翻って素材・エネルギー業界を見渡すと、同様にデジタルテクノロジーを徹底活用しながら、消費者のニーズまで汲み取り、それに応えていくことが求められつつあります。
石油・電力・ガス・基礎化学品・樹脂などの汎用品では、モノの品質での差別化が難しいため、どれだけ安く提供できるか、もしくは差別化された付帯サービスを提供できるかが肝になります。例えば米国大手ケミカルメーカーDowはCustomer Automation Serviceとして、注文~出荷に至る全てのオペレーションの超効率化・自動化を行い、超低コストオペレーションでの汎用品提供を実施しています※8。また英国の電力仲介会社であるFlipperは、ユーザーの電気代が最安になる電力会社を自動でレコメンド・契約するサービスを提供することで、新たな収益源を開拓しています※9。消費者視点では、Flipperのサイトに登録するだけで煩雑な手続きや価格比較を行わずに最も安く契約できる、という点で満足度の高いサービスを享受できます。
一方、機能素材のような高付加価値品は、鮮度の高い一次情報を直接もしくはデジタルツール経由で開発者が入手し、多様で移り変わりの激しいユーザーニーズを迅速に深く理解することで、顧客と共創してカスタマイズされた素材・部材を生み出し続けることが重要になります。例えば、欧米の複数の大手素材メーカーが開設しているデザインスタジオ等のように、最終ユーザーから生の声を聞きつつ、そのニーズに応じた素材・サンプル等をその場で見せながらデザインし、数日~1週間程度で一気に試作品まで作りあげて、評価してもらうといった世界が当然のようになりつつあります。このようなスピード感の裏にはメーカーとしての過去の膨大な試作実験のデータに加え、それを瞬時にニーズと紐づけて最適な試作品を作るためのシミュレーションツールなどのデジタルテクノロジーの活用によって支えられています。
このようにデジタルテクノロジーを徹底活用し、圧倒的なトップラインの向上やコスト削減を実現していかなければ、今後も持続的な競争力を維持・向上していくことはできないと考えられます。