本書はサーキュラー・エコノミーの考え方やフレームワークを示した前作を一歩進め、実践するための「ツールキット」
2016年、本書の前作である『サーキュラー・エコノミー ~デジタル時代の成長戦略~』(日本経済新聞出版)を出版した当時は、ヨーロッパを中心とした概念と捉える向きが強く、日本にいる多くのクライアントにとっては「聞いたことのない言葉」、「まだまだ遠い先の話」と受け止められることが多いのが実態でした。 しかし、あれから4年。サーキュラー・エコノミーはもはや今すぐ取り組むべき、ビジネスモデルとなりつつあります。
その変化の背景には、3つの社会的変化が含まれるでしょう。
1つ目は、環境対応に関する社会的な関心の高まり。
2つ目は、消費者の「所有から利用へ」という志向の変化。
そして3つ目は、「企業のあり方」に関する変化です。
従来より「三方良し」として社会全体に対してはもちろん、従業員や取引先なども含めたマルチステークホルダーに対して貢献することが企業の存在意義とされてきた日本にとっては、上記の3つの変化も相まって、「サーキュラー・エコノミー」の概念はこれからますます着目されていくでしょう。
本書はサーキュラー・エコノミーの考え方やフレームワークを示した前作を一歩進め、実践するための「ツールキット」としてまとめるべく、世界各地の事例を豊富に含め、読者の皆様にそれぞれの立場から理解をいただけるように編纂しました。またこれからの時代、1社で変革を実現していくことはスピードにおいてもケイパビリティにおいても難しく、企業の枠組みを超えたエコシステムの形成が重要です。こうした視点からも、参考となる事例を見つけていただければ、監訳者としてこんなに嬉しいことはありません。
サーキュラー・エコノミーを取り巻く状況について、日本では、ベンチャー企業の取り組みが先行している一方で、大企業の参加が遅れているのが実態です。本書が世に広まることで、大企業を含めたコラボレーションが加速することにつながれば、当領域を軸にクライアント企業の変革のお手伝いをさせていただくコンサルタントとして望外の喜びです。
(「日本語版への序文」より一部引用)