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概要

概要

  • 需要が低迷しサプライチェーンが不安定化する時代に企業がデジタル化を継続させるには、部門の枠を超えたコラボレーションにフォーカスする必要があります。
  • たとえ「平常時」であっても、デジタル変革のような複雑な課題に対して十分なコラボレーションがなければ、ROIおよび将来の収益成長が危機にさらされることになりかねません。ポスト・コロナ時代には、昔からのサイロ化問題は多大な損害をもたらす可能性があります。
  • 部門の枠を超えたコラボレーションという難題を解決している企業は、イノベーションを起こし、レリバンスを保ち、利益を伴う成長を促進することに成功しています。


部門の枠を超えたコラボレーションの核心に迫る

現在起きている感染症の世界的大流行のような地球規模の危機はあまりにも複雑で、異なる分野の複数のチームが協力して取り組む以外、解決する術はありません。何がなんでもサイロ構造を解体する必要があります。医師は政府の指導者と、看護師はサプライチェーン管理者と、そして、感染症の専門家はあらゆる業界のCEOとそれぞれ協力して取り組んでいます。

危機の最前線にあるグローバル企業は、社外の組織と協力して、自社のアイデア、人材、リソースを人類のために役立てることができています。しかし、果たして社内においてはどうでしょうか? 各部門同士(R&D、エンジニアリング、生産、マーケティング、オペレーション、セールスなど)が連携して、新たな競争上の脅威やデジタル変革など、COVID-19に関わらず企業が直面している複雑な課題に対処することができているでしょうか? 価値の促進のために、クラウド、データ・アナリティクス、データ共有などのテクノロジーを活用しているでしょうか?

アクセンチュアの「インダストリーX.0リサーチ」の調査結果は、多くの大手企業で今なお部門の枠を超えたコラボレーションに苦慮していることを示しています。COVID-19の世界的大流行以前に、全世界の産業分野の企業の上級管理職と経営幹部1,500人以上を対象に行った本調査では、異なる部門がデジタル化をめぐってコラボレーションするのではなく、競争関係にあるとの回答がグローバルで75%(日本企業では72%)を占めていました。

デジタル変革の只中で、サイロ構造による問題が顕在化しています。そしてそれは企業の純利益と売上の両方に影響を及ぼしています。今回の調査結果について考えていきましょう。

  • 部門間の競争はデジタル・プロジェクトの投資の重複を招き、その結果としてコストが6.3%増加するであろうというのが経営幹部達の見方です(日本企業の回答は5.4%)。2017~2019年の報告値はこれに近いものであり、実コストが6%近く伸びています。

  • 各部門の責任者によるデジタル投資は、2017~2019年に企業収益を年間11.3%ずつ伸ばすのに役立つと見られていました。しかし、この時期の実際の報告値は年間平均6%強の増収と、予想のほぼ半分に留まっています。(日本企業は予想収益成長率13.2%に対して実際の成長率は5.3%と回答)

  • 3社に2社(64%)の企業は、デジタル投資による増収の効果が全く得られていません。(日本企業は72%がデジタル投資による増収の効果が得られていないと回答)

たとえ「平常時」であっても、部門の枠を超えたコラボレーションがなければ、ROIと収益の増加が妨げられてしまいます。ましてや景気低迷の時代にあっては、部門間の競争が多大な損害をもたらすことになりかねません。デジタル変革に関する競争となればなおさら事態は深刻です。

よって、経営幹部が答えを出すべき問題は、どうやってバランスを保った判断をするかということです。反復的な実験とイノベーションの恩恵を得るために、試行錯誤と細分化、そして部門間の競争はどの程度認めるべきでしょうか? 同時に、それらを統合し、全体として十分なコラボレーション、協調、調和を確保するには?軌道修正や再調整が必要であれば、それは社内のどこに、どのタイミングで働きかければいいのでしょうか?


河野 真一郎

ビジネス コンサルティング本部 インダストリーXグループ日本統括 アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京共同統括 マネジング・ディレクター

部門の枠を超えた
コラボレーションの
効果



部門間の競争関係が将来の成長と広範なデジタル変革の目標達成に悪影響を及ぼしているという調査結果を得て、アクセンチュアではこの問題の解決策を見出している企業をさらに調査し、彼らがどのようにして部門のサイロ構造を解体し、コラボレーションとイノベーションを広げることに成功しているのかを探りました。まず注目したのは、デジタル投資による収益促進で同業他社を凌駕し、過去3年間にわたって業界平均を上回る収益増加率を達成している企業です。

少数の製造・産業関連の企業が浮かび上ってきました。調査サンプルの22%を占めるチャンピオン企業(部門の枠を超えたコラボレーションに成功している企業)は、部門のデジタル変革に対し、他の企業の1.5倍の額(総収入の39% ※日本企業は1.6倍の額[総収入の37%])を投資しています。しかし、収益増加率は4倍を超える27%(チャンピオン以外の企業は6.6%)となっています。(図1参照)※日本チャンピオン企業の収益増加率は2倍を超える27.7%(チャンピオン以外の企業は11.0%)


図1:デジタル変革への投資

全ての部門におけるデジタル変革への平均投資額の総収入に占める割合(2017~2019年)




全ての部門におけるデジタル変革投資の結果もたらされた増収の平均増加率(2017~2019年)



しかし、チャンピオン企業が総収入の3分の1を超える額をデジタル・プロジェクトに投資する中、いくら収益成長率が高いとはいえ、果たして採算は取れるのでしょうか? アクセンチュアでは、実際のEBIT(支払金利前税引前利益)値を調べ、チャンピオン企業が2017~2019年に27%(日本企業は19.8%)というEBIT成長率を達成していることを突き止めました。これに対して、他の企業の成長率は2.1%(日本企業は7.3%)に留まっています。 (図2参照)



図2:デジタルによる収益成長

全ての部門におけるデジタル変革投資の結果もたらされた増収の平均増加率(2017~2019年)


図3:チャンピオン企業に対する市場の期待

1日の平均株価指数(基準日2020年1月1日)



明らかに、チャンピオン企業はデジタル投資によって採算の取れる収益を順調に伸ばしてきました。しかし、それはあくまでもCOVID-19以前の話。果たしてこれらの企業は、この危機をうまく切り抜けることができるのでしょうか? アクセンチュアは調査対象となった企業の株価の変動についても調べ、その結果、危機の間もチャンピオン企業の業績は向上するとの市場の見方があることが判明しました。(図3参照)

何よりも、これらの企業はクラウドベースプラットフォームを活用し、データを共有することでサイロ構造を解体する方法を見出しており、解体の過程で結果を出しています。

チャンピオン企業の秘訣


チャンピオン企業と他の企業を分ける5つの重要な行動がわかってきました。チャンピオン企業は以下のことを行う傾向が強くなっています。

  1. 明快な共通の目的
    組織にとってのデジタル変革の意味と、組織全体でのコラボレーションの必要性を明確にする。
  2. 経営幹部の説明責任
    組織全体でコラボレーションがうまく行えているかの説明責任を経営幹部に課す。
  3. プロジェクトの優先順位付け
    部門間のコラボレーションが必要なプロジェクトを優先する。
  4. 部門間で相互に運用できるプラットフォーム
    サイロ化を招くようなソリューションの無計画な導入を避け、コラボレーションのためのプラットフォームに投資し拡張する。
  5.  IT-OT戦略の統合
    情報技術と運用技術、およびその連動の仕方について、明確なルールを定める。


チーム横断的コラボレーションの
ロードマップ


デジタル変革で重要なこととして、価値の定義が異なることによってある部門での成功が他の部門にとっての浪費となることがないように気をつける必要があります。チャンピオン企業では、各部門が他の部門で創出された価値に呼応して、その上にさらなる価値を築いていけるような体制作りをしています。

コラボレーションをめぐる共通の課題を克服し、複数の部門におけるデジタル化の調和を図るには、チャンピオン企業が実践している5つの重要行動にフォーカスする必要があります。


01. 計画を立て、実行に移す:

デジタル変革のビジョンとミッションについて、具体的で、規範的、かつ明確な計画を立てるようにします。

包括的な事業戦略を立て、望ましい結果を列挙するだけでは十分ではありません。具体的で多面的なデジタル変革戦略を策定し、関係者全員に周知することが重要です。変革の全ての段階を把握するための実行計画の作成も欠かせません。

部門の枠を超えたコラボレーションに関する責任の所在を明らかにする。

チャンピオン企業の82%に、デジタル変革を推進し、各部門における変革を成功させる責任を負う経営役員がいます。1人のリーダーに業務のデジタル化が任されているのであれば、つまりその人は企業のデジタル投資を最大限活用するのに必要な組織改革に影響を与える責任を負うべきです。1人のリーダーが責任を負うことで、成功する確率が高まります。

部門の枠を超えたコラボレーションを促進するデジタル・プロジェクトを優先させる。

チャンピオン企業は資産をどこにどのように配分すればいいのか、きちんと認識しています。これらの企業は、部門の枠を超えたコラボレーションが必要なプロジェクトを優先させ、投資し、そのうえで組織全体で実行に移します。

全てのデジタル・ソリューションとプラットフォームの相互運用を可能にする。

チャンピオン企業は、クラウド上で複数の異なる技術プラットフォームを調和させ、シームレスに連動させて共通の成果を得られるようにするにはどうすればいいのかを知っています。またその多くが、デジタル・プラットフォーム同士がうまく連動し、通信し合えるようにしています。

最初からスマートIT-OT ガバナンス・ポリシーを構築する。

部門の枠を超えたコラボレーションは、優れたインサイトを解き放つやり方でデータを収集、提供、投資し、そのうえで組織全体で実行に移します。

まとめ:
速く行きたいのであれば1人で、
遠くまで行きたいのであれば皆と一緒に。


部門の枠を超えたコラボレーションは最終目標でもなければ、目標を達成するための手段でもありません。ポスト・コロナ時代の「Never Normal(全く新しい日常)」の世界で企業が取り組むべき最優先の課題であり、デジタル変革の継続という任務を負った経営幹部にとっての戦略目標でもあります。部門の境界を越えた幅広いコラボレーションを効果的に実行できれば、無駄とコストの削減になるだけでなく、目に見える財務的収益がもたらされます。

企業がデジタル技術の導入を進め、デジタル変革を急ぐ場合、部門の枠を超えたコラボレーションという視点は失われがちです。しかし、チャンピオン企業はそのようなコラボレーションが事業に欠かせないものだということを認識しています。困難な時代において、部門の枠を超えたコラボレーションは、効率性や生産性と同様に成功を測る重要なバロメーターとなりつつあります。

詳細資料

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レポート

デジタル変革の投資を最大化する5つの指針 :部門の枠を超えたコラボレーションがもたらす効果

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本調査について


2020年1月から2月にかけて、世界11カ国14業界の年間売上高10憶ドル超の企業の上級管理職1,550人を対象に実施。

調査の中で、アクセンチュアは経営幹部に対し、所属する企業名と主要な事業部門のデジタル変革に投じた投資額の回答を求めました。あわせて、それらの投資がコストと収益の両方に与えた影響についてデータを収集しました。デジタル投資とその影響についての調査データと、公開されている財務情報を比較することで、部門間の競争により失われる価値について明らかにしました。以下の2つの異なる基準を満たしている企業を「チャンピオン」と分類しました。

  1. 2017~2019年に、部門の枠を超えたデジタル変革投資の取り組みが収益に及ぼした影響が業界平均を上回っている。
  2. 同3年間の収益成長率が同業他社を上回っている。

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