マーケティングを変革する時
本当に重要なことに集中し、そうでないものは捨て去る。残りを再構築する。
顧客が自らの価値観やパーパスを見直す中、絶え間ない変化が何ヶ月にもわたって続いています。すべてのビジネス機能の中でこの影響を最も直接的に受けてるのはマーケティング部門です。同時に、予算の縮小にもかかわらず顧客体験の主導権を握って成長を促進させなければならないというプレッシャーの増大がマーケティングをさらに困難なものにしています。言うまでもなく、デジタル時代はより多くのチャネル、タッチポイント、ツールをもたらし、マーケターの仕事は増加しているからです。
マーケティング上級管理職の約70%が、2020年は従業員にとって大変疲弊する1年だったと回答。
しかし、調査対象の1,000人以上のマーケティング管理職のわずか17%の少数のグループにおいては、彼らのマーケティング組織が活気にあふれていることが分かりました。彼らの86%は、従業員が「急速に変化する顧客の期待に応える」という新たな目標に意欲を感じていると回答しています。
マーケティングに必要なのは、断捨離です。
成功しているマーケターは既存の方法にしがみつかず、複雑さを管理するためにマーケティングを断捨離しています。これが功を奏し、顧客の満足度と生涯価値を向上させる価値ある仕事をしているのです。そして、特にマーケターが燃え尽きてしまった競合他社と比べ、ビジネス成果を享受しています。
1.4倍
高い増収率と収益性を実現している先駆企業の割合は現状維持企業の1.4倍以上
1.8倍
顧客満足度において優れたパフォーマンスを発揮している先駆企業の割合は現状維持企業の1.8倍以上
。
2.5倍
顧客認知度で優れた結果を出している先駆企業の割合は現状維持企業の2.5倍以上
「先駆企業」「努力企業」「現状維持企業」
顧客との関係をどのように捉えるかに基づいて、私たちはマーケターを3つのグループに分類しました。
先駆企業(17%)は意欲的です。
変化する顧客の優先事項を満たすことに対して意欲的であり、それが成果を上げている理由となっています。また、信頼される形で顧客とつながっています(日本企業の先駆企業の割合は18%)。
努力企業 (66%) は忍耐強く取り組んでいます。
顧客ニーズを満たすためにある程度の行動力を持ってますが、顧客の変化に対する認識は限定的。意志はありますが、必ずしも方法が正しいわけではない状態です(日本企業の努力企業の割合は46%)。
現状維持企業(17%)は燃え尽きています。
顧客の変化と波長が合っておらず、変化が一時的なものだと推定しています。「元通り」を待ち続けているため、現状を維持することがますます困難になっています(日本企業の現状維持企業の割合は36%)。
混乱を切り開く先駆企業の秘訣
アクセンチュアのグローバル調査では、先駆企業が考え方と行動の両方においていかに道を切り開いてきたかを明らかにしました。その違いは先駆企業と現状維持企業を比較したときに最も顕著に表れ、私たちの分析もそこに焦点を当てています。
現状維持企業は先駆企業を見習うことで状態を好転させることができます。そして今日のマーケターの大半を占める努力企業はより効果的な方法を学び、注力することができるでしょう。
マーケティングを断捨離するための5つのルール
1: 顧客との関係を築き直す
顧客の行動はこれまでも変化し続けてきましたが、パンデミックによってその変化は未知の領域に入りました。マーケターは変化する顧客の優先事項を理解しようと必死になり、その結果、どのマーケティング活動を維持し、どれを中断し、どれを捨て去るべきかを再検討しています。変化の激しい世界で成功するため、今こそ本当に重要なことに集中する時です。
先駆企業の取り組み
先駆企業は、かつて知っていた顧客はもはや存在しないという事実に向き合いました。同時に、顧客の好みについてこれまで確信してきたこと、ひいては顧客とのつながり方が通用しないことを理解しています。
54%
パンデミックによってもたらされた顧客の変化が長期的なものになると考える先駆企業は54%(現状維持企業で同様の考えを持つのはわずか17%、日本企業は28%)。
パンデミックによってもたらされた顧客の変化が長期的なものになると考える先駆企業は54%(現状維持企業で同様の考えを持つのはわずか17%、日本企業は28%)。
変化をありのままにとらえる
大半のマーケティング管理職(70%)は、パンデミックが消費者の心理や行動に及ぼす影響は短期的なものに留まると考えています。しかし先駆企業の見方は現実主義的で、半数以上がパンデミックによるマーケティングへの影響は当面の間続くと考えています。一方、同様の考えを持つ現状維持企業はわずか17%に留まっています。
顧客の今の声に耳を傾ける
先駆企業は顧客の声に耳を傾けることで変化の真相を探ります。顧客に近づくためには顧客の文脈に寄り添わなければならないことを知っており、ほとんどの場合、位置情報を活用するテクノロジーに投資しています。
顧客にとって重要なことを指標にする
先駆企業はすべての活動の優先事項を顧客にとって重要なことに合わせ、完全にコミットしています。そして、顧客のレンズを通して自社のパフォーマンスを測ることで、責任を果たそうとしています。コストや効率性、競争力が重要なことは言うまでもありませんが、先駆企業が自らに課す責任の第一の対象は顧客にとって重要なことです。つまり、彼らの指標は社内の自己満足のためではなく、社外に存在します。
顧客との関係を築き直すには
本当に重要なことに集中する
製品・サービスの開発段階から生活者へのインタビュー等を通して顧客の声を聞き、有意義な方法で顧客と交流し、顧客をすべての中心に置きましょう。
これまでのペルソナを捨てる
顧客セグメンテーションを人間味のあるものにし、顧客像を一面的なものから多面的なものに更新しましょう。また、その顧客像をすべての取り組みで活用しましょう。
測定指標を見直す
ビジネスだけでなく、顧客にとって最も重要な結果を反映させるよう測定指標を進化させましょう。
2: 組織全体で差別化する
企業の各部門はそれぞれの優先事項や業務に極度に集中しています。しかし、差別化と顧客体験を実現するには団結とコラボレーションが不可欠です。今こそ、「全体は部分の総和に勝る」、つまり組織全体で差別化を実現するため、競合する部門間の目標を排除しなければなりません。
先駆企業の取り組み
先駆企業は、自分たちマーケターだけでは市場において差別化を図れないことを理解しています。そのため、データを活用して共通理解を深め、組織全体で差別化を実現できるよう組織を再構築するのです。結局のところ、顧客に対してブランドを差別化することがサイロ化した各部門の責任に関係なく唯一全員を結びつけるものなのです。
74%
先駆企業の74%は「マーケターの意見が顧客体験の戦略に関する意志決定において重要」と回答しています(現状維持企業で同様に述べたのは46%、日本企業は58%)。
先駆企業の74%は「マーケターの意見が顧客体験の戦略に関する意志決定において重要」と回答しています(現状維持企業で同様に述べたのは46%、日本企業は58%)。
共通の目標のもとに団結する
差別化を実現するため、先駆企業は積極的に顧客体験に対するオーナーシップと責任を持っています。組織内で顧客体験のオーナーシップを持つ割合は現状維持企業よりも先駆企業の方がはるかに高くなっています。さらに、先駆企業は顧客体験が差別化と成長に密接に関連していることを知っています。先駆企業が企業の成長戦略に不可欠な情報を提供する割合は、現状維持企業よりも67%高くなっています(日本企業は60%高い)。
あらゆる場所で影響力を発揮する
組織全体で差別化を実現するには、マーケティング部門の外に対しても影響力を持って主導することが必要です。通常マーケティングに関係しない分野とのコラボレーションも、先駆企業にとっては自然なことです。例えば「二年前と比較してアフターセールス戦略に非常に重要な意見を提供している」と回答した先駆企業の割合は現状維持企業より19%高くなっています(日本企業は4%高い)。
まずは実行し、許しをもらうのは後で
先駆企業はコラボレーションを重視する一方で、合意形成と進捗の妨げの間にある微妙な境界線を鋭く認識しています。彼らは自らの活動の内容と理由をチームメンバーには知らせつつ、経営層とのコラボレーションには戦略的で「まずは実行し、許しをもらうのは後で」という姿勢を貫きます。「ビジネスの優先事項や戦略課題に影響を与えるためにCEOや取締役会と協力することが非常に重要である」と回答した先駆企業の割合は、現状維持企業の2.5倍です(日本企業は1.5倍)。
組織全体で差別化するには
全員がパーパスに集中する
組織全体が賛同できるパーパスに対して責任を持ち、従業員が日々の活動を通じて参加できるようにしましょう。
古いオペレーションモデルを捨てる
摩擦を取り除いてより良い職場環境を作りデータに基づいた意思決定ができるよう、オペレーションモデルの進化を先導しましょう。
社内のステークホルダーとの関係を再構築する
マーケティング戦略を、いかに価値創出に貢献するかという視点で社内のステークホルダー(特に経営層)に伝えましょう。
3: 変化のスピードに合わせて動く
今日のマーケティングは急速な変化と共に大きなプレッシャーに直面しています。マーケターは四方八方から押し寄せてくる優先事項に惑わされ、何に集中すべきかを見失ってしまいがちです。今こそ顧客や市場の変化に対応できるよう、マーケティング組織をスピード重視で再構築する時です。
先駆企業の取り組み
先駆企業は顧客の行動がかつてないほど速く変化していることを認識しています。そして、顧客にとって価値ある存在であり続ける唯一の方法はリアルタイムで迅速かつ積極的に行動することであると理解しており、そのためにスピードは妥協できないと考えています。
5倍
先駆企業が他の部門が彼らのアジャイルな手法を支持し受け入れていると回答した割合は現状維持企業の5倍に達しています(日本企業は2.2倍)。
先駆企業が他の部門が彼らのアジャイルな手法を支持し受け入れていると回答した割合は現状維持企業の5倍に達しています(日本企業は2.2倍)。
スピード重視のマーケティングへの転換
先駆企業は、インサイト、データ、エンゲージメント、対応を含むすべての活動を適応させ、大規模な転換を行うことにコミットしています。そのための重要な基盤となるのが、迅速かつスムーズな転換を可能にするオペレーションモデルとテクノロジーです。先駆企業は基盤の構築を優先しています。
アジャイルに試行錯誤する
先駆企業はやるべきことをよりスマートに・より速く行いたいと考えています。彼らはより適応力のあるアジャイルな組織を作り、マーケティング部門のニーズに合った手法を取り入れることでこれを実現します。試行錯誤を可能にするアジャイルな手法を用いて顧客の変化を継続的に追っており、顧客に響かない施策はすぐに捨て、時間と労力を無駄にすることなく早期により効果のある施策に焦点を絞ることができます。
最も効果的な手法を拡大する
先駆企業は、アジャイルな手法から最大の効果を得るにはマーケティング部門に閉じず大規模に実践することが必要だと考えています。ほぼすべての先駆企業がスピード感を持ってスケールする能力を高めており、彼らのテクノロジーへの投資は実現までの時間を短縮していると言えます。例えばAIの導入です。先駆企業はAIを使って各顧客のプロファイル、行動、コンテクストのデータに基づいて顧客の意図を予測し、コンテンツやキャンペーンを迅速にローカライズ、パーソナライズします。そして、予測した顧客の意図を踏まえて体験やサービスを設計するのです。
変化のスピードに合わせて動くには
より優れた・迅速な意思決定に集中する
意思決定者の賛同を得るため、長々としたビジネスケースではなく、彼らが知りたいことをすべて伝えるエグゼクティブサマリーを用意し要点を押さえましょう。
視野の狭い考えや手法を捨てる
組織のスピードを向上させるため、一つの方法やアプローチに過度に依存することなく、すべての要素をより広い視野で捉えましょう。
実験を可能にする組織を設計する
投資してスケールすべきアイデアを見つけるため、新しいアイデアのテストを容易にしましょう。変化を受け入れる準備ができるよう組織を設計するのです。
4: 誰もやりたがらない仕事を減らす
マーケティングのエコシステムは、タッチポイント、テクノロジー、規制に関する課題、パートナー企業の爆発的な増加により急激に複雑化しています。マーケターはやるべきことのすべてを管理することに圧倒され疲弊してしまいかねません。今こそ、マーケターが最高の仕事をするため彼らが意欲を感じる活動に注力できる余地を確保する必要があります。
先駆企業の取り組み
先駆企業はすべてのマーケティング業務が同じではないことを理解し、複雑化する状況を克服しています。退屈な仕事や事務処理を無くすことはできませんが、他の方法で行うことが重要なのです。
90%
先駆企業の90%は複雑化を全体的に軽減するためにマーケティング業務を標準化・効率化していますが、同様のことをしている現状維持企業は62%に留まっています(日本企業は62%)。
先駆企業の90%は複雑化を全体的に軽減するためにマーケティング業務を標準化・効率化していますが、同様のことをしている現状維持企業は62%に留まっています(日本企業は62%)。
退屈な仕事からやる気を引き出す仕事へ
先駆企業はマーケターがやりたくない仕事や変化の少ない反復的な仕事を特定し、それらのプロセスオートメーションやオペレーションの標準化に注力しています。先駆企業のこのような投資の増加に、現状維持企業は到底及びません。先駆企業は次世代のマーケティングオートメーションから利益を得る理想的な態勢を構築しています。インテリジェントな機械は反復が多くやりがいのない仕事を引き受けるだけでなく、仕事をさらに充実したものにする大きな可能性を秘めています。
自信を持って委ねる
先駆企業はマーケティングの仕事の方法を変えるため、信頼できるパートナー企業との協業にも積極的です。彼らはすべてを自分たちで行う必要はないことを理解しており、適切なスキルと能力を持つ他のグループやパートナー企業に責任の分担を委ねています。これは、リソースの活用と従業員エンゲージメントの両方の観点から非常に理にかなったことです。
斬新な発想を求める
マーケティング業務の一部を機械や適切なスキルを持つパートナー企業に再分配したことで、先駆企業は当然「ひと」の他のスキルに投資します。将来を見据える彼らは、イノベーションに必要なスキルと独創性を身につけることに関心があります。同時に、興味深い二面性として、価値の低い業務を戦略的に自動化するために必要な技術的スキルを持った人材を採用することにも意欲的です。
誰もやりたがらない仕事を減らすには
マーケターの価値と情熱を重視する
仕事の嫌な部分も含めて、マーケターが自分の考えを共有できると感じる環境を整えましょう。
"応急手当"の発想を捨てる
既存の仕事の進め方を合理化する前にツールに投資したい、という誘惑に負けないようにしましょう。顧客のニーズに応えるため、まずはプロセスの改善に注力しましょう。
将来の働き方に向けて人間と機械の関係を再構築する
従業員の役割がどのように変化するかを明確にしましょう。同時に、顧客が必要に応じて人と人とのつながりを求められるようにしましょう。
5: 自社のパーパスを体現する
多くのマーケターは「すべての人のすべての期待に応えようとすると厄介なことになる」と気づいています。そうでなくとも、自分たちのブランドパーパスの独自性を見失いがちです。すべての人に対して魅力的であろうとすると、誰にとっても魅力的でなくなる危険性があります。今こそマーケターはリターンの少ないロングテールの戦術を捨て、自分たちが主張する価値観を大きく大胆に表現できるようにすべきです。
先駆企業の取り組み
先駆企業は顧客に対して自らを表現する新たな機会があればそれを掴み、自分のものにします。彼らはブランドパーパスを言葉で表現するだけでなく、自らの行動で体現するのです。
5倍
先駆企業がパンデミックにおいて生じた顧客の価値観の変化を、マーケティングの役割を再考しブランドパーパスを再定義する機会と考える割合は、現状維持企業の5倍です(日本企業は3.5倍)。
先駆企業がパンデミックにおいて生じた顧客の価値観の変化を、マーケティングの役割を再考しブランドパーパスを再定義する機会と考える割合は、現状維持企業の5倍です(日本企業は3.5倍)。
顧客に共感する
先駆企業は、すべての人ではなくターゲットとなる顧客に焦点を当てることで自分たちのブランドパーパスを本物の形で体現しています。彼らは顧客と接する時、顧客が大切にされていると感じられるようにすることにはるかに大きな責任を感じています。すべてのマーケターの中でも先駆企業は顧客に最も深く共感しており、そのことがブランドパーパスの体現を可能にしています。
より意味のある方法でつながる
先駆企業は、顧客一人ひとりに合わせたケアやサービスを提供するようマーケティング手法を調整した経験が現状維持企業の約2倍あります(日本企業は1.2倍)。また、信頼性を重視する顧客に合わせてマーケティング手法を調整した経験も、現状維持企業の2倍以上あります(日本企業は2倍)。これらの領域で顧客に価値を届けるため、先駆企業はチャネルやタッチポイントの最適化に留まらずブランドパーパスに沿った大胆な行動に注力しています。
垣根を越えたイノベーション
先駆企業は、顧客とのつながりを築くには革新的な思考と大規模な実践の両方が必要なことを理解しています。彼らはビジネスの優先事項に影響を与えブランドパーパスを実現するには、最高イノベーション責任者(Chief Innovation Officer/CINO)がコラボレーションすべき最も重要な経営幹部であると考えています。現状維持企業でこのコラボレーションを同じように重視している割合は先駆企業の半分未満です。
自社のパーパスを体現するには
ブランドパーパスの代弁者としての従業員を重視する
ブランドパーパスを伝える最高の代弁者として、全社の従業員を集結させましょう。誰もが体現でき、表現できる共通の志を育むのです。
うわべだけの約束を捨てる
どのブランドにも当てはまるようなありきたりなブランドパーパスの宣伝文句はやめましょう。ブランドパーパスが組織にとって確かに意味があり、かつ独自性が高いものであるようにする必要があります。
想像力を刺激する文化を再構築する
反対する余地があり、期待を超えることを日常と捉えられるオープンで創造的な文化を育みましょう。
間違った仕事を減らし、正しい仕事を増やす
先駆企業は仕事の方法を変えたり捨てたりすることでより大きなリターン、さらなる成長や意味、そして喜びを得られることを発見しました。だからこそ彼らは燃え尽きることなく、マーケティングを変革する掛け声を生き生きと上げているのです。
アクセンチュア ソングはお客様のマーケティング変革を支援しています。
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望月 良太
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久田 祐通
Accenture Song マネジング・ディレクター
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