日本における物流業界の仕事といえば、「長時間労働で賃金が安い」「力仕事が多く、男性中心の仕事である」「昔ながらの属人的で非効率的なワークスタイル」といった印象が色濃く、このイメージの払拭は、長年にわたる業界全体の課題として指摘され続けてきました。
いまだに日本の物流業界の就業者における女性の比率は約2割にとどまっており1、調査対象となっている業界の中でも最も低い水準となっています。
*1 総務省労働力調査 第12・13回改定日本標準産業分類別就業者数
一方、欧米の物流企業に目を向けてみると、こうした業界のイメージについては少し事情が異なります。もともと欧米企業はブランディングに長けていることに加えて、働き方改革や業務のデジタル化にも早い段階から取り組んできた結果、日本のように業界そのものが3K(きつい、汚い、危険)のイメージで語られる状況はほぼ見られなくなっています。例えば、自社のロゴを配したオリジナルグッズを販売したり、アパレルブランドとタッグを組んでTシャツを作るといったブランドイメージの向上に向けた取り組みは当たり前のように行われており、またデジタルを活用した新たな業務領域、ワークスタイルの創出によって、男女を問わず多様な人材に門戸を開く努力が続いています。
欧米も日本も取り組みと成果に差こそあれ、ジェンダー平等の努力はまだ道半ばといえます。OECDのThe Gender Dimension of the Transport Workforce2によれば、持続可能でレジリエンスのある運輸業界の醸成には、ダイバーシティの推進が必須であるとしたうえで、教育、労働、メディアなどの他者が協力して、現在の格差を生んださまざまな要因すべてを考慮した、包括的な戦略を策定する必要があるとしています。男性の従業員が多い業界であるだけに、この差を埋めることは困難ではあるとしつつも、女性管理職を増やし、重要な意思決定にもっと参加することで多様な視点が生まれると主張しています。
*2 The Gender Dimension of the Transport Workforce