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調査レポート

Accenture Life Trends 2025

ビジネスやテクノロジー、社会における変化など、自身を取り巻く環境に対する人々の行動や姿勢の変化を垣間見ることができます。今年は、自分自身や次世代のために、人々がより健全でバランスの取れたテクノロジーとの関係を築こうとする中で、5つの新たなトレンドを通じて、人々のためらいが企業にとってどれほど大きなリスクになるのかを探ります。

10分(読了目安時間)

2025/02/27

概略

  • テクノロジー主導の世界において、人々は自身の主要な行動について、立ち止まり、優先順位を変更し、自分たちのニーズを満たす方法を模索しています。

  • オンライン上での交流、子育て、仕事、人生の目標、そして時間の使い方が大きく変化することは、企業やブランドに影響を与えるでしょう。

  • 生成AIを含む新しいテクノロジーには果たすべき役割がありますが、その役割がどのようなものであるべきかは、依然として難しい問題です。
ためらわずに、読み進めてください…

人々の考え方や行動の変化は、企業が人々に寄り添う機会を与えます。顧客を深く理解し、その意見を取り入れることで、企業は製品や業務プロセスを刷新し、常に顧客との共感を維持しながら、成長を続けることができます。

01

ためらいのしわ寄せ

オンライン体験の質が低下し、人々はオンライン上で目にするものを信頼できなくなりました。その反射的な行動として人々の間で「ためらい」が生じています。これはオンラインビジネスにも影響を及ぼします。

待って!これって本物?

デジタル技術に対する信頼が揺らぎ、その価値は信ぴょう性の問題によって薄れつつあります。オンライン上で、本物と偽物の境界が曖昧になっており、見分けることが難しくなったことで人々にためらいが生じています。

「個人的に、インターネット上のフェイク画像や動画は非常に受け入れがたいです。インターネットは仮想環境ですが、仮想とはフェイクを意味するものではないはずです。」

YK Zhang(33歳、中国)

詐欺行為は決して新しいものではありませんが、生成AIのようなツールによって、オンライン犯罪が容易になっています。テクノロジーを管理・規制すべき者たちの行動不足は、人々の幸福が進歩という名の下に犠牲にされているのではないかという懸念を生じさせます。

過去1年間で:

60%

オンラインコンテンツの信ぴょう性を以前よりも疑うようになったと回答した人の割合

52%

フェイクニュースや記事を見たことがある人の割合

39%

オンライン上で虚偽の商品レビューを見たことがある人の割合

33%

個人情報や金銭を奪うことを目的としたディープフェイク攻撃や詐欺を経験したことがある人の割合

本物の探究

オンライン上で活動する組織は、信頼を再構築し、人々がチャネルやコンテンツを安心して利用できる環境づくりに積極的に取り組むべきです 。これに成功した場合、人々からためらいなく選ばれるという特権を享受できるでしょう。

公式なルールとして定められるか、社会の暗黙の了解として受け入れられるかに関わらず、AIの使用に関する新たなルールが生まれる可能性が高いです。AI学習のためのデータ収集(スクレイピング)で何が許され、何が許されないのかについても明確になるはずです。

We recommend

  • 有害で詐欺的なコンテンツの急増に対処するために、プラットフォームはコンテンツの監視・管理の最新化に投資し、進化する必要があります。

  • 企業は、顧客に正規のブランドであることを伝え、信じるに足る明確な方法を確立する必要があります。

  • 高度な詐欺の被害者が増加するにつれて、顧客はサポートを必要とするようになります。

  • ディープフェイクの詐欺が増加し続けたら、保険会社は新しいタイプの商品を検討しようとするかもしれません。

  • 政府は消費者保護のために、企業に対して新しいコンプライアンス対策を要請するかもしれません。
02

親子間ギャップ  

子どものオンライン体験に関する規制や、親による水面下での取り組みが加速しています。これらは多くの組織に影響を与えるでしょう。

変化を求める声

現代の親が直面する大きな課題は、子どもたちがデジタル技術と安全で健全な関係を築けるように支援することです。いじめ、虐待、非現実的な美の基準、ディープフェイク、セクストーション(性的画像や動画の送付を強要すること) 、一度見てしまうと忘れられない年齢不相応なコンテンツなど、デジタル技術が引き起こす有害事例が増え続けています。

「画面を見る生活は、実際のコミュニケーションがなくなりがちです。」 

Marie(44歳、フランス)

行政機関の法整備が進められる中、親と学校による対応も活発化してきています。今後、企業が子どもや若者をどのようにターゲッティングするのかが注目されるでしょう。

56%

ソーシャルメディアが自分のアイデンティティに対する考え方に大きな影響及ぼしていると思う人の割合(18~24歳)

23%

ソーシャルメディアが自分のアイデンティティに対する考え方に大きな影響及ぼしていると思う人の割合(55歳以上)

企業のブランド戦略には根本的な見直しが必要

スマートフォンやソーシャルメディアが若者の健康にどの程度影響を与えるかについての議論が渦巻く中、親は危機感を募らせており、早急な解決策を求めています。

企業は、よりテクノロジーとの関係がシンプルになる次世代の世界に備える必要があります。16歳未満の若者へのマーケティング方法と場所について、抜本的な見直しが行われる可能性があり、それによって一部のサービスが壊滅する一方で、他のサービスには新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。

We recommend

  • 企業にとって若年層へのリーチが重要であれば、デジタルやソーシャルメディアに依存しない戦略を練ることが不可欠です。

  • 若者向けのアプリやデバイスに制限が課される場合、スマートフォンに依存しないサービスの再設計や新規開発が必要です。

  • 企業は、何が文化的に最適であるか常に把握しておく必要があります。

  • 企業は自社の許容範囲を明確に認識することが重要です。

  • 親による子どもや若年層の行動管理が厳しくなる場合、企業は慎重な親にとっても好ましい商品・サービスを提供する方法を検討する必要があります。
03

せっかちエコノミー 

健康、富、幸福への切望に応える新しい方法は、大衆の中の人と人との強いつながりに埋もれています。今求められるブランドの役割とは何でしょうか?

積極的な代替案の検討

テクノロジーの発展により、目標達成のための迅速な方法を容易に見つけられるようになり、ソーシャルメディアは誰もが自分の経験やアドバイスを共感しやすく親しみやすい方法で共有できる場を提供しています。人々は他人の体験談に共感し、自身の経験と重ねることで、その情報がより自分に関連性があるように感じます。

「私はあらゆる面で、効率化できる方法を常に探しています。人生をスピードアップし、物事をより迅速に、より良く、そしてより正確に進めるために、できることは何でもします。」

Stan(46歳、米国)

健康、経済状況、喜びをもたらすことなど、どんなことであっても、同じような経験を持つ人から直接話を聞くことには大きな力となります。この傾向から学び、それを活用して提供するサービスや情報を充実させるブランドは、顧客とのより強いつながりを築くことができるでしょう。

63%

物事をより効率的に行う方法についてソーシャルメディアからインスピレーションを得ている人の割合

74%

物事をより効率的に行う方法についてソーシャルメディアからインスピレーションを得ている人の割合(18~34歳)

68%

ブログや動画を通じて教育的な情報を提供するブランドと、より積極的に関わりたいと考えている人の割合

コンテンツを通じて生まれるつながり

信頼性の高い組織は、正しいメッセージを持っていますが、必ずしもそれに見合った適切なチャネルを持っているわけではありません。一方、ソーシャルプラットフォームは、適切なチャネルですが、必ずしも正しいメッセージを発信しているとは限りません。ここでの成功とは、信頼できる情報を適切なチャネルを通じて、人と人がつながりを感じられる形で提供することです。

人々は成功への強い意志を持っており、常に新しい方法を模索しています。

共感性が高く、目標達成への迅速な方法を求める人々の願望を満たす企業は報われるはずです。

We recommend

  • 企業やブランドは、他社と差別化できる人間味のある体験の向上方法を模索すべきです。

  • 顧客中心主義を核として組織を改革し、再構築することが重要です。

  • 人々が従来のやり方ではなく代替手段を模索する時、満たされていないニーズがあることを示しています。

  • 商品やサービスをこれまでとは違う文脈やエコシステムで活用できるよう模索し、パートナーシップを通じて提案の幅を広げ、企業が人々の生活において果たす役割を強化すべきです。

  • カスタマーサービスには新たな視点が必要です。
04

仕事の尊厳

ビジネス、テクノロジー、人間関係の変化により、仕事の尊厳は揺らぎつつあります。モチベーションの低い従業員が、顧客に最高のサービスを提供できるでしょうか。

従業員の感情的な距離感

多くの人にとって、仕事がますます事務的で消耗的なものと感じられるようになっており、従業員と仕事との間に、感情的な距離が生じていることが明らかになってきています。効率化への執拗な追求によって、従業員は自分たちのリーダーが、従業員のスキル、経験、企業文化への貢献よりも生産性の方を重視していると感じています。

「従業員に対する上司の態度も変わったと思います。従業員の幸福よりも、業務パフォーマンスやお金が重視されるようになりました。以前ほどの評価も得られなくなりました。」

Marie(44歳、フランス)

従業員は仕事を通じて何を得て、何を期待すべきでしょうか。困難な職場文化の中で、人々の主体性と尊厳を回復し、刷新する必要があるという認識が高まっています。

52%

ワークライフバランスを最も重視する人の割合

29%

自社のリーダーが従業員の利益を真剣に考えていると信じている従業員の割合

49%

顧客価値の向上や人材育成よりも、「生産性の向上」に関するメッセージを雇用主から頻繁に耳にすると回答している従業員の割合

従業員体験が顧客体験を左右する

今日の職場では複雑な課題に対処するために、リーダーには新たな考え方と特別なエネルギーが求められています。

変動の激しい経済状況下での財政的圧力と成長への絶え間ない追求、そして低下するチームの士気のバランスを取る必要があります。

基本的に、人々は自分が評価されていると感じたときに最高の仕事をし、その最高の仕事はビジネスの成長を促す卓越した顧客体験につながります。

つまり、企業の成功は従業員が尊重され、理解され、やる気にさせることから始まります。

We recommend

  • 職場に再び活気を取り戻す必要があります。その第一歩はリーダーから始まります。

  • 人は人として、機械は機械として扱われるべきであり、AIを擬人化するべきではありません。

  • リーダーは尊厳と敬意をもって設計されたやりがいある仕事を提供することで、優秀な人材を維持するべきです。

  • AIの導入に関しては、従業員の意見が聞き入れられ、尊重されるべきです。

  • すべての企業にとって、変革の管理は常に必要とされるものです。
05

つながりの再野生化

人々は余暇の過ごし方を見直し、現実の体験や人間同士のつながりに喜びやバランスを見出しています。これにより企業のビジネスチャンスも変化しています。

文化と場所に根ざして

自然界の再生を目指す再野生化と同様に、つながりの再野生化は人々の自然なリズムを取り戻します。これは屋外で過ごすことで深い喜びを発見し、文化の探求や健康的な習慣の再構築、そして忘れかけていた趣味の再開などを意味します。

「今この瞬間を生き、目の前のことに集中することが、私にとって最も現実的で信頼できることです。」

 XJ, Li.(27歳、中国)

これはデジタルを否定するものではなく、深みや豊かさのある体験の追求です。テクノロジーの利便性と現実世界での有意義な体験との間で、人々はそれらのバランスを取り直そうとしています。

42%

前週で最も楽しかった体験は現実世界での体験だった回答した人の割合

15%

前週で最も楽しかった体験はデジタルでの体験だったと回答した人の割合

38%

テクノロジーを避ける喜び(joy of missing out:JOMO) を高く評価する人の割合

65%

ソーシャルメディアの使用について意図的であると回答した人の割合

デジタルと現実のバランス

つながりの再野生化とは、長年デジタル中心の生活を送ってきた人々が新たな方向に進むことです。人々のスクリーンフリー志向の高まりで、オンライン上での活動(特にソーシャルメディア)が減少する場合、マーケターは新しい独創的な顧客接点を見つける必要があります。

そのブランドの本質を体現するような現実世界での体験は、人々のより豊かで新しい感性と調和するでしょう。

人々は自らのデジタル習慣を見直しながら、次世代がより健全なデジタルとの付き合い方をできるように手助けをする中で、心のゆとりにつながることを重視しつつあります。

We recommend

  • 企業はデジタル以外の方法で真に人々の共感を得る接点を模索するべきです。多くの企業がデジタルに重きを置いている今、これは重要な差別化要因となる可能性があります。

  • 企業は、人々がテクノロジーのシンプル化に何を求めているかを理解する必要があります。

  • 企業はよくあるステレオタイプに陥ることなく、地域文化と注意深く結びつくことで親近感を育むことができ、イベント、コンテンツ、広告、体験を通じて、特定の都市や地域の特性やニュアンスを強調することができます。

  • 特定の企業は、人々にとってますます重要になっている自然をテーマにした美的感覚を取り入れることで利益を得ることができるでしょう。

年次レポートAccenture Life Trendsは、アクセンチュア ソングに所属する世界中のデザイナー、クリエイター、技術者、社会学者、人類学者の知見を結集して作成しています。

著者

Nick Law

Creative Chairperson – Accenture Song

Katie Burke

Global Thought Leadership Lead – Accenture Song

Agneta Björnsjö

Global Research Lead – Accenture Song

Mark Curtis

Global Sustainability and Thought Leadership Lead – Accenture Song

Alex Naressi

Managing Director, Global R&D Lead – Accenture Song