ストリーミングの次なる戦略

ストリーミングサービスの成長に伴い、消費者に提供される選択肢は急増しました。同時にこれは、操作の複雑化を招く結果ともなりました。利用できるサービスが増えたことで、消費者は目的のコンテンツにたどり着くまで、数々のプラットフォーム、画面、メニューを何度も行き来する手間が生じています。

OTTサービスの利用は、まるで、ウサギの巣穴に入るようなもので、こうした入口と出口が異なる複雑な実態が、消費者をうんざりさせているようです。その結果、消費者の60％が異なるサービス間をナビゲートするプロセスに「少し」または「非常に」フラストレーションを感じると回答しており、半数近く（44％）が視聴したいコンテンツを探すのに6分以上費やしていると答えています。

利用するサービスの数が増えると、毎月支払う金額も増加します。実際に、多くの消費者のストリーミングサービスに費やす毎月の支払額に限界が近づいています。

アクセンチュアの調査によると、消費者の33％が、今後12ヶ月の間にメディアやエンターテイメント関連に費やす金額を「少し」または「大幅に」減らすと回答しています。

不完全または不正確なリコメンデーションや見当違いのコンテンツ紹介は、残念ながら大半の消費者が経験しています。消費者が視聴したコンテンツについて、すべてを把握しているのは消費者の手元にあるデバイスだけだからです。

アルゴリズムの多くは、不完全な視聴履歴に基づいてリコメンデーションしているため、その内容が的外れになる可能性があります。さらに、消費者に番組を紹介するための表示もそうしたアルゴリズムに依存しており、消費者は実際に番組を選択する以外にリコメンデーションの仕組みを変えることができません。当然のことながら、大多数の消費者（56％）は、コンテンツをよりパーソナライズするために自分のプロフィールをあるサービスから他のサービスに移行したいと考えています。また、リコメンデーションの精度を上げる（ビデオ・オン・デマンドサービス）ために情報提供をいとわない消費者も多数（51％）存在しています。

現在、消費者がストリーミング体験とエコシステムに感じている3つの課題はどれも、消費者が自らの体験を自身でコントロールしたいという欲求の表れでもあります。消費者は、サービス間のナビゲートがより簡単になり、自分が視聴したいコンテンツのみにお金を払うというようなサービスを期待しています。さらにはアルゴリズムにフィードバックを加えることでコンテンツのリコメンデーション精度を上げることを望んでいます。つまり、消費者はストリーミング体験をより効果的に「自分ナイズ」させる方法を求めています。

ストリーミングが成長し続け、潜在能力を十分に発揮するには、エコシステムの変革が必要です。それは、複数のプラットフォームにまたがって活躍するスマートアグリゲーターの導入であり、消費者自身によるコンテンツのコントロールを劇的に改善させるものです。このアグリゲーターは、現在ストリーミング体験を阻害し、消費者にフラストレーションを与える要因となっている3つの課題を克服するために重要な役割を果たします。

今後アグリゲーションが本格化することは間違いなく、消費者だけでなく、業界全体がそれを必要としています。アグリゲーターとして成功するか、ストリーミングサービス企業として生き残るか、目指すものにより異なる戦略が求められます。しかし、どちらの道を選択するとしても、アグリゲーションを視野にいれた施策を講じることなく加入者獲得にのみ専念していては、ほぼ確実に危機に瀕することになるでしょう。

アクセンチュアは、世界の消費者の動画コンテンツストリーミング体験における嗜好、考え、行動を理解するための調査を実施しました。本調査は、既存のD2Cメディアにおける著しい変化を特定し、メディア企業が顧客にとって価値がある存在であるためにストリーミングモデルをどのように変革するかについて提言することを目的としています。調査は11カ国の6,000人の18歳以上の消費者を対象にオンライン形式で、2021年10月から11月にかけて実施されました。