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事例

DaVita:メタバースで透析治療のプロを育成する

腎臓病治療サービス提供企業であるDaVita社に対し、医療スタッフがメタバースを用いて透析装置を実践的に学べるデジタル・ツイン・トレーニングの構築を支援しました。

所要時間:約5分

課題―求める変化

透析装置トレーニングの課題

もし新人透析技師が、実際の患者に処置を施す前に、透析装置の使い方や動作に慣れることができたらどうでしょう。DaVita社はアクセンチュアとタッグを組み、医療スタッフが実際の患者と接する前に、リアルなシナリオに基づきメタバース内で透析装置を扱うバーチャル・トレーニングを考案しました。

このような先駆的な取り組みは、ヘルスケア業界のゲームチェンジャーとなる可能性があります。外科医から在宅介護の支援者まで、すべての医療関係従事者のスキルをメタバース(仮想世界)で強化することができるのです。現在、このような臨床トレーニングは、主に物理的な制約を受けています。医学生はいまだに人体構造を理解するため遺体を解剖し、また、実際の患者で現場トレーニング(OJT)を受けています。バーチャル・トレーニングの取り組みは、こうした「物理的な制約を無くす」可能性を持っています。

このバーチャル・トレーニングは、DaVita社における広範な臨床研修プログラムの一部であり、10週間で350時間を要します。もともと、この集中的なブレンデッド・ラーニング・プログラムは、自身のペースでの学習と、臨床環境で「プリセプター」と呼ばれる経験豊富なコーチのシャドーイングをするトレーニングを組合せた形で設計されています。このようなトレーニングは、一見、有効な学習法と思われますが、新人にとってもベテランにとっても、患者から離れる時間が長くなることが大きな課題でした。

そこで同社は、新人透析技師を対象とした研修プログラムの一部を再構築し、没入型のバーチャル学習体験を導入することにしました。透析技師をトレーニングする画期的な方法を生み出すことで、臨床現場の負荷を軽減し、バーチャルな環境でより多くの教育時間を確保することを目指しました。現場インタビューによると、臨床現場でのトレーニング時間を増やしたいと考える新人透析技師は多く、バーチャル・トレーニングの飛躍的な進歩は、全体的なトレーニング経験を補強すると同時に、運営の効率性向上にもつながると考えています。

取り組み―技術と人間の創意工夫 

限られたリソースでのトレーニング強化

最初のステップとして、この新しい取り組みが、臨床医の仕事のどの部分に、より高い効果を与えるのかを探ることから始まりました。同時に、限られたリソースの中で、ユーザーを目の前のトレーニングに集中させるための、バーチャル環境を用意する必要がありました。加えて、トレーニーが自信をつけるまで繰り返し利用できるような、超リアルなバーチャル透析装置も必要でした。

こうしたトレーニングの導入箇所として最も適していたのは、「ストリンギング」と呼ばれる47の独自の手順を要する透析装置のセットアップでした。患者一人ひとりに安全に治療を提供するためには、各ステップを確実に習得する必要があります。

デザイナー、UX、メタバースの専門家で構成されたアクセンチュアのチームは、DaVita社の臨床専門家と協力し、既存のトレーニングビデオや詳細なポリシー、手順に基づき、各ステップを緻密に書き出しました。

そうすることで、わずか12週間で、実際にクリニックで使用されているような、ワイヤー、生理食塩水バッグ、pH検査キット、その他のアタッチメントを備えたバーチャルな実寸大モデルが完成したのです。このモデルは、VRヘッドセットを介してユーザーが体験するもので、可能な限り実物が忠実に再現されています。手を伸ばしたり、しゃがんだり、身を乗り出したりする診療室で行う動作も可能です。

成果―創出された価値

メタバースと腎臓治療の出会い

多くの時間を要する医療トレーニングは、バーチャルなトレーニングソリューションにより強化され、透析装置のセットアップなど、可能な限り実際の経験に備えることができるようになりました。医療業界(そして他の多くの業界も)が人材確保に苦慮している中で、こうした体験での従業員のモチベーション維持は非常に重要です。

従来、このようなバーチャル・トレーニング技術は主にソフトスキル学習用に使用されることが多かったのですが、このプロジェクトで、ハードスキルの学習にバーチャル・トレーニング・ソリューションを使用するという新しい価値も実証することができました。今回のプロジェクトはDaVita社の将来のみならず、他の業界への応用にも役立てられると考えます。安全性を重視する業界であれば、こうしたトレーニング・プログラムの導入はより重要となってくるでしょう。 

本ソリューションのバーチャル体験によって、DaVita社の臨床医が治療の手順を分析し、プロセスの改善やその他の効率化の機会を特定できるようになることも期待しています。今後は、新しいトレーニングツールを超えた長期的な価値の創出も可能となるでしょう。