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ブログ

急増するデジタル証券発行とデジタルアセット取引ソリューションaxia

所要時間:約5分

2023/01/12

はじめに

テクノロジーコンサルティング本部 金融サービスグループ マネージング・ディレクターの吉田 美穂です。

新聞等で昨今取り上げられることの多い、デジタルアセット、その中でも特にデジタル証券と、アクセンチュアが提供するデジタルアセット取引ソリューションaxia(アクシア)について、ご紹介します。

デジタルアセットの概況

デジタルアセットと聞いて皆さんは何をイメージされますか?ビットコインやイーサリアムに代表される暗号資産でしょうか?または、デジタルアートに代表されるNFT(non-fungible token)でしょうか?アクセンチュアでは、トークン=デジタル権利証と解釈し、デジタルアセットビジネスをトークンの発行、取引、流通を通したビジネスとして捉えています。

デジタルアセットビジネスにおいて、取引対象となるトークンは大きく3つに分類されます。

1つ目の分類は、セキュリティトークン(通称ST。デジタル証券)と呼ばれる、有価証券などの金融商品を表象するトークンです。日本国内では、機関投資家向け商品であった不動産、金銭債権などを裏付けとするトークンを、個人投資家でも購入できるように小口化して発行する動きが先行しています。また、STの魅力付けのため、ユーティリティトークン(通称UT。サービス利用権)と掛け合わせたものも検討されているところがポイントです。STの発行動向ですが、海外では、未上場株式の発行が主体となっており、10年後には全世界で50兆円規模の市場となるのではと予測しています。一方、国内では2020年から発行が開始され、2022年には209億円まで、前年比5.8倍で規模が拡大しました。(出所:各社の公式発表をベースにアクセンチュアが集計)内訳としては不動産を裏付けとしたSTが8割を占めていますが、今後は金銭債権を裏付けとしたSTやグリーンボンドSTなど、その種類が増えるとともに、ST発行額も続伸すると予測しています。

2つの目の分類には、NFTが該当します。NFTでは、デジタルデータに対し固有の価値を与える事ができることから、デジタルアートから始まり、最近はメタバース上の土地の取引まで取引の幅が広がっています。2022年は、残念ながら発行数や取引量ともに陰りが見えており、ブームが落ち着いたように見えるNFTですが、今後は持続可能な新しい形態での取引が始まるのではと期待しています。

最後に、3つ目の分類として、STやNFT取引の即時決済手段として、ステーブルコインに代表されるペイメントトークンがあり、金融機関を中心に検討・開発が進んでいます。

アクセンチュアは、テクノロジーカンパニーとしての強みを活かし、お客様のデジタルアセットビジネス創出をご支援する活動を続けています。

セキュリティトークンの背景

ここからは私が所属する金融グループのお客様である金融機関に関わりの深いセキュリティトークン発行増加の背景について見て行きたいと思います。STの発行が増加したのは、ブロックチェーン技術など、テクノロジーの進化に加え、日本国内では法的課題を段階的に解決されていることが理由として挙げられます。そもそもSTは、2018年ごろ暗号資産を用いたICO(イニシャル・コイン・オファーリング)で詐欺的な案件が横行したことにより、早期・法整備へのニーズが高まる中、北米を中心に有価証券を裏付資産とするSTO(セキュリティトークン・オファーリング)が注目を浴びるようになりました。日本では、2020年5月に金商法が改正され、STOを取り扱う業者が第1種金商業者に明確化されました。しかし、法的課題(第三者対抗要件問題)が残ったことから、STO業界が伸び悩みます。

第三者対抗要件問題とは、現在の法律では、ブロックチェーン上で債券のトークンをAさんからBさんへ移転したとしても第三者に対して、「Bさんがトークンの所有者である」と法的に主張できない問題です。第三者対抗要件を具備するには、ブロックチェーン上で所有者を移転するたびに、公証役場で確定日付の記載された証書を取得する必要があるのです。これは煩雑なプロセスであり、デジタル完結しないことのデメリットは想像に難くありません。そこで、経産省主導で本法的課題の解決に向けた取り組みが開始し、2021年6月に産業競争力強化法改正法案が公布され、同年8月に施行されました。これは、改正産業競争力強化法の特例措置の認可を受けたプラットフォームであれば、ブロックチェーンに、AさんからBさんへのトークンの所有者移転に関する所定の情報を書き込むことで、第三者に対して、「Bさんがトークンの所有者である」と法的に述べることが可能となりました。法的課題に解決の糸口が見えたことで、証券会社各社や異業種によるSTOビジネスへの参入検討本格化しました。

なお、今後のさらなるSTの発展のためには税制改正や開示規制要件の緩和等が期待されています。

axiaについて

アクセンチュアでは、価値あるソリューションを提供するための諸条件が整いつつあると判断し、アクセンチュア独自のソリューションを開発することを決定いたしました。それが、accenture token exchange infrastructure(通称axia)です。

アクセンチュアではaxiaを、「ブロックチェーン技術を使ったデジタルアセットの発行、取引、流通を可能にするプラットフォームソリューション」と定義しております。

axiaの特徴は次の通りです。

  1. まずは、ST(セキュリティートークン)の取引に対応
  2. ブロックチェーン上の権利移転を持って債券譲渡に係る法律要件(第三者対抗要件)を満たせる
  3. 高い拡張性により自社のビジネス戦略に合わせてプラットフォームのカスタマイズが可能
  4. UT(ユーティリティトークン)の取扱い、ステーブルコインによる決済などの拡張を予定

2番目の特徴について補足すると、特例措置を受けるためのStep1である規制のサンドボックス実証実験を実施し、実験を完了しています。

axiaのアーキテクチャ概要

axiaのアーキテクチャ概要ですが、図が示している通り、3層構造となっています。3層構造はブロックチェーン層、アプリケーションサーバ層、アプリケーションフロント層で構成されています。ブロックチェーンは、プライベート型/コンソーシアム型を想定しており、イーサリアムのエンタープライズ版であるQuorumを採用しています。ブロックチェーン上には、トークンの移転情報や残高情報などが記録され、スマートコントラクトにはトークンの各仕様が実装されています。アプリケーションサーバ層では、鍵情報やブロックチェーン上には登録できない機微情報がデータベース等に暗号化されて保持されています。また、業務機能を利用するためのAPIを提供しています。

最後にアプリケーションフロント層として、axiaユーザー(発行体、受託者、仲介業者)用標準GUIとプラットフォーム事業者向けの管理者用GUIを提供しています。もちろん、APIを直接利用して、プラットフォーム事業者が自由にユーザー用のGUIを構築することも可能です。

インフラについてですが、ブロックチェーン層と、アプリケーションサーバ層の各コンポーネントはクラウド環境にて動作するように構築されています。対象はAWS, Microsoft Azure, Google Cloud Platformです。

axiaのアーキテクチャ概要
axiaのアーキテクチャ概要

今後、axiaは、web3.0、NFTで多用されるパブリックなブロックチェーンネットワークとの接続も視野にいれており、パブリックな領域で生まれ続ける新しいテクノロジーを取り入れつつ、プライベートな領域での導入スピードを備えた基盤を目指しています。

デジタルアセットビジネスをご検討中で、axiaに興味を持っていただけましたら、ぜひ当社までお声がけいただければと思います。もちろんビジネスユースケースのご相談に対応することも可能です。

お問い合わせ先:info.tokyo@accenture.com

筆者

吉田 美穂

テクノロジー コンサルティング本部 金融サービス グループ マネジング・ディレクター