部門の枠を超えたコラボレーションの核心に迫る
現在起きている感染症の世界的大流行のような地球規模の危機はあまりにも複雑で、異なる分野の複数のチームが協力して取り組む以外、解決する術はありません。何がなんでもサイロ構造を解体する必要があります。医師は政府の指導者と、看護師はサプライチェーン管理者と、そして、感染症の専門家はあらゆる業界のCEOとそれぞれ協力して取り組んでいます。
危機の最前線にあるグローバル企業は、社外の組織と協力して、自社のアイデア、人材、リソースを人類のために役立てることができています。しかし、果たして社内においてはどうでしょうか?
各部門同士(R&D、エンジニアリング、生産、マーケティング、オペレーション、セールスなど)が連携して、新たな競争上の脅威やデジタル変革など、COVID-19に関わらず企業が直面している複雑な課題に対処することができているでしょうか?
価値の促進のために、クラウド、データ・アナリティクス、データ共有などのテクノロジーを活用しているでしょうか?
アクセンチュアの「インダストリーX.0リサーチ」の調査結果は、多くの大手企業で今なお部門の枠を超えたコラボレーションに苦慮していることを示しています。COVID-19の世界的大流行以前に、全世界の産業分野の企業の上級管理職と経営幹部1,500人以上を対象に行った本調査では、異なる部門がデジタル化をめぐってコラボレーションするのではなく、競争関係にあるとの回答がグローバルで75%(日本企業では72%)を占めていました。
デジタル変革の只中で、サイロ構造による問題が顕在化しています。そしてそれは企業の純利益と売上の両方に影響を及ぼしています。今回の調査結果について考えていきましょう。
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部門間の競争はデジタル・プロジェクトの投資の重複を招き、その結果としてコストが6.3%増加するであろうというのが経営幹部達の見方です(日本企業の回答は5.4%)。2017~2019年の報告値はこれに近いものであり、実コストが6%近く伸びています。
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各部門の責任者によるデジタル投資は、2017~2019年に企業収益を年間11.3%ずつ伸ばすのに役立つと見られていました。しかし、この時期の実際の報告値は年間平均6%強の増収と、予想のほぼ半分に留まっています。(日本企業は予想収益成長率13.2%に対して実際の成長率は5.3%と回答)
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3社に2社(64%)の企業は、デジタル投資による増収の効果が全く得られていません。(日本企業は72%がデジタル投資による増収の効果が得られていないと回答)
たとえ「平常時」であっても、部門の枠を超えたコラボレーションがなければ、ROIと収益の増加が妨げられてしまいます。ましてや景気低迷の時代にあっては、部門間の競争が多大な損害をもたらすことになりかねません。デジタル変革に関する競争となればなおさら事態は深刻です。
よって、経営幹部が答えを出すべき問題は、どうやってバランスを保った判断をするかということです。反復的な実験とイノベーションの恩恵を得るために、試行錯誤と細分化、そして部門間の競争はどの程度認めるべきでしょうか?
同時に、それらを統合し、全体として十分なコラボレーション、協調、調和を確保するには?軌道修正や再調整が必要であれば、それは社内のどこに、どのタイミングで働きかければいいのでしょうか?