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【グラミン日本×アクセンチュア座談会】グラミン日本設立5周年。起業支援に関するブランディングに向けた共創

「シングルマザーに、起業という選択肢を。」新たなメッセージに込めた想いを、グラミン日本の髙橋理事と、支援に携わったプロボノ・プロジェクトメンバーとともに振り返る。

2023/08/22

「シングルマザーに、起業という選択肢を。」新たなメッセージに込めた想い

貧困のない、誰もが活き活きと生きられる社会を実現したい。
1983年、貧困・生活困窮者へ無担保融資を行うマイクロファイナンス機関として産声をあげたグラミン銀行。2006年にノーベル平和賞を受賞。一般社団法人グラミン日本は、2018年に同行の日本法人として設立されました。

全世界でSkills to Succeed(スキルによる発展)というテーマの企業市民活動に取り組むアクセンチュアは、事業活動を通じて培ったノウハウを活かし、グラミン日本の設立以来、事業計画の立案から利用者のスキル習得・就労支援に向けた仕組みづくりに至るまで、経済的自立に繋がる事業運営に関して全面的な支援を提供してきました。
最近では、グラミン日本で融資を受けて起業・就業した方々の継続的なスキル向上と情報共有のプラットフォームである”Gra Club(グラクラブ)”というポータルサイトの構築を支援しました。

設立から5年。グラミン日本は、シングルマザーを中心とした生活困窮リスクのある女性に対して起業という経済的自立に向けた選択肢の認知拡大を目的に、新たなブランドメッセージを発表。メッセージとブランドビジュアルの共創に取り組んだのが、アクセンチュア ソング*のクリエイティブチームでした。メンバーがどのような想いをもち、どのように創り上げていったのか、この記事でご紹介します。

*ビジネス・クリエイティブ・テクノロジー・サイエンスを掛け合わせて人々の「共感」を創出。顧客と企業の関係を再構築し、企業のビジネス成長に貢献。

座談会参加者プロフィール

髙橋歌織(タカハシカオリ):グラミン日本 マイクロファイナンス事業リード。

加藤悠(カトウユウ):Accenture Song Creative Unit所属。本プロジェクトでは、ブランディングにおけるクリエイティブディレクション・ブランドアクションなどのプランニングを担当。

今村瑠奈(イマムラルナ):Accenture Song Creative Unit所属。本プロジェクトでは、コンセプト設計・メッセージのコピーライティングを担当。

中村理紗(ナカムラリサ):Accenture Song Creative Unit所属。本プロジェクトでは、ビジュアルデザインを担当。

可児竜太(カニリュウタ):ビジネス コンサルティング本部 High Tech所属。コーポレート・シチズンシップ 経済的自立支援領域のプロジェクト推進を担当。本記事のインタビュアー兼執筆者。

シングルマザーに、起業という選択肢を。
シングルマザーに、起業という選択肢を。

新ブランドメッセージ

ブランドビジュアル
ブランドビジュアル

ブランドビジュアル

当初は意図していなかったブランドメッセージの制作

ー新ブランドメッセージの公表に至った経緯はどのようなものだったのでしょうか

髙橋:きっかけは、ポータルサイト「GraClub」の構築をお願いしたことでした。マイクロファイナンス事業では、金融支援を受けるメンバー(以下、グラミンメンバー)が5人組という互助グループをつくり、起業や就労に向かって歩みを進めます。しかし、融資を完済するとグループが解散し、その後の励ましあいがなくなってしまいます。そのため、継続的につながる場として、既存のラーニングポータルの再構築をアクセンチュアにお願いしました。

加藤:当初は、ウェブサイトのグラフィックデザイン制作で我々クリエイティブチームに声がかかりました。しかしお話を伺い、どのような見た目にするかは二の次だと思いました。ウェブサイトで伝えたいことや、ウェブサイトがどういう場かを定義しないと、表現がブレてしまう。そのため、何を伝えるのか一緒に議論することから始めさせてほしいと提案しました。そのブレない表現があったからこそ、みんなが目指すべきブランドメッセージに昇華していったのだと思っています。

髙橋:アクセンチュアからは設立以来サポートを受けており、当初はお互いに手探りだったものの、現在はグラミンに対する理解が深まってきています。今回の依頼についても、外側だけではなく、中身を理解して活動していただきました。
「理解」というのは簡単そうで難しいものです。シングルマザーといえば、つい、「かわいそう」といった目線を向けてしまいがちですが、実はシングルマザー側はそう思っていなかったりする。「かわいそう」が先行するとグラミン日本の目指すものと違ってきてしまう。こうしたことは、伝えるのも難しいし、受け取ってもらうのも難しい。その点、アクセンチュアは長く一緒にやらせてもらっていて、ズレのない感じがすごく大きいと思っています。
今回も、シングルマザーの目線で、本当の想いや現状を理解したうえでメッセージをつくってもらえました。

加藤:ちょっとテンション上がったのでメッセージまで提案させてもらった、というノリもありました(笑)。 グラミン日本とご一緒させていただく中で、提案の可能性をクリエイティブメンバーで話し合い、思い切ってお伝えしたところ、受け入れていただけました。

シングルマザーの目線から伝えるべきことを考える

―シングルマザーの目線がポイントと思うが、クリエイティブチームで具体的にどのようなことをされたのでしょうか?

加藤:ヒアリングが重要と思い、社内のシングルマザーに事前に見せました。その上で徹底的に意見をぶつけ合って、アイディアを磨きました。

髙橋:シングルマザーの実際の声を拾ってもらったのは大きいと思います。シングルマザーはやはり環境も家族の状況も一人ひとり異なるので、先入観で捉えられるとちょっと違うんですよ。

今村:私は主に言語化を担当しましたが、言葉は、ビジュアルよりも決めつける可能性のあるものです。シングルマザーは一言で括れないため、背中を押したいと思っていたのに、言葉のせいで逆に傷つける可能性もあります。そのため、クリエイティブメンバーで忌憚なく話し合い、当事者であるシングルマザーに社内でヒアリングしました。さらに髙橋さんとのミーティングでも、気になっているセンシティブなポイントを正直にお話しました。それに対し、髙橋さんもまっすぐに答えを返してくださったので、どんどんと良いものに近づいたのだと思います。

中村:私はグラフィック制作を担当しました。私たちはシングルマザー当事者ではないので、彼女たちの気持ちを完全に理解することは難しいと思います。そのため、柔らかい世界観を大事にしたり、グラミン日本のブランディングから外れないようにするのがとても大事と考えていました。

髙橋:キャッチコピーが本当に素晴らしかったです。実は私は「支援」という言葉が好きではありません。シングルマザーとともに歩むイメージで活動しているので、「応援」だと思っており、今回のコピーはまさに「応援メッセージ」と感じました。

シングルマザーの置かれた環境を見て「かわいそう」や「大変だね」ではなく、彼女たちの持つ力を信じたうえで、「頑張っているね」と伝えることができる。そのようなブランドメッセージになったと思います。

提案を受け、グラミンメンバーにも見せて印象を伺いました。起業というメッセージは、人によっては目標が高く、しり込みをしてしまうという声もありました。しかし、これまでグラミンはシングルマザーの応援に向け、環境を作ってきています。そのため、こういった前向きな強いメッセージを自信をもって発信できる段階に至っていたと考えています。

加藤:メッセージの強さのバランスは徹底的に議論しました。「起業しよう」も違うし、「もっと働こうよ」も弱い。応援のためには、「選択肢を増やしませんか?」と問いかけ、その先は言及しないのが良いのではないか。メッセージの受け手であるシングルマザーがどう受け取るかを考え、バランスをとるのはチャレンジングなポイントでした。

髙橋:「こうした方がいい」というメッセージは、本当にその人のためになるかはわからないですよね。決めつけすぎると振り向いてもらえないので、応援メッセージになりません。その点、「子供と向き合う時間がない」はシングルマザーに伝わりやすいメッセージでした。

シングルマザーの貧困には、経済的な側面と同じく、時間的な側面があります。仕事・家事・育児をすべて一人でやっているので、本当に時間がない。「子供との時間」というのは皆さんおっしゃるので、そこに着目したのは大きいと思います。

今村:シングルマザーの悩みは、各支援団体のアンケートなどから洗い出しました。仕事と育児の制約のなかで時間の使い方が難しい。時間がないため、視野をさえぎられたり、一人で悩んだり、キャリアをあきらめたりしなければならない。でも、そこに「起業」という新しい光を見つけられたら、前向きになるきっかけになるのではないか、と議論しました。シングルマザーと起業は遠いイメージですが、自分で時間をコントロールできるので実は相性が良いのかもしれない。そういった選択肢を出したいと考えました。

髙橋:私の経験上、日本では、働く女性が子供に「おかえり」を言いたいというのはわがままだという風潮があるように思います。そこに疑問を持ち、「おかえり」が言える働き方がもっとあればいいよね、という声をあげる。皆さんとはそのような議論をして、メッセージにしていただいたのではないかと思います。グラミン日本や他の支援団体、サポート企業が、一緒に働く女性にとって当然の前提を見直し、発信していくきっかけになったかと思います。

フラットな関係性を築けるプロボノ活動

―プロボノ活動で社会貢献に活躍されている方と接して、どのような印象がありましたか

中村:私は入社以前からアクセンチュアのプロボノ活動を知っており、クリエイティブ業界が社会課題に向き合う事例も増えてきていたので、個人的に関心が高く、参加させていただきました。通常の企業クライアントよりも近い距離感にあり、シングルマザーの気持ちに寄り添った表現の作りこみに向けたコミュニケーションは学びになりました。
また、私たちの無邪気な提案にも喜んでいただけたのが印象的です。普段私たちの仕事は、お客様に納品した後の反応が見られなかったり、世の中に出ても誰が作ったのかわからなかったりといったことが常です。しかし、今回グラミン日本の方に反応をもらえて、喜んでいただいたのがとても嬉しく、やってよかったと思っています。

加藤:社会貢献とクリエイティブの掛け算は世の中に増えてくると思っています。社会貢献は見えづらいので、世の中にどのように伝えるかはクリエイティブが力を発揮する領域です。今回、シングルマザーに新しい価値転換を伝えられたのは、小さな一歩ではあるものの、確かに社会貢献になったと思います。

髙橋:グラミン日本とシングルマザーの関係は、支援する側、される側ではなくフラットなものだと思っています。同様にグラミン日本とアクセンチュアも、ともにシングルマザーを応援するフラットな関係性にあると思っています。フラットな関係性があるからこそ、シングルマザーに対する目線がどんどん合っていくのだと思います。

中村:グラミン日本と活動する中で、もっと表現を工夫しようと努めたり、前向きなビジュアルを意識したりしました。結果、思うように表現でき、喜ばれたことがとても嬉しかったです。真の意味でシングルマザーを応援し、勇気づけるブランドメッセージが出来上がったと思い、とても学びが多かったです。

今村:髙橋さんと私たちの間に素直に意見交換できる関係があり、一緒に作ろうと本当に思ってくださった。だからこそ、シングルマザーの声をシェアしていただけたり、言いやすい環境を作ってくださったりした。幸せな仕事だったと思っております。

 
(写真左から)可児、今村、グラミン日本髙橋理事、中村、加藤
(写真左から)可児、今村、グラミン日本髙橋理事、中村、加藤

(写真左から)可児、今村、グラミン日本髙橋理事、中村、加藤