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調査レポート

2050年ネットゼロ実現に向けて

2023/11/16

概略

  • 世界的にみると、ネットゼロの達成を目標にする企業は、2022年の34%から37%へ微増しました。
  • 温室効果ガス排出量(以下、GHG排出量)の削減を進める企業も増えています。一方、現在のペースでは2050年までにネットゼロを達成できる企業はわずか18%となる見込みです。
  • アクセンチュアは、企業が目標達成を確実なものとするために効果的な手段を特定しました。

コミットメントから行動へ

世界の平均気温上昇を1.5°C以内に抑えるには、世界のGHG排出量を2025年までにピークアウトし、2030年までに43%削減、2050年までにネットゼロを達成する必要があります。企業は、単に目標設定をするフェーズから達成に向けて行動を加速させる実行フェーズへと移行する必要があります。アクセンチュアは、企業のネットゼロにおける取り組みの進捗状況を測るため、3年間にわたり、世界の売上上位企業2,000社(G2000)を対象に、過去10年間のネットゼロのコミットメント状況とGHG排出削減量の開示内容を調査しました。2023年現在、37%の企業がネットゼロ目標を掲げており、この割合は微増傾向にあります。一方で、排出量データを開示する企業のうち、2050年までにネットゼロ達成が見込める企業はわずか18%です。半数は未だ排出量が増加しており、3分の1は排出量の削減スピードが目標達成に追い付いていません。

37%

ネットゼロ達成を目標に掲げる企業は37%

33%

排出量は削減しているが、削減スピードが目標達成に追い付いていない企業は33%

18%

2050年までにネットゼロ達成が見込める企業はわずか18%

複数の手段を活用する

アクセンチュアは、企業がどのような手段で排出量削減を進めているかを調査し、バリューチェーン全体の脱炭素化に効果的な20の手段を特定しました。これらは、再生可能エネルギーへの転換から炭素除去、ビジネスモデルの変革など多岐にわたります。既に確立され、実績ある手段については企業での採用が進んでいます。一方、重要度は高いものの実装が難しい手段の採用率は低いままですが最終的な成功の鍵を握っています。また、より多くの手段を採用することも、成功に不可欠です。採用する手段が10個未満の企業は排出量が増加する傾向にあります。10個以上採用している企業は、脱炭素化に向けて前進できる可能性がはるかに高くなります。

1. 再生可能エネルギーへの転換

2. エネルギー効率の向上

3. モビリティの脱炭素化

4. グリーンITの導入

5. 建物の脱炭素化

6. デジタル技術(AIや自動化)を活用したGHG排出量削減

7. サーキュラー・エコノミーの採用

8. 環境に配慮した廃棄の促進

9. 廃棄物の削減

10. サプライヤーの脱炭素化支援

11. 環境に配慮した素材の積極的な調達

12. インターナルカーボンプライシングの採用

13. 金銭的報酬とサステナビリティ目標の関連付けによる従業員へのインセンティブ

14. 温室効果ガスの排出回避・削減を意識した出張規定の策定

15. 消費者のサステナビリティに対する行動変容の促進

16. 従業員のサステナビリティに対する行動変容の促進

17. ネットゼロ戦略の一環としてのオフセット利用

18. 自然または技術活用による大気からの炭素除去

19. 脱炭素化に向けたビジネスモデルの変革

20. 環境に配慮した製品またはサービスの開発

企業が取るべきアクション

各社の取り組み状況は異なりますが、ロードマップは共通です。

  • 目標の設定 – 約3分の2(63%)の企業が、まだ完全なネットゼロ目標を設定していません。そうした企業は早急に目標を設定する必要があります。
  • 基礎を固める - 目標とアクションは別のものです。目標達成に向けて前進するためには、業界全体で共通の脱炭素化手段を採用する必要があります。
  • 応用する – 基礎的な手段を採用できたら、より複雑な手段を採用します。一部の手段はまだニッチですが、将来の成功の鍵となります。

アクセンチュアが提供する価値

アクセンチュアは、ビジネス全体に炭素データを埋め込むことで、クライアントが「カーボンインテリジェンス」企業に変革し、よりよい意思決定をできるよう支援します。そのために、以下の点に重点を置きます。

  • 情報集約 – 脱炭素化に向けた戦略を基に炭素パフォーマンスを測定します。
  • 洞察 – 排出量を高頻度で細かく記録し、目標と脱炭素化プログラムを設定し、実行可能な指標に変換します。
  • 成果に繋げる – 分析機能を活用して、最も効果的な手段を特定し、優先順位付けを行います。また、ポートフォリオを予測、リバランスすることで、新しい製品やサービスを収益化します。

アクセンチュアは、すべての活動にサステナビリティを組み込み、ネットゼロへの移行を通じてクライアントを支援することを約束します。2023 年下半期には、その道筋を示すのに役立つ4つのレポートを公開します。

  • 本レポートは、ネットゼロに向けた行動を加速させるために個々の企業が実行できるステップに焦点を当てています。
  • 世界経済フォーラム(WEF)がアクセンチュアと共同で発行した「ネットゼロ・インダストリー・トラッカー」の2023年版では、2050年までにネットゼロを達成するための取り組みにおいて、削減が困難な産業セクターの進捗状況を包括的に分析します。
  • Powered for Changeは、産業部門がネットゼロを達成するための適切なマクロ経済環境と政策環境を作り出すために必要なエコシステムの変化に注目します。
  • 国連グローバル・コンパクトとのパートナーシップを通じて作成された「UN Private Sector SDG Stocktake」は、SDGsを広範的に分析し、その達成に向けて企業が取ることができる実践的なステップについて考察します。

筆者

海老原 城一

執行役員 ビジネス コンサルティング本部 サステナビリティグループ日本統括 兼 アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同統括

Stephanie Jamison

Global Resources Industry Practice Chair and Global Sustainability Services Lead

Jean-Marc Ollagnier

CEO – EMEA

Mauricio Bermudez Neubauer

Managing Director – Strategy & Consulting, Carbon Strategy & Intelligence Lead