サプライチェーン可視化が生み出す価値

近年、企業が学んだひとつの重要な教訓をあげるとすると、サプライチェーンがよりレジリエンス（困難に柔軟に適応し対処するしなやかさ）を持つ必要があるということです。しかし、レジリエントなサプライチェーンの構築とは、単に在庫を増やしたり、余剰な生産能力を具備したりすることでの柔軟性を意味しているのではありません。なぜなら、これらの施策は、いずれもコストを増加させる結果につながるからです。その代わりに、費用対効果の高い手法の一つである「インテリジェント・ビジビリティ」を用いることで、よりレジリエントのあるサプライチェーンを構築することが可能となります。インテリジェント・ビジビリティは、分析技術とAI（人工知能）に支えられた「構造的な可視化」と「動的な可視化」を組み合わせた能力です。

これら2種類のインテリジェント・ビジビリティには、それぞれ特徴とメリットがあります。

サプライチェーンの構造を可視化することで、企業はある時点、または一定期間における業務のスナップショットを得ることができます。これにより、企業は潜在的な問題を発見し、以下の項目への理解を深めることができます。

• サプライヤーの所在
• 製造拠点の場所
• 物流経路の種類（パートナーの物流経路も含む）
• サプライチェーンネットワーク全体の相互関係
• サプライチェーンの潜在的なリスクと弱点

企業は、サプライチェーンの動的な可視化により、リアルタイムでイベントを監視し、対応することができます。以下は、企業にとって有用な情報を管理する一連のプロセスです。

• サプライチェーン全体における製品の所在
• 工場や倉庫の稼動状況
• トラブルの発生場所、及びタイミング
• トラブルの種類、及びトラブルがもたらす影響

「インテリジェント・ビジビリティ」により、企業はサプライチェーン全体をより深く把握することができます。そこから導出されるインサイトを活用することで、企業は不確実な状況にどのように対処し、どこに投資を集中させるかについて、事実にもとづいた最適な意思決定を迅速に行うことができるのです。実際、アクセンチュアの調査では、サプライチェーンの可視化度合いとレジリエンスには、強い相関関係があることが分かっています。アクセンチュアは、この調査の一環として、サプライチェーンの大手企業幹部30人にインタビューを行いました。その結果、サプライチェーンの可視化が進んでいる企業ほど、レジリエンスが高い傾向にありました。このような企業では、過去に発生したトラブルや混乱が、収益や収益性、そして株価のパフォーマンスに影響を与えることはありませんでした。さらに、レジリエンスを高めるためには、サプライチェーンのすべてを完全に可視化する必要があるわけではないこともわかりました。多くのケースにおいて必要なのは、特定の製品群、顧客、サプライヤーに対する可視化のみです。たとえば、ある経営者は次のように言っています。

また、アクセンチュアの調査では、サプライチェーンの可視化について、企業ごとに成熟度が異なることがわかりました。調査対象となった企業のほとんどは、構造的な可視化において高度なレベルにあります。これらの企業は、ネットワークマッピング、従来通りのリスク管理、ネットワーク・シミュレーション/最適化/モデリングを定期的に使用しています。しかし経営陣によれば、構造的な可視化は、サプライベース全体ではなく、特定のサプライヤーに限定されていることが多いと述べています。

構造的な可視化は比較的成熟度が高い傾向にありますが、動的な可視化はそうではありません。私たちがインタビューしたエグゼクティブのほとんどは、初期段階の2つのステップに該当する「モニタリング」と「予測」には強みがあると報告しています。しかし、きめ細かくデータを活用できていると答えたのは、約40%にすぎません。そして、ほぼすべての企業が、自律的な実行には至っていません。

つまり、「構造的な可視化」と「動的な可視化」の双方の観点を踏まえた可視化が不可欠だということです。両者を組み合わせることで、企業は自社のサプライチェーンの脆弱な部分を把握し、危機に備え、そして危機から迅速に立ち直ることができるのです。

可視化によってサプライチェーンのレジリエンスを高めることをお望みの企業の皆様に向けて、この調査から得られた4つの重要なポイントをご紹介します。