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調査レポート

企業オペレーションの再創造

8分(読了目安時間)

2023/07/10

概要

  • オペレーションの成熟度を高めることで、企業変革を加速させ、企業全体の成長を実現します。
  • 本調査レポートでは、オペレーションの改革実行者(以下オペレーション・リインベンター)がどのようにオペレーションを最適化し、新たな領域でパフォーマンスを発揮しているかが述べられています。
  • オペレーション・リインベンターは、強力なデジタルコアを活用し、オペレーション成熟度を計測する6つの差別化要素に対応しながら、全方位型の価値(360°バリュー)を生み出しています。
  • オペレーション・リインベンターが実施している、改革に向けた5つの取組みを提示します。

アクセンチュアは、12カ国、15業種の経営者1,700名を対象に調査を実施し、以下の結果を導きました。

9%

の企業のみが全領域で最高レベルのオペレーション成熟度を実現しており、全方位型の価値(360°バリュー)創出を推進する独自の能力を保持しています。

18%

の企業が、オペレーション成熟度の最下層にとどまり、オペレーションの最適化を実現できていません。

変革への戦略

私たちは今、テクノロジーの急激な進歩、消費者嗜好の変化、気候変動など、大きな時代の変化に直面しています。このような変化の時代には前例のない対応と企業活動の再構築が必要となります。

企業全体の再創造(トータル・エンタープライズ・リインベンション)は、企業が事業展開する業界において、今までにない新たな領域でパフォーマンスを発揮することを目的とした戦略であり、その中でオペレーションの最適化は不可欠です。また、オペレーションが最高のパフォーマンスを発揮することで、ビジネスの成果を飛躍的に向上することが可能となります。本調査によると、オペレーション・リインベンターと呼ばれる一握りの優れた企業だけが、全社改革を実施し、オペレーションの課題に対処していることがわかりました。

オペレーションの再創造に向けて

本調査では、オペレーションの成熟度を測定する6つの差別化要素を用いて企業を評価しました。さらに、6つの要素をオペレーション成熟度別に4レベル(Foundational、Automated、Insight-driven、オペレーション・リインベンターが属するIntelligent)に分類しています(図1)。

アクセンチュアが2021年に実施した調査によると、必ずしも1つの定型的な解決方法がすべての企業の改革に対応する訳ではないことが判明しています。

  • オペレーション成熟度は、日々の企業活動の中で自然に向上することはありません。
  • 企業がどのようにオペレーション成熟度を向上させるかは、それぞれ企業により異なります。
  • オペレーション成熟度の向上には、6つの差別化要素すべてに対応することが重要です。
Operations maturity journey chart
Operations maturity journey chart

オペレーション・リインベンターがより高い価値の創出を実現しています

1.4倍

高い営業利益率(EBIT)

2.2倍

高い総株主利益率

42%

より早いイノベーション創出のスピード

34%

より低いエネルギー消費量と温室効果ガス排出量

30%

より高い顧客エンゲージメント

25%

より平等な機会創出

19%

より良いタレントマネジメントプログラムの提供

本調査によると、デジタル技術への投資を増加するだけでは、オペレーション成熟度の向上は実現できないと判明しました。オペレーション・リインベンターは、デジタル技術への投資をバランスよく行うことで企業の価値向上を実現できると理解しています。彼らは、デジタルコアの要素: AI、クラウド、自動化、サイバーセキュリティなどに分散して投資をすることで、他社よりも優れた実績を残しています(図2)。

Business challenges chart
Business challenges chart

オペレーションを改革する5つの方法

01.全方位型の価値(360°バリュー)創出を目指す

企業は、物理科学の世界とデジタル技術の世界を融合することで生まれる新たな基準を用いて、サステナビリティに関する課題を再検討しています。また、対面、オンライン、メタバースなど、チャネルを超えた顧客との新たな関わり方も模索しています。サステナビリティの目標を到達させながら、従業員の創造的な可能性を最大限に引き出す新しいアプローチが必要です。

オペレーション・リインベンターは、オペレーション成熟度の6つの差別化要素に対応するだけでなく、価値創出の在り方を総合的に捉えた上で、顧客や従業員、エコシステムパートナーのデータから得られる洞察を全社で活用できる環境をゼロから構築しています。

60%

オペレーション・リインベンターは、拠点における温室効果ガス排出量、廃棄物処理量、資源循環などを追跡するプロセスやプラットフォームを成熟度の低い企業に比べ多く導入しています。

02. データに基づく決断力を磨く

企業のおけるデータの需供量は、大幅に増加しています。しかし、最先端のデータアーキテクチャに投資しても、データの検証、インデックス付けや整理を正確に行うことは困難です。

オペレーション・リインベンターは、どのデータをどこでどのように活用すべきか、議論を促す習慣を確立しています。データの作成、収集、接続、強化の方針を策定し、明確なデータ戦略として活用されています。

90%

オペレーション・リインベンターは、ビジネス戦略に沿ったデータ戦略を策定し、一元的かつ安全なデータレイクを有することで、企業全体でのデータに基づく意思決定を実現しています。

03. 業務プロセスの最適化を図る

ビジネスプロセス関連のタスクは、時間の経過とともに複雑化する傾向があります。それぞれのタスク要員を増やし、テクノロジーによるその場しのぎの解決法を考えるだけでは、プロセスマイニングをより困難にするだけです。

オペレーション・リインベンターは、現状のプロセスをプロセスマイニング等で可視化し、企業全体での無駄(重複)やプロセス不正といった非効率を発見します。こうした仕組みによって、リアルタイムデータを提供するだけでなく、プロセスのギャップを特定し、クラウドプラットフォーム上のローコード自動化機能を活用しながら、領域横断でのプロセス改善を行うことが可能となります。

75%

オペレーション・リインベンターは、領域横断でのプロセスマイニングとベンチマークを実施しています。

04. AI・自動化がもたらすエクスペリエンスを身近にする

多くの企業では、請求書発行、給与計算、ベンダー管理・照合などのプロセスを自動化していますが、新しい分野への自動化導入に抵抗がある傾向にあります。

オペレーション・リインベンターは、エコシステムパートナーとともに自動化の新しいユースケースを模索し、ユーザーの利便性を追求するだけでなく、従業員や顧客がテクノロジーとの関係をシンプルにできるよう努めています。また、エクスペリエンスを起点とした成果を測定しています。

71%

オペレーション・リインベンターは、顧客、従業員、パートナー企業へエクスペリエンスを提供するソリューションとして、AIの活用と自動化をより導入しています。

05.労働環境に俊敏性を備える

レガシーシステムの近代化において、新しいテクノロジーを最大限に活用するためのチーム編成や人材のスキルアップが困難な場合があります。人材の経験や能力レベルが異なると、モダナイゼーションは複雑になります。

オペレーション・リインベンターは、組織の多様性を最大限に活用しています。従業員がテクノロジーツールを活用することで、ビジネス上の課題に対して有益な解決策を導くことが可能です。ハイパーパーソナライズされた従業員体験により、効率的で高度に専門化された人材能力をより発展させます。

92%

オペレーション・リインベンターは、あらゆる業務プロセスにおいて、機械が人間の仕事を補填し、従業員間でのコラボレーションや横断的な従業員の移動を促すアジャイルな労働環境を提供しています。

新たな領域でパフォーマンスを発揮する

企業は前例のない課題に直面しています。しかし、迅速な変革と自己改革を目指す企業は、戦略的マネージドサービスを利用し、自社のデジタルコア形成に必要な能力、プロセスに関する専門知識、大規模な成果を提供するための専門人材を補完しています。これらを実践することで、仕事のやり方を変え、キャッシュフローの改善を促し、新しいビジネスチャンスへの投資を促進しています。

オペレーションの成熟には多くの利点がありますが、実態として、リインベンターと下位に所属する組織との差は拡大する傾向にあります。変化が加速する状況において、新しい価値発見を待っていることはできません。オペレーションの成熟を加速させることで、企業は新たな次元でのパフォーマンスを開拓することができるのです。

筆者

ユスフ・タヨブ

オペレーションズ担当グループ・チーフ・エグゼクティブ

ヴィピン・ガイロラ

オペレーションズ 成長・戦略リード