLM)により自動化または大幅に強化される可能性があることがわかりました。
一般的に、定型的で反復的なタスクが多い業務は、大規模言語モデルによる自動化の影響を受ける可能性が大きいと考えられます。一方、各業界の専門職に多い、抽象的な推論や問題解決スキルを必要とするタスクが多い職業ではLLMによる能力強化の可能性が大きいと考えられます[ii]。さらにアクセンチュアリサーチの試算によると、事務職(オペレーション)は大幅に自動化されると見込まれる一方で、日本のユーティリティ業界ではその就業人数の規模は小さいと考えられます。就業者数が多いユーティリティ業界の専門職の職種(各種技師・技術者等)では、平均すると約29%の労働時間がLLMの自動化または強化による影響を受けると推計されます。
また、この影響を生産性向上の視点で捉えると、日本の全業界では約7%から32%、ユーティリティ業界では約9%から13%の労働時間の節約により、生産性が向上する見込みです。他業界に比べると影響は限定的に見えますが、約10%の生産性向上は無視できない規模です。なお、労働時間の節約とは、必ずしも既存の仕事の総数を減らすわけではないと考えられます。新技術の導入により労働市場の性質が変化したり、既存の仕事の一部の置換や強化が行われたりすることで、最終的には多くの新しい役割を創出する可能性があります[iii]。
生成AIの導入によるメリットを十分に活用するためには、労働力をスキルアップする必要があり、企業は必要な労働力を構築するための確固たる人材ロードマップを持つ必要があります。労働人口の減少、電力自由化による競争、脱炭素に対応した取り組み等、今日既に明確化されている課題への対応だけでなく、今後新たに生まれる課題にもビジネスリーダーは対応し続ける必要があります。生成AIも日々進化していく中で、ビジネスリーダーは生成AIが仕事に与える影響を理解し、労働者が新しい働き方や役割に対応・移行することをサポートする必要があります。業界内だけでなく、国外・他業種での生成AIの活用についてもアンテナを張り、生成AIの自社への適応について恒常的に考えることで企業が発展・持続する力の一因になると考えられます。
本稿執筆にご協力いただいたアクセンチュアリサーチに感謝を申し上げます。
[i] アクセンチュア、ジェネレーティブAIの時代における再発明、2024年 (– ユーティリティ業界 – グローバルで71の回答者)
[ii] [iii] Jobs of Tomorrow:Large Language Models and Jobs, White Paper (World Economic Forum in collaboration with Accenture Research)